男なら一度は考えるでしょう。
モンスターの女の子とどうエッチするか。

考えるでしょう? 
え、考えない?
そうか……。

RPGとかに出てくるようなモンスターいるじゃないですか。かわいい女性モンスターいっぱいいるじゃないですか。
『女神転生』シリーズとか特にやばいですね。ヒロインにあたるキャラより悪魔に惚れ込んだ人は少なくないはずです。あの妖艶なかわいさ。ぼくはモー・ショボーが好きです。
基本的にRPG系のモンスターは世界の神話伝説から取られたものが多いです。
根っこは「恐ろしいもの」という畏怖の対象ですが、本当にそうなのかな?
半分鳥で半分女性のハーピーとか、あのへんちょっとかわいいとか昔の人だって思っていなかったんだろうか!?
ハルピュイア - Wikipedia
「老婆のような顔」。
あ、そう。うん。勘違いだったわ。
やっぱモンスターはモンスターでした。

近年、一部でこの「モンスター娘」がぷちブーム。大ブームではない。
元来は上のように、恐怖の対象だったモンスター達。それを美少女として解釈しなおして描く作品が昨今たくさんあります。
存在が人間ではないのでドラマティックな話が生まれやすいというのはあるでしょう。
でももっとストレートな願望でいいんですよ。
キュートなモンスターの少女にエロいことをしたい。
したいでしょ? したくない? ぼくはしたいよ。

この『モンスター娘のいる日常』は、元々はネット上でひっそりアップされていた作品でした。
小さな1ページに、様々なモンスター……アラクネ(蜘蛛)、スライム、デュラハンなどのモンスター少女と、夫婦生活を営む様子を描いた作品群。
まさに日常といった有様で、日々の暮らしから夜の営みまで小さなコマにしたためられていました。

一時は謎の作品としてカルト的人気を誇っていましたが、今はpixivにアップされていますので検索してみてください。

それまでもたくさんの作品の中に、「美少女のモンスター」は出ているんです。『ぷよぷよ』もそうですね。
しかし、モンスター娘といざ結婚して暮らすとなると、エッチするとなると、どうするのか全然わからない。
それを丁寧に描くことで、モンスター娘と人間の共同生活が優しくリアルに表現されたのです。
日常生活だって確かに不便はある。そこはモンスター娘だもの。
けれどモンスター娘だって人間と同じ感情を持ち、恋愛感情を抱いていたらどうだろう。
彼女たちのためになにかしてあげたい……男性の心に火が付きます。
モンスター娘とのエッチの仕方はここには書けませんが、それを考えることは決して無駄なことじゃない。いやほんと、無駄じゃないよ。
全ては相手の、異文化異種族の少女たちの笑顔を見るための努力。
愛に満ちています。

その作者が、ついに単行本を出しました。
この単行本は逆で、モンスター娘とはエッチができません。
「他種族間交流法」で亜人種との交流を世界が認めているものの、万が一にも傷つけてはいけない、同時に「キズモノにしてはいけない」からです。
主人公はホストファミリーとして亜人種を受け入れた少年。童貞。
彼の家にはラミア(下半身が蛇)、ハーピー、ケンタウロスと、次々モンスター娘がやってきます。
重要なのは顔ですよね。人間、顔と体が人間型なら結構受け入れられちゃうんですよ。特に顔は個体判別する上でも重要です。
ミノタウロスとかいなくてよかったね。

まー、ここまでだと「さえない僕の元にエロいモンスター娘がやってきてウフフ!」なマンガに見えるかもしれませんが、ちょっと違います。

確かにシチュエーションとしては呼んでいてムフフですし、モンスターゆえの艶かしさもあります。
けれどもそれらの女性たちと一緒にいる日常には、多大なる労力が必要なんですよ。
例えばヒロイン役のラミア。彼女の下半身は大蛇で、変温動物です。
まず彼女がいるためには部屋が広くなければいけない。街にでるにしても大きな空間が必要。脚がないですから。
変温動物なので動けるようにあたたまるため入浴が必要。この浴槽もばかみたいにでかくないと入れない。
まだまだ法が施行されたばかりなので、中には亜人種を奇異の目で見る人達もたくさんいる。
食生活だって人間と違うから大変。とにかくよく食べる。
だから大量の買い出しをして、料理を作ってあげて……。
モンスター娘のいる世界はニヤけるかもしれない。
でもモンスター娘のいる「日常」は大変なんだよ。

ここにあるのは、モンスター娘への愛です。
恋かというと、恋にはまだなってないんですよ。男女だからというよりも、守ってあげたい存在という方が近いです。
主人公もヘタレではありますが、非常に健気で好感がもてます。大変なモンスター娘との日常を支えています。

確かにゲテモノ臭の強い、特殊な作品です。
萌えリデザインされたモンスター娘キャラと違って、割りと原型のモンスターに近いです。
ケンタウロスとかかなり馬してます。
だからこそ面白い、エロティックだ、というのは大いに同意します。
それがこの作者の持ち味ですから。
ただ、一番重要なのは、モンスター娘を起用することで人間・亜人種ともに持っている愛情を力強く描いていること。
その点は、外国人との結婚生活エッセイマンガと変わんないんですよ。
大変だし笑える事多いけど、案外幸せ。
あえて亜人種にしたことで、見えてくる人間の感情を読者の中に呼び起こす作家が、この作者オカヤドなのです。

さてこの本、初版は超瞬殺で売り切れ、即重版がかかるという驚異の人気作になりました。
もともと刷っていた冊数が少ないのかもしれませんが、「手に入らない」という声があちこちで響いていたので相当なもんでしょう。
徳間の「COMICリュウ」は最近モンスター娘・ケモノ娘推しです。『セントールの悩み』『ねこむすめ道草日記』などなど。
休刊中には人外アンソロジー『けもも』を出すなど、かなり人外少女ネタに対して意欲的。
ゲテモノ的面白さもありますが、それ以上に人外だから描けるものは確かに色々なテーマあるんです。

この作品自体は非常に日常ものとして面白いですし、モンスター娘ぷちブームも来るのかなとは思うんですが、この作者には個人的には18禁でがんばってほしい、とあえて付け加えておきます。
モンスター娘とどうセックスをするのかを愛情こめて描いてきた作家さんですもの。性と日常を描くから温かい気持ちになるというもの。
今回は一般向けなので、かなり際どいシーンもありますが、エロシーンはありません。これは仕方ない。
人間と亜人種の究極の愛の到達地点、人間とモンスター娘のセックス。これを描かないという制約でどこまで「日常」を描き出せるのか、期待したいところです。
あ、ぼくは老婆ではなく幼女体型のほうのハーピーちゃんでお願いします。

オカヤド『モンスター娘のいる日常』

(たまごまご)
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