あなたの印鑑がもし象牙でできているのであれば、それを持ち出し使う度に思い出して欲しい、あなたはたくさんの命を奪っている張本人であることを。あなたがこれから象牙の工芸品を買おうと思ったなら知って欲しい、あなたがこれから奪うたくさんの命のことを。


2008年にキロ157ドル(約14,000円)だった象牙価格は2012年には15倍以上の2,357ドル(210,000円)にまで跳ね上がった。高値で取引される象牙は中国では「ホワイトゴールド」と呼ばれ主に麻薬シンジケートや暴力団によって支配されていっている。現在流通している象牙の殆どは密猟された密輸象牙であり、密輸元のアフリカではその収益がテロ組織の大きな資金源となっていることが表立って知られるようになってきた。

1989年に世界中で禁止された象牙取引が1997年のワシントン会議を経て、2000年日本が50トンの「合法象牙」の流通・販売実験に踏み切ったことがきっかけになり、アフリカでは象牙取引の再開と勘違いが伝播し、象牙密猟密輸が爆発的に増えてしまった、2006年には38,000頭の象が密猟により殺されたという専門家の報告もある。現在すでにアフリカ象の2/3は密猟によって姿を消してしまい、また狙われる象は象牙を有する雄の個体のみであることから生物学的にもこの状況が続けば今後15年以内にアフリカ象は世界から姿を消してしまうとする研究調査結果もある。

象牙を採るだけの為に機関銃で撃ち殺されサバンナに打ち捨てられる象の死骸の山。過去8年間で野生動物を守るために犠牲になった13,000人の命。象牙密猟で得た資金で子供の性的搾取や民族の虐殺を行ったり、爆破テロで多くの命を奪う活動が行われている世界。

合法であれ、違法であれ、血だらけではない象牙はこの世の中に存在していない。

世界最大の象牙消費国である日本、他の誰にもできない日本人にしかできないこと。それは象牙の需要をなくすこと。象牙を欲しがること、それは恥ずべきこと、それは世界中に迷惑をかけていること。
いま私達が変われば世界で多くの命が明日を生きることができる。

現在3月3日~14日の会期で第16回ワシントン条約会議がタイのバンコクで開催されている。象牙の輸出申請を予定していたタンザニアは多くのバッシングを受けその提議を取り下げた。

動物達を守ることは感情的な理由からではなく、経済的、社会的、環境的な責任であり、意識向上は人の行動へつながるとして、映画「White Gold」が製作された。日本での公開は未定ではあるが、「アフリカゾウの涙」というアフリカ在住の日本人の有志で構成された団体が現在その普及活動に尽力している。
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