そのころのゲームハードはゲームボーイやゲームボーイポケットで、画面はもちろん白黒だ。そして何より初代ポケモンといえば、数々の「裏ワザ」があったのを覚えているだろうか。ゲーム攻略サイトが発達した現代とは違って、当時の子どもたちが頼れるのは基本的には友達からの情報だけ。幻のポケモン「ミュウ」をゲットしようと必死になっていた。

「ポケットモンスター モンスターコレクション MC_028 ミュウ」タラカトミー
【小学生の間に都市伝説的に広がった「ミュウ」の存在】

初代ポケモンに出現するモンスターの総数は当初、150匹ということになっていた。ところが、ソフト発売からしばらくして「実は151匹目のポケモンがいるらしい」という噂が流れ始めた。当時小学生だった筆者は、まさかそんなはずはないと信じられなかったが、都市伝説的に話は広がっていた。
それからしばらくしてついに、151匹目のポケモン「ミュウ」を裏ワザで生み出す技術を習得したクラスメイトが現れる。彼は慣れた手つきで、「マスターボール」などの道具を置く順番をなぜか細かに決め、AボタンBボタン、セレクトボタンを駆使して、通常のプレイではありえない複雑な操作をしてみせた。
バグでゲーム画面と音楽が一瞬乱れてから、通常は戦闘シーンにならないはずの「タマムシティ」のデパートでバトルが始まり、見たことのないポケモンが出現した。それがミュウだった。後に月刊コロコロコミック(小学館)でプレゼント企画が行われるなど、公式に発表されるまで、本当にどんなものかわからない「幻の存在」だったのだ。
この裏ワザを知っているだけで彼はヒーロー扱いで、「やってやって」とゲームボーイを手にした同級生から引っ張りだこだった。同じような光景が全国の小学生の間で繰り広げられていたのだろうか。
そもそもミュウは、製品版には入らないデバッグのためのプログラムを抜いたわずかな隙間に、ゲームクリエイターの森本茂樹氏が「イタズラ」で入れたものだという。任天堂ウェブサイト内にあるコーナー「社長が訊く『ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー』で明かされている。初代ポケモンを振り返るなかで、「こっちで仕組みを用意しない限りはミュウは出てこないはずだった」「ところが思わぬバグで一部のユーザーのところにミュウが出てしまって」と森本氏は話している。
