SPYAIR 帰る場所なんかない、それだったら今あるものを全力でやってみる

■New Single『ファイアスターター』インタビュー

俺は、このバンドは勝手に大きくなるって勘違いを、ずっとし続けている感じなんです。

バンド復活後の第一弾シングル『ROCKIN' OUT』を発表した今年3月以降、SPYAIRの勢いは止まらない。
4月から5月にかけて行なった全国ツアーは、全公演のチケットが発売直後にソールドアウト。ライブ自体もメンバーの結束力の高さがそのまま音に曲に反映され、とてつもなく熱いものになった。そのツアーでいち早く披露された新曲「ファイアスターター」が、7月22日にシングルとしてリリースされる。ハードでミクスチャー感覚ある曲は、バンドの初期にも通じるだろう。メンバー自身がこの曲に込めたものとは? また8月8日には富士急ハイランド・コニファーフォレストで1万人規模の単独野外ライブも決定。それに向けたコメントももらった。
(取材・文/長谷川幸信)

嘆いている言葉が現状を打破していく

――ライヴですでにプレイしている新曲「ファイアスターター」は、バンドの原点を思い起こさせるハードな手触り。どんな構想やイメージから湧き上がった曲なのか、興味深いんですよね。

UZ:昨年、バンドの活動が一度止まってた時期、音楽には触れることができなくなってしまって、制作活動も停止してしまっていたんですよ。で、動き出すにあたってそろそろ曲を作らなくちゃいけないって時期になったとき、それまでの作曲経験があるから、なんとかできるだろうって2曲ぐらい形にしてみたんだけど……。自分自身で手応えは全くなくて、マズいなと思っていたんですよ。それでも曲をどうしようかと考えていて、すごく分かりやすいテーマ……例えばヒーローが地球を救う、みたいな明確なイメージがあれば曲も作りやすいんじゃないかなと思い、そういうテーマのもとに作っていったのが「ファイアスターター」の原型だったんです。


IKE:そのヒーローのディテールを教えてよ。まずは背丈から。

KENTA:背丈からなんだ?(笑)

UZ:ヒーローの活躍する映像とか思い浮かべながら曲作りしたら、意外にスッと生まれて。最初はこのリズムかな。リズムを打ち込んで、そこにギターリフを乗せて、これはもうキテるなって。気分的にもひとつ突き抜けた感じはしましたね。作曲って楽しいなって。

――UZのソングライティングにおいても“ファイアスターター”にもなったという。

IKE:その言い回し、突っ込みどころないな(笑)。

UZ:でも、ほんとファイアスターターな感じ。夕方ぐらいに取り掛かって、朝方には出来てたってぐらいのスピードの作曲作業でしたよ。

――曲のデモをメンバーに渡すとき、発想の元の話なんかも伝えたんですか?

MOMIKEN:それは聞いてましたよ。
そのヒーロー像をイメージして歌詞を書いたんだけど、自分的にうまくハマらなくて。言葉のチョイスも違うなと。力強い言葉そのままでは、意外にグッと来ねえなって。

IKE:最初はもっと強かったよね、言葉が。押し付けがましいぐらいの言葉のチョイスにもなっていたから。その歌詞で俺も歌ってみて、聴いてみて、べつに悪くはないなと思いつつ、グッと来る感じじゃなかった気がする。

MOMIKEN:そうだったね。そこからさらに、タイアップのドラマ(日テレ×Hulu共同製作ドラマ『THE LAST COP/ラストコップ』)の内容とか、あと自分らのことも思いながら歌詞にまた向かったんです。<名もない俺らに変える場所はない>って1フレーズが出てきた瞬間、自分達のことを書こうと。昨年、地元に帰ったんですけど、もう普通の感じに戻れなかったんですよ。どこへ行っても、例えば“SPYAIRのMOMIKEN”とか冠が付いてきてしまう。自分の名前なんかない、帰る場所なんかない、それだったら今あるものを全力でやってみないかって、ケツに火をつけるような気持ちがしましたね。


――自分に向けて、そして他のメンバーにも向けたメッセージですか?

MOMIKEN:そう。曲の疾走感やサビの抜け方とかリフもあって、嘆いている言葉が現状打破していくような感じに響いていって、曲と歌詞がハマったなと思いました。

SPYAIR 帰る場所なんかない、それだったら今あるものを全力でやってみる
ファイアスターター

デモを聴いたとき、「鳥肌が立った」とUZに告げた

――しかもこの曲は熱量が高い。挫折を知った人間が、その挫折を乗り越えていくのが一番カッコよかったりしますから。

MOMIKEN:その感じが、UZの持ってきた曲にすでに出てましたからね。それでハマった感じがする。

UZ:このバンドは、そんなにトントン拍子で活動してきたわけでもないけど、昨年ほどでかい経験は初めてでしたからね。

IKE:うん(苦笑)。歌詞の文字面だけ読むと、けっこうネガティブなんですよ。だけどメロディとマッチすると、吐き出し方によってポジティブに聴こえるってことがこの曲で起こっていて。だから歌っていて不思議な感覚もありましたよね。

――それはむしろ聴き手側のほうが強く感じると思いますよ。
バンドに何が起こっていたのか、よく知る人ばかりだから。

IKE:そうですね。歌っている人間、演奏している人間が僕らですから、単なる音とか曲として受け取れるわけないですもんね。“アイツらがやっているもの”として受け止めると、いろんな思いが湧き上がるのも確かだと思います。バンドの歴史とか、いろんなことが曲や歌詞と一致していって。例えば演奏のうまいスタジオミュージシャンがやったからといって、この説得力には至らないと思いますね。そういう点でバンド=SPYAIRの曲だなと。あと音楽的なことを言うと、2000年代初期に俺らはミクスチャーを聴きまくっている日々を過ごしていたんですよ。憧れていた音楽を、今、30歳を超えた俺らがうまく表現でき始めたのかなってのも感じます。これからこういうのもありなんだぞっていう、一つの強みを見せられたと思いますね。

――ものすごくパワフルなバンドサウンドで、イントロのドラムから聴いていて覚醒される感じ。

KENTA:そうなんですよ。
この曲が出来たとき、たまたま俺はUZの家に行っていて。「今、出来たから聴く?」なんて言われて、作業部屋で聴いたとき、俺も覚醒されましたもん。今までスネアの表打ちリズムって、SPYAIRにありそうだったけど、やってなかったんですよね。このビートが来た瞬間、ついに来たなと思って。そこからの曲展開、そしてサビでドンと突き抜けるSPYAIRっぽさ。メチャクチャ震えましたね。すごい勢いで「鳥肌が立った」ってUZに言った気がする(笑)。

UZ:そう、すごくありがたいリアクションをくれて。いつも曲のデータはメールでメンバーに送るんですよ。聴いた瞬間のリアルな反応は、こっちには分からないじゃないですか。でもこの曲のときはたまたま直接聴かせることができて。しかもKENTAはちょっとリアクションでかいんで、何に対しても(笑)。
でも作曲したあとは精神的にも疲れているので、それぐらいでかいリアクションのほうがこっちにも響くし、すごく嬉しかったですよ。

――あとはメンバー全員で増幅させていけば、すごい曲になるぞという確信を?

UZ:うん、そうでしたね。

IKE:正直言うと、完成してから確かなものを得たという感じですけどね。イントロのリズムは聴いたことがなかったから、俺らにこういう曲はできるんだろうかって、ちょっと不安めいた思いも最初はありました。でも録りとミックスが終わって、初めて「いいじゃん」と、自信に変わりましたね。

この音が途切れずにもっと続いたらいい

――ライブでプレイしたとき、その感触や手応えも相当ありました?

UZ:ライブは意外と、いっぱいいっぱいなんです、プレイすることに(笑)。もちろん新曲を披露できた喜びはあるし、お客さんが喜んでいるのを見ると嬉しいんだけど、それ以上にプレイにいっぱいいっぱいであまり余裕なかった。

IKE:新曲発表って、ホントしんどいもんなんですよ(笑)。大丈夫かなって。まず演奏ちゃんとできるかな、歌詞を間違えずに歌えるかなって。「ファイアスターター」というタイトルも、最初はちょっと恥ずかしくて。ライブでタイトルをコールするときも、あんまり聞こえないように言ったんですよ(笑)。

KENTA:すげー念入りでしたもん、ドラムのカウントを絶対にかぶせてこいって(笑)。

IKE:俺が「ファイアスターター」って言った瞬間に、ドラムをダン!と入れてくれって。少しの間(ま)も許されないって。

KENTA:曲リハよりも、ドラムの入るタイミングのほうが念入り(笑)。

――2曲目にはセルフリメイク「JUST LIKE THIS 2015」が収録され、さらに8月8日には同じタイトルの野外ライブもあり、バンドとしてさらに高みに昇っていく夏になりそう。SPYAIRのこれからをどういうふうに考えてます? 規模や場所は違うとはいえ、野外ライブはバンドの原点に通じるでしょ。姿勢を正すような感触もどこかに?

IKE:これが第一歩だと思っていて、ライブタイトルの『JUST LIKE THIS 2015』には、この音が途切れずにもっと続いたらいいって気持ちも入ってるんです。俺は、このバンドは勝手に大きくなるって勘違いを、ずっとし続けている感じなんです。その勘違いも含め、ずっと続いたらいい、続けるためにはどうしたらいいかってことに頭を使ってます。だから野外も1回きりじゃない。「JUST LIKE THIS 2015」という曲が指しているものを、これまで以上に大事にしていきたいと思います。

――インタビュー2へ

≪リリース情報≫
New Single
『ファイアスターター』
2015.07.22リリース

【初回生産限定盤】CD+DVD
AICL-2922~23 / ¥1,389(税抜)
【通常盤】CD
AICL-2924 / ¥926(税抜)

[収録曲]
1.ファイアスターター
2.JUST LIKE THIS 2015
<DVD> ※初回生産限定盤のみ収録
1.ファイアスターター [Music Video]
2.Making of ファイアスターター

≪ライブ情報≫
【SPYAIR単独1万人ライブ『JUST LIKE THIS 2015』】
2015年8月8日(土)山梨・富士急ハイランド・コニファーフォレスト
特設サイト:http://www.spyair.net/justlikethis2015/

※機材席開放につき追加席販売※
・ローソンチケット 0570-08-4003(Lコード:79259) http://l-tike.com/spyair/
・イープラス http://eplus.jp/spyair/
・チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード:263-088) http://pia.jp/t/spyair-y/
・Yahoo!チケット http://tickets.yahoo.co.jp/tour/spyar152/

【NUMBER SHOT 2015】
2015年7月26日(日)福岡・海の中道海浜公園 野外劇場
http://www.kyodo-west.co.jp/number_shot_2015/

【Exciting Summer In WAJIKI'15】
2015年8月13日(木)徳島・大塚製薬徳島ワジキ工場 野外ステージ
http://www.es-wajiki.com

【音楽と髭達 2015】
2015年8月29日(土)新潟・HARD OFF ECO スタジアム新潟
http://higetachi2015.com/

【TREASURE05X 2015】
2015年9月6日(日)愛知・蒲郡ラグーナビーチ
http://www.treasure05x.jp/laguna.html

【氣志團万博2015】
2015年9月20日(日)千葉・袖ヶ浦海浜公園
http://www.kishidanbanpaku.com/

≪関連リンク≫
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