週はじめの停滞感が嘘のようにドラマティックな朝ドラ「まれ」(NHK月〜土 朝8時〜)35話(5月8日金曜)。
20年来、確執があった母・幸枝(草笛光子)と娘・藍子(常盤貴子)がついに本音で激突。

孤独だった藍子が徹(大泉洋)と家族をつくり、能登で貧乏でも平穏に暮らしていたところに、幸枝が突然やって来て移住すると宣言し、みるみる希(土屋太鳳)や徹、村の人たちとも打ち解けていくのを見て、藍子はますます怒りを募らせます。
すると幸枝は、
「あなたはね 懐の広い 女のふりをして
徹を飼い殺しにしてるだけ。
徹の夢を 一番信じていないのは、
あなたじゃないの?」と強烈な一撃。
突如として、徹も希も、藍子の愛情によって夢に向かうことを阻まれていたという母親の家族への依存という病理に話が向かいます。
それはそれは深刻な問題を突きつけながら、
「だから徹だって どんどんつまらない男になっていく。」「夢だけがとりえだった男なのに。」などと徹に対してあんまりなことを幸枝に言わせ、くすっとさせるのは、脚本家・篠崎絵里子(崎の大は立のほう)の意図したことなのでしょうか。
さらに「この20年間、徹はよく言ってたわ」と言う幸枝。どれだけ密に徹と連絡とりあっていたのか、藍子の立場もありません。
自分で結婚式をすっぽかしておきながら、藍子をさらに傷つけ、確かにただの困った人に見えかねない幸枝に、文(田中裕子)は、
「ほの時 ほの時
あんたや きちんと伝えんさけ。
気持ちをちゃ 説明してやらんさけ
傷ついとるがでないがけ?」と助言。
幸枝も本心を言えない人だったんですね。
「何を伝えたって 言い訳にしかならないわ。」と強がる幸枝に、
「言い訳せな 駄目な時もあるわいね 人生には。」と文。
文も何も言わないタイプですのにね。

で「まれ」のいいところは、誰にもいい訳しないで突っ張ってきた幸枝の生き方を正しいとか間違っているとは決めないのです。
最後に、言葉にしない幸枝の愛情のすべてをキャロットケーキに託す。
名言、涙たっぷりで朝からお腹いっぱいの35話でした。(木俣冬)

【勝手に、今日の名言】
「愛情っちゅうがは目に見えんさけ
やっかいやわいね。」(文)

【勝手に、今日の小姑ツッコミ】
 幸枝の代わりに希がつくったキャロットケーキ。すごい、すごいと大騒ぎでしたが、上にのった幸枝の飴細工が派手なだけで、ケーキ自体は食べれば美味しいのでしょうが見かけは地味で目に入らないのでは。
(木俣冬)

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