『まんが家さんの修羅場めし』は、まんが家どんなものを食べているのか、レシピを教えてもらおう、という体のレポマンガ。
カレー好きまんが家カラスヤサトシが、山椒やかつお節を使って作る「和カレー」。

料理漫画も数多く手がける小池田マヤの、冬のおすすめ料理「ピェンロー(白菜鍋)」。
ラズウェル細木が提案する簡単おつまみ「初鰹のオイルマスタード漬け」。
誰でも簡単に、ちょっとこだわって作れるレシピが掲載されています。

さて食の話をすると、生活習慣がわかるもの。
体調を崩しても誰かに代わってもらえない。
睡眠も不規則で徹夜も多い。
締め切り前はゆっくり食べる余裕もない。
まんが家たちの「印象に残る修羅場」話がボロボロと出てきます。

たとえば『ベルサイユのばら』の池田理代子。
週刊で23〜24ページ+読み切り、という修羅場で彼女が何を食べていたかというと、お茶漬けのみ。
理由は「噛む時間がもったいないんです」
徹夜作業な上、12〜16時間飲まず食わず。
空きっ腹にお茶漬けをかっこむ。
結果、病院に運ばれました。
今はアシスタント募集の条件の一つが「ご飯が作れる方」

『ゴルゴ13』のさいとう・たかを。
月産ページ数600P。プロダクション方式の完全分業制とはいえ、ケタが一つ多い。

「スケジュール見るとな、ワシの寝る時間が入ってないんや。700Pってのも一回あったな」
60時間ぶっ続けで描いて、4時間だけ寝てその後48時間ぶっ続け……という生活を57年続けています。
今は皆、外食とのこと。

B級グルメマンガを描いている土山しげる。
若いころ裏社会漫画を週刊でかけもちした結果、過労で入院。
ところが、病院の食事があまりにもおいしくなかった。

つらくて鬱憤がたまりすぎた末、「次に描くものはごはんもの! 退院したら食マンガを描いてやる!」
こうして『極道めし』『野武士のグルメ』などが誕生しました。

過酷。とはいえ体調管理は自己責任。
部屋にこもる仕事なので、ストレスはたまる一方。
「やっぱり追われてくると、ストレス発散って「食」しかないんですよねー」と語るのは、美樹本晴彦。
では彼は何を食べているかというと、外食、てんやもの、マック。

一人だと「ごはんを炊けるかもアヤシイです」
コンビニでシュークリームを買うのが、楽しみの一つだそうです。

アシスタントに自ら、料理を教えこむ作家も登場します。
まんが家自身が手を回しきれない時でも、栄養管理は大事。
誰かが作らないと、食事を抜いてしまうこともしばしば。
修羅場における「ストレス」と「人間の限界」、そして「食べることの大切さ」がわかる一冊。

ちなみに、本当に忙しい時に喜ばれるのは「左手(利き手じゃない方)でさっと食べられるもの」のようです。


奥原まむ『まんが家さんの修羅場めし』
(たまごまご)