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さらば、石原慎太郎『文学賞メッタ斬り! ファイナル』

だが、現在のスタイルは第4章ですでに確立されている。題して「選考委員と選評を斬る!」。芥川・直木賞を中心に代表的な文学賞の選評が俎上に載せられ、文字通りメッタ斬りにされている。津本陽の評言が凡人の理解を超えたおおらかさに満ちていることを発見し「ツモ爺」と命名したように、選考委員にキャラクターを付与して選評を味わうという遊びはこのときから始められていたのである。相性の悪い石原慎太郎、宮本輝、渡辺淳一の3氏に対する舌鋒も、最初から厳しさを極めていた。
この無印版には巻末に2003年、2004年の文学賞受賞作をすべて大森・豊崎の両名が読んで評点をつけるという「文学賞の値うち」一覧がつけられており(元ネタは福田和也『作家の値うち』)、以降も毎回の名物となっていった。この総まくりはたいへんな労力だったと推察される。今回でシリーズが打ち止めになるのも、この「文学賞の値うち」をやるのがしんどくなったのが理由の1つなのではないか、というのは外野の勝手な推測である。
第2巻にあたる『受賞作はありません編』、2008年に『文学賞メッタ斬り! リターンズ』の刊行は無印版の3年後の2006年。ここから恒例の芥川・直木両賞予想が始まっている。以降2007年に『たいへんよくできました編』が刊行された。そして約4年の沈黙の後、今回の『ファイナル』の登場となったわけである。

帯には大きく「さらば、石原慎太郎」の文字が躍っている。言うまでもなく、メッタ斬りコンビが一方的にライバル視していた石原慎太郎の芥川賞辞任を受けてのものである。第3章ではその56年間に及ぶ作家生活を概括し「なぜ石原慎太郎はああなってしまったのか」を検証している。自身が若い頃に受けた批判の文言を、そっくりそのまま選考委員として他の作家にぶつけていることを評して「これが選評の憎しみ連鎖。ひとは、自分が言われて一番傷ついたり不愉快だったりしたことを他人に言いがちなんですねー」(豊崎)と指摘するなど、なるほどと思わせる個所が多い。

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