風邪をひき、熱が下がって、鼻水も治まっても、なぜか咳だけが残ってしまうということがときどきある。
「風邪で咳だけが残ると、長引くから、怖いよ」なんて言われることもある。

なぜ咳だけが残りやすいのか。
『ここ10年で、これだけ変わった! 最新医学常識99』(祥伝社黄金文庫)等の著書を持つ、医療法人社団池谷医院の池谷敏郎院長に聞いた。

「『風邪がずっと長引いてしまっている』とか、『風邪はほとんど治ったのに、咳だけ残っちゃった』なんて言う人がいますが、風邪はウイルス感染によるものですから、通常は1週間以内に終わります。風邪が長引いているのではなく、こじらせて、他のものになってしまっている可能性が高いですよ」
風邪をひいた時点から1週間以上も経っていれば、風邪をきっかけとして、すでに別の問題が始まっているとみられるそうだ。
全然知らなかった……。

「たとえば、風邪をひくと、もともと鼻炎持ちなど、鼻の悪い人は、鼻の不調を引きずる傾向があります。
鼻水が出なくなっても、鼻水がのどのほうに落ちてしまい、むせ込んだような咳の原因となります。さらに、口で息をするようになり、乾燥した空気でのどを痛め、空咳の原因になったり、更なる風邪の引き金となってしまうのです」

また、気管支ぜんそくを本人・あるいは身内が患っている場合には、風邪が引き金となり、隠れていたぜんそくが表面に出てきてしまうこともあるそうだ。
「普段は症状がないのに、風邪きっかけでぜんそくが始まることも、けっこうあるのです。しかも、受診しても診断できない場合もあります。そういった場合、ぜんそくの治療をしてみて治るかどうかをみる『診断的治療』によって、初めて判明することもあります」
その他、長引く咳には、マイコプラズマや百日咳の場合もあるそうだ。

いずれにしろ、「風邪で病院にかかり、薬をもらって1週間飲んでいたら、ほとんど良くなったけど、咳だけが残った」とか、「風邪をひいて、市販薬を一週間くらい飲んでいるけど、咳だけ治らない」なんて場合は、「別の何か」の治療が必要ということ?
「そうです。
1週間以上も経ち、最初の薬が終わった段階で、違うステージにいってしまっていますし、様子も変わっているはずですので、もう一度受診したほうが良いですよ」

たかが風邪、されど風邪。
「長引く風邪」というのも、「咳だけが残る風邪」というのも、基本的にはなく、別の不調や病気が始まっていることが考えられるそうなので、早めの受診をオススメします。
(田幸和歌子)