だって、舞台で人間のショッパイところとか酸っぱいところとか苦いところとか、そういうのを表現するのが得意な松尾スズキでしょう?
絵本ってどうなるのと。
とはいえ最近は50を過ぎて熟年期に入り、人をさらにじっくり見つめた『人生に座右の銘はいらない』なども書いていますし、どうなるかわからない。
おっかなびっくりで手にとった、初の描きおろし絵本『気づかいルーシー』。
うん、面白い。
「松尾スズキが描いた」という前提抜きに、子供も大人も楽しめるいい絵本です。
なんせヒロインの、つり目気味の少女ルーシーがかわいい。
ルーシーは、気づかいのできる子です。
でもさあ、「気づかい」ってなんだ? 難しい問題です。
その難しさを、簡潔な文章で表現しました。
ルーシーは
見て見ぬふりをしました。
すごく、努力して、
見て見ぬふりをしました。
一文に含まれるもの、とても多い。
正しいことを言わない、けどウソではない。
日本人独特の感覚が、短い文章の中に入れ込まれています。
この絵本、結構豪快なんです。
いきなり序盤に、おじいさん死にます。
そして、おじいさんの皮をむきます。
むいたおじいさんの中身を見て、子馬は言います。
「やっぱり人は見た目じゃなくて中身だな」
ふ、深いな。
出てくるメインキャラは、ルーシー、おじいさん、子馬。
子馬はルーシーのために気づかいをします。
おじいさんはルーシーのために気づかいをします。