「マンガを描く上で食べ物は重要。なぜならキャラクターが見せやすいから。
何を食べるか、そして食べ方によって、すごくその<人>が出やすい。キャラクターを短いページで印象づけるには料理のシーン、食べるシーンってすごく大事なんです」

これは先日、「食と本」に関するイベントで漫画家ユニット「うめ」の小沢高広さんが語ったコメントだ。漫画家の言葉だけに含蓄と説得力がありますが、実際、どの漫画を読んでみても、食べるシーンや料理の場面って数え切れないほど出てきます。
象徴的なのが、もはや国民的漫画とも呼べる『ONE PIECE』。ルフィのセリフと言えば「海賊王に、おれはなるっ!」が真っ先に思い浮かぶものの、登場回数としては「肉くいてぇ!」「サンジ、肉!」「腹減ったぁ、肉~」などなど肉がらみの発言の方が多いのは間違いありません。ルフィというキャラクターを語る上で「肉」の存在はもはや外せないキーアイテムです。
それにしても、ルフィがいつもむしゃぶりついている「肉」が古典的な骨つき肉でまた旨そうなんだよなぁ……アレ、食べてみたいなぁと思ったことがあるのは私だけではないハズ。そんなワンピース好きで食べ物好きな方に朗報です。『ONE PIECE PIRATE RECIPES 海の一流料理人 サンジの満腹ごはん』……そう、麦わらの一味のコック・サンジの公式レシピ本が発売されたのです。
『ONE PIECE』の作中で実際にサンジが作ったものや、訪れた島の特産料理など、実に40(+おまけ料理)のレシピがまとめられています。コースは6つ。<瞬間満腹ごはん>は瞬時にスタミナがつくパワーメシ。
<豪快!肉レシピ>はルフィの大好物・肉のオンパレード。<初心者OK!魚料理>は海の料理人よろしく魚の単品料理からコース料理まで満載。<ヘルシー野菜レシピ>はナミやロビン向けのヘルシーで満足感のあるもの。<大満足ガッツリ系>は焼きそば、ハンバーグ、カレーなど腹ペコさん向けの料理がズラリ。そして最後は<あっさりデザート>で華麗に締める。サンジ、かっこいい!

このレシピ本、基本的に4人前の分量&作り方で紹介されているので家庭用に使うのはもちろん、見た目も豪華で凝った料理ばかりなので、麦わらの一味の宴会のように大勢が集まったときのもてなしレシピとしても使える実用的な作りになっています。でも、ワンピースファンであれば、物語をより深く楽しむための隠し味的にも使えるのではないでしょうか。

たとえば、本書の巻頭で紹介され、作中でもサンジがはじめて作った料理である「ギンに出したチャーハン」(5巻/第44話)。「面目ねェ面目ねェ!! 死ぬかと思った…!! もうダメかと思った……!!」と敵の海賊ギンが泣きながらガツガツ食べ、「腹を空かせた奴は誰であろうとメシを食わせる」という、サンジのコックとしての正義感を表す忘れられないエピソードでもありますが、次からこのシーンを読む際には、「このチャーハン、コーンビーフの旨みが味の決めなんだよな。そりゃギンも泣いて喜ぶワケだ」と少し違った掘り下げ方ができるようになるのです。
また、「エレファント・ホンマグロ」「ウォーターセブンの水水肉」「空島特産スカイシーフード」などワンピースオリジナル食材の数々も、スーパーで手に入る代用品で作ることができるように紹介されているので、未知の食材であってもこれからは味の想像がしやすくなります。
『ONE PIECE』ではこれまで様々な「裏設定」や「こだわり」が巻中のSBSなどで明らかにされてきましたが、「食」関係の公式設定はこのレシピ本が初めてなだけに、さらなるワンピース研究の一助になるはずです。


レシピ監修は映画「かもめ食堂」やレシピ本『LIFE なんでもない日、おめでとう!のごはん』などで知られるフードスタイリストの飯島奈美さんなので、味についても間違いなし!
また、作者・尾田栄一郎大好物のおにぎりレシピや尾田家の家庭料理なども紹介されていたり、鍋敷きや鍋つかみにも使用できる「サンジのイラスト入り」などおまけも満載です。

最後に、本書の中でサンジが残した調理の秘訣があるので紹介しておきましょう。
「料理は愛だ。皮剥きでさえ、愛情を欠いては……、どんな料理もマズくなる、頑張ってくれ」
(オグマナオト)
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