私「椅子は自分で作りました。
文藝春秋から『壇蜜日記』が刊行された。「文藝春秋」の企画「この人の月間日記」に登場したのをきっかけに書き始めた日記を、このたび文庫にまとめることになったのだ。
10月15日、新宿紀伊國屋書店でサイン本お渡し&握手会が行われた。整理券200枚はすぐさまなくなり、あとから150枚追加したのだとか。
サイン会前に記者会見が行われた。取材のまえのフォトセッション、青いワンピースを着た壇蜜は、カメラに向き合うたびにポーズを変える。サービス精神もすごければ、これだけたくさんのポーズのバリエーションを持っているのもすごい。タイミングを逃してカメラ目線を撮ることができなかったカメラマンを見つけて、「大丈夫ですか?」と声をかけ、ふたたび視線を向ける。
す……すごい。好きになってしまいそう。
「『壇蜜日記』は、良くも悪くも私生活の切り売り。形になって感無量です」
文庫に収録されているのは、2013年10月7日から2014年8月16日までの日記。
「キラキラハッピーなものは一切載ってないです。33歳の女性が、仕事を終えて夜寝る前に、余力で書いてる日記です(笑)。『これを書いたら寝れる』と思って、ブログと一緒に毎日書いてました。一日でも穴をあけてしまうと、取り戻すのに時間がかかる。毎日続けてさえいれば、それがつながっていくような気がして、それを励みにしていました」
日記は1日につき1段落。文庫1ページ近く書いている日もあれば、1行で終わっている日もある。
「1行で終わっている日は、次の日早かったんです。暮らしぶりがわかりますね。長い部分は、余力が多めだったんだなと」
毎日日記をつけるために、壇蜜はiPadに防水カバーをつけて、お風呂の中か寝る前に書いていたのだそう。この文章、お風呂の中で壇蜜が書いたのか……と思うと、ちょっとドキッとしてしまう。
実際に起こったことでも、書けなかったこともある。
「あったら書いてますね! 『……ということがあって、私は隣の男と寝る』と書いてないということは、どっかで帰られたんでしょうね。そこまで一緒にいてくれる人がいたらいいなあとは、いつも思ってますけど」
文庫のあらすじには、このようにある。
〈抱かれる予定はしばらくなしーー〉
壇蜜と色恋の組み合わせにどうしても浮き足立つ記者は、ここに触れないではいられないのだが……
「これ、びっくりしました! 編集さんがそう思って書いたんだろうなって。〈しばらくなしーー〉って書かれちゃったら、もうそうやって生きていくしかないですよね! 嘘つき〜ってなっちゃうから」
かといって、『壇蜜日記』が枯れている本かと言えば、そうではない。昔の男性の話が挿入されているし、壇蜜が猫を抱いているようなシーン(かなりいっぱいある)はそこはかとなく色っぽい。
「機会があるまではそうやって生きていきます。『壇蜜日記』が売れて、『壇蜜日記2』が出るようなことがあれば、あらすじを〈抱かれる予定はしばらくなーーかったが!〉みたいになったらいいなと思ってます(笑)。33歳が34歳になるくらいまでは。さみしいもんですよ、生きてるの」
自虐と宣伝を同時にこなす壇蜜、プロだ。抱負を聞かれても、控えめな態度は崩さない。
「このご時世、浮き沈みの激しいこの業界で、なかなか考えにくいですけれど……もしかしたら変わらないことも、自分の仕事の一環なのかもしれないなと思ってます。だって10年後キラキラハッピーだったらみんなガッカリしませんか? IT社長と結婚したり……それはちょっとキツいですね。お金持ってる人はちょっと……」
ちなみに理想の男性は、「(金銭面で)『追いつけ追い越せ』でも怒らない人」だそうです(指で円を作ってお金マークを示す壇蜜)。
「将来的に物書きになろうと思っている?」という質問にも、壇蜜は首を振る。
「無理です、無理です。タレントが物を書いたら、疑われるでしょ? 無から有は作れない。日記が限界でした。日々あったことを綴るしかテクニックがないので。今はそれをみんなが見て面白いと思えるものにするので精いっぱいなんでしょうね。これが出せただけでも本当にありがたいです」
記者会見が終わった後、壇蜜の握手会を横から見ることができた。
男性だけではなく、女性の姿が目立つ。以前からの顔見知りのファンも多いようで、壇蜜はファンの目を見つめながら「来てくれたんですね」「髪切った?」「元気でいてくれてよかった」「手、冷たいですね」と話しかける。
圧倒的神対応! 取材時間約1時間。完全に好きになりました。
壇蜜『壇蜜日記』(文春文庫)
【書籍版】 【Kindle版】
(青柳美帆子)