モテない仲間たちと趣味の世界と無駄話に青春を捧げ、モテないままいいオトナになってしまったボンクラたち。彼らにとって世の中のどこかには存在するらしい不倫や、愛人作りは遠い憧れであり、魅力的なアブない橋。
でも、もし、その夢が叶えられそうになったら……?

『週刊ヤングマガジン』連載中で、一巻が発売になった『FRINGE-MAN(フリンジマン)』は、そんなダメなオトナの情けなくも笑える姿が話題になっている。題名からしてFRINGE-MAN(キワキワの男)と不倫自慢をかけているのもエグく新鮮だ。

マンガ本編も最初から飛ばしている。まだ何も知らない読者に、主人公・田斉(たさい)より洗い物をしている嫁の姿を全面に押し出し「君のダンナはどうしようもないクズに成り下がっているよ……」と声なき懺悔を見せつける。でも、この主人公はまだ不倫できそうと思っているだけで実行には移せてないんですけど。

そんな実行力も無いクズこと主人公の田斉が愛人作りの道に邁進することになったのは、腐れ縁の友人たちとの麻雀の途中での会話から。この友人たちも、空気の読めない野球バカ満島(既婚)と、中年太りなコブラ似で、B級映画のことでしか比喩がだせない安吾(未婚)という頼りにならない面々。普段は「タイムスリップしたら何時代にいきたいか」を話し合い、「おっぱいが自然にたくさん見える時代」を基準に激論を交わすボンクラどもなのだ。「愛人の作り方」も、ふだんの与太話のバリエーションに過ぎなかった。そう、井伏真澄・通称愛人教授(ラマン・プロフェッサー)がその雀卓に同席していなければ……。
 同時に五人もの愛人を乗りこなす、死んだ目がチャーミングな愛人教授の「本気で愛人を作りたいと思いますか……?」の問いかけとともにストーリーは急転直下、愛人同盟を作った彼らは、ダメ人間から立派なクズへとメタモルフォーゼしていく。おやおや。


愛人になってもらうにはどんな告白をすればいいのかとか考えていた主人公・田斉の認識の甘さを、愛人教授がビシビシ論破していく姿は痛快で、「愛人になりそうな女の見つけ方」の明快さには、読んでいて「マァジデ!?」と声を上げるほど。不倫候補との接近法、家への上がり方、前カレの登場、嫁への罪悪感への対処法など、不倫もまだできていないのに次々巻き起こるハプニングに薄汚れた友情パワーで立ち向かう愛人同盟。その展開はどれもスリリングで、あれ? でもこれ目標はクズだよね? という疑問を一瞬忘れてしまうほど。

一巻が発売してすぐの『FRINGE-MAN(フリンジマン)』の物語はまだまだ序盤。実際に愛人をゲットしてしまったときに、男たちの友情は、なんとか結婚してもらった嫁さんとの仲は、そして自分の罪悪感はどうなるんだ? ダメな方向に等身大な彼ら愛人同盟の行く末に、要注目だ。絶対ろくでもないことになること確実のスペクタクルになるからな! 講談社コミックプラスの試し読みページから可能なので、愛人候補の見つけ方を知りたい救えない諸兄はぜひ突撃してもらいたい。自分は愛人作りの前に結婚相談所の候補を探してくるんで。
(久保内信行)
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