『ハイスコアガール』は、とことんダメで卑怯で、でもゲームを愛することにかけて誰にも負けない少年ハルオが、数々のゲームを通じて成長していく90年代ゲーム青春コミック。
小学校の時に出会う凄腕ゲーマーお嬢様・大野晶と、努力家でハルオが好きな日高小春に挟まれ、3人が迷走しながら青春します。
この設定もいいよね! 言うなれば「ビアンカとフローラどっちが好き?」「レイとアスカどっちが好き?」「ティファとエアリスどっちが好き?」みたいなクエスチョンですよ!
ぼくは悩みに悩んで、好きな人のためにゲームの努力をし続け、難しいズィーガー三連をナチュラルに出せるまでに成長した小春派です。異論は認める。
その『ハイスコアガール 公式ファンブック』が出ました。
まだ単行本4冊でファンブックとはなんぞや!?
読んでみるとわかるのですが、実はこの作品、90年代ゲームネタがものすごい勢いで詰め込まれているのですが、その解説はほとんどありません。
なので、一体何のネタなのかわからないことが多いんです。
例えば4巻でも、SNKの格闘ゲーム『真・サムライスピリッツ』で、右京がぬいぐるみ化からの武器破壊ツバメ6連を、3214623C641236A+B(数字はテンキーの矢印)で入力、というシーンがあって、これ分かる人には「そうそうあったあったw」となるんですが、知らない人には全く何のことかわかりませんし、説明もありません。
まあ、わかんなくても「なんだかすげえ!」と認識できるから、このマンガ面白いんです。
公式ファンブックは、キャラクターの紹介、作者押切蓮介インタビュー、カプコン関係者イラストなどが載っています。
とにかく押切蓮介インタビューはがっちり読み応えあります。
しかし、それと同じかそれ以上に、出てきた各ゲームの紹介が載っているんです。
ライター・マフィア梶田が徹底紹介。
もちろん最初は、91年に発売され大ヒットを飛ばした『ストリートファイターII』、マンガ内ではいつもハルオに力を与えてくれるガイル少佐も出てきます。ファネッフー。
80年代のイーアルカンフー、ベラボーマン、スプラッターハウス、ファイナルファイト……おそらくマンガを読んでいてもリアルタイム世代じゃない人は多いはず。
それらのネタを知り、ハルオや大野さんにシンクロするのにはもってこいの解説。
これに押切蓮介が自らコメントを入れているのが面白い。
「え? 女性とファイナルファイトを共同プレイした経験はあるかって? あるわけがないだろう? 何を寝ぼけたことを言っているんだ」
ほんとだよ。何を寝ぼけたことを言っているんだ。
龍虎の拳、サムライスピリッツ、ヴァンパイア……青春期に100円玉を(あるいは50円1プレイ)つぎ込んだ人間にはたまらない解説揃い。
ハルオがSFCではなくPCエンジン派で、プレステじゃなくセガサターン派なのも、個人的に好感が持てます。
ゲームがわかれば、『ハイスコアガール』は3倍面白くなるので、オススメの一冊です。
ちなみにマンガが三本載ってますが、うち二本はハイスコアガール関係ないです。それもまた、らしい。
インタビューがこれまた、押切蓮介作品を知っている人にはたまらないものになっています。
例えばこんな感じ。
梶田「押切先生ってパンクですよね」
押切「そういう精神がいきすぎて、被虐妄想が湧いてくるんです。例えばクリスマスに、カップルにリンチされたい願望とか(笑)」
梶田「まったく意味がわからないのですが!?」
押切「虐げられたいという気持ちがどこかにあるんです。特に幸せな人達に虐げられたらおいしいじゃないですか。「俺クリスマスの日にリンチされちゃったよ」なんて言われたらその人の事、大好きになりますよね」
梶田「……押切先生はドMなのですか?」
押切「女の人に虐げられたいという願望は昔からあるので、Mかもしれません。だから晶みたいに、無言でブン殴ってくるような子が大好きです」
僕も大好きですが、カップルにリンチはちょっと。
『ハイスコアガール』で殴られたりゲームで負けたりするシーンが好きな人は、是非押切蓮介作品の『ミスミソウ』、『ゆうやみ特攻隊』、『ツバキ』などを読みましょう。
それにしてもネオジオCDのロード時間は思い出したくもない、いい思い出ですね。
『ハイスコアガール 公式ファンブック』
(たまごまご)