そこで手元供養について「ANNQUON(アンクオン)」を手がける株式会社インブルームスの代表取締役・菊池直人さんに話を聞いた。
同社では国内だけでも年間約1万個の手元供養品を販売する。「弊社が手元供養商品を製造販売し始めてから6年が経ちますが、手元供養を希望する方は初期の頃の10倍以上になっていると思います」(菊池さん)。もともと手元供養品は、顧客からの要望で作り始めたのがきっかけなのだそうだが、少子高齢化・核家族化、マンションや賃貸住宅で生活する人が多いという住宅事情や、後継者問題、永代供養の選択などから、従来のしきたりや伝統だけにとらわれず思い思いの供養がしたいと考える人が増えてきているという。
私自身、同社のサイトで「アッシュペンダント」や分骨用の「ミニ骨壷」を見て、従来の仏具に対するイメージが大きく変わった。小さなハート型やクローバー型のネックレスは一見、普通のアクセサリーにしか見えず故人の誕生石などもあしらえる。また、「骨壷」といってもガラスやチタンで作られたオブジェのようなミニ骨壷は非常に美しく、ミニ仏壇は従来の閉鎖的な印象はなく開放的でオシャレだ。遺品や遺骨をダイヤモンドに生まれ変わらせることもできる。
「祈りについても伝統を尊重し昔ながらの形式を伝え今後も保存していく努力は必要です。皆様の生活がどんどん変化する中で、『供養する』という本質は変えずに、その中に溶け込むような『いのりの空間』を作ることが私たちのコンセプトです」と菊池さんが話すように、仏具にデザインを組み込むことで「祈り」というものを生活の中に溶け込ませ、より故人を身近に感じることができる商品を生み出している。だからこそ、手元供養を望む人も増えているのだろう。
――手元供養を選択する理由について
「お墓が遠く一年に一度しかお墓参りに行けないので毎日手を合わせたい、生前行けなかった思い出の場所に一緒に連れて行きたい、永代供養や散骨などでお墓は持たないが自宅で供養したい、嫁いでしまった姉妹が両親の遺骨をペンダントに分骨したいなどさまざまな理由で手元供養をされています。故人に直接手を合わせたいというシンプルな考えが世の中に広まっているように感じます」
――習慣や慣習にこだわらない供養とは?
「さまざまな宗教や国によって考え方は違うと思いますが、大切な人を想う気持ちこそが供養の原点ではないでしょうか。カタチや形式にとらわれ過ぎた供養は現代の人には本質からかけ離れたものになってしまう可能性があり、供養自体をされないという人も少なくありません。お金をかけなくても供養はできますし、もっとシンプルで身近であっていいと思います」
――最愛の人とのコミュニケーション
「お骨だけでなく髪の毛や遺品などに手を合わせる方も多いです。手元供養に、こうしなければいけないという決まりはありません。自分のスタイルで故人を想い手元供養という形で故人とコミュニケーションし、ご先祖に感謝する。ご自身で祈りの空間を作り、『いってきます』『今日はこうだったんだよ』などと声をかけ、日々の感謝を表して欲しいと思います。ご先祖様がいて今、自分がいる。これは紛れもない事実です。感謝のココロを持って、自分なりの供養の方法を見つけてほしいと思います」
最後に、人それぞれ考えはあると思うが、私も大切なことは故人を想い祈る気持ちだと思う。メンタルな商品ということで同社もメディア取材を断られることも多いとのことだったが、人それぞれ色々な供養の形があり、そこには祈るという世界共通の考えがあるということを改めて感じたので同社に取材協力いただいた。
ちなみに私はなかなか仏壇に手を合わせに行けないため、父の遺骨を入れたアッシュペンダントを飾り花を供えている。
(山下敦子)