
■New Album『androp』インタビュー(1/2)
自分達の音楽を鳴らしてやるっていう前向きな気持ちしかない
andropが4作目となるフルアルバム『androp』を8月5日にリリースする。熱心なファンなら知っているように、バンドがこれまでに発表してきたミニアルバムを含む作品の頭文字をつなげると、前作で“androp”というバンド名になる。それを経てのセルフタイトルの作品であり、ポップなものからマニアックな曲まで網羅するという充実したアルバムの誕生である。そしてまた重要なのが各曲に貫かれたイキイキとしたバンドサウンドと、各メンバーの音楽的な表現力の豊かさ。聴けば聴くほど手応えがある。7月まで続いた長期ツアーを終えたばかりのメンバー4人に、新作について語ってもらった。意外な趣味炸裂のマイ旬も要チェック!
(取材・文/長谷川幸信)
今回は自由に出てきたものを自由奔放に練っていく感覚だった
――バンド名をタイトルに付けたのが最新作『androp』です。このアルバムタイトルにすることは、けっこう前から決めていたんですか?
内澤:バンド名を付けようというのは、2009年に1枚目『anew』を出すときに決めていました。5年ぐらい前のことですね。
――なぜ、そんなに前から?
内澤:andropというバンド名自体、造語なので意味がない単語なんです。なので、その単語に自分達の音楽で意味を付けようと思ったんですね。 それで1枚目は『anew』、2枚目は『note』というようにタイトルを付けていって、僕らのアルバムをリリースした順に並べて、頭文字を取ると“androp”になるんですよ。前作『period』で“p”までいったとき、バンド名に自分達の音楽で意味を付けられたんじゃないかなって思えたんですね。そして話はさかのぼるんですけど、『anew』を作った頃、pまでバンドを続けられていたら、次は『androp』というアルバムタイトルにしようと思っていたんです。そこまでいけば、バンド名に意味を付けられているだろうし、地に足の着いたバンドにもなっているだろうって。
――メンバー全員、共通した意識として5年前からそう考えていたんですか?
佐藤:いや、最初の頃は内澤くんはあまり説明はしてくれなくて。デモを作ってきても、この曲はこうだからって説明もなく渡される感じだったので。アルバムタイトルに関しても、今までは曲が全部揃ってから告げられることが多かったんですよ。でも今作は、レコーディング入る前に、次は 『androp』にしようと思っている、とメンバー全員に話をしてくれて。5年前ぐらいからその構想があったのは知らなかったですよ(笑)。
内澤:いや、5年前のときは『androp』というベスト盤を作ろうと考えていたんです。『and』と『drop』で2枚組とかおもしろいなって。でも『period』まで作ったとき、5年間で自分達で培ってきたものをいろんな形でできるようになってきたので、次に作る作品はどこを切り取っても俺らの今が詰まったもの、胸を張ってandropの音だって言えるものにしよう。そういう話をメンバーにしましたね。
――初の細かい説明を(笑)。原曲を手掛けるときは、ある種、自分にプレッシャーを与える感じも強かったですか?
内澤:プレッシャーというか、より自由にしようと思いましたね。今までが逆にプレッシャーを掛けていた分、今回は自由に出てきたものを自由奔放に練っていく感覚でした。今まで僕は、アレンジ的にも積み重ねてキッチリした曲が音源になるべきだと思っていたんです。アルバムは何度も聴くものなので、それに耐えられるようなしっかりした音程と長さで、音の重なりも音色もきっちりしたものが音楽の究極であり、それを理想として作ってきたんです。それでもいいんですけど、普段、ライブでやっている熱量が音源では伝わらないというジレンマもあって。今回は綺麗なのもいいんですけど、ライブで感じるような心がグッと来る瞬間の音をレコーディングしようと思ったんです。リズム的に全員、前へ突っ込んでいるけど、それがカッコよくてグッと来るねって。そういうテイクを選んでいったんですよ。
――考え方がまるで正反対になったじゃないですか(笑)。自分自身の振り切り方が凄いですよね。
内澤:そうですね(笑)。
音楽の力をすごく信じている
――原曲があったうえでバンドセッションでアレンジを煮詰めることも多くなったんですか?
内澤:セッションした曲もありますね。スタジオに入って、ずっと同じフレーズを弾き続けるってことも(笑)。
伊藤:でも基本的には、デモ段階でアレンジは全部決まっているんですよ。内澤くんがデモを作ったときには、全パートのフルアレンジが上がっているので。レコーディング前にそういうのを固める作業はあまりなくて、内澤くんの考えているアレンジをなるべく高い次元でレコーディングに臨めるようにという意味でのセッションや、アンサンブルを見直す作業はけっこうしました。
――曲を自分に染み込ませるような?
伊藤:そういうことですね。
――でも“グッと来る”というジャッジの境界線は一番判断が難しかったりしますよね。その日の体調によっても変わるかもしれないし。
内澤:そうですね、心境とかでも変わるし。でも4人が共通するグッと来るもの、それを判断材料にしていました。
佐藤:あと前作『period』を出したとき、ようやく俺達はバンドとして超えられるところまで来たなって思いがあったので、この4人が自然な形で素を出せるって自信もあったんです。選曲にしても、andropはこういうイメージだよねってことにこだわり過ぎず、そのイメージをブッ壊しても素でいいじゃん、というふうになれたというか。だから単純にいいなと思う曲を選んで。ほんと素直にやったんですよ。
――それにしても曲調からアプローチまで振り幅が大きいですよ。
内澤:そうですね。結果的にという感じだと思います。メンバーそれぞれジャンルの違う音楽を聴いてきているので、それだけ引き出しは多いですね。 だから、どんな曲を作っていっても、この4人なら表現できると思っているし。バックボーンがいろいろあるからこそ、この振り幅につながっているのかなと思います。原曲のイメージを壊さず、さらに曲に抑揚を付けてくれるメンバーなんです。
――そういう意味で「Alternative Summer」はヤバイですね。
内澤:ありがとうございます(笑)。ベースがバキバキで。
前田:最初にデモを聴いたときから、これはベースリフから作ったんだろうなって感じたし。最初にベースソロがあるんで、そこで聴いている人の気持ちをいかに乗せられるかが勝負。そう思ってレコーディングしましたね。
――一筋縄ではいかないバンドアンサンブルの曲もあれば、三ツ矢サイダーのTVCMソングでも流れている爽やかな「Yeah! Yeah! Yeah!」などもあります。『androp』を通して、自分達はどういうバンドなのか、客観的に見たりしました?
内澤:客観的にというか、芯にあるのは聴いてくれる人ありきで曲を作っているという考え方です。その人の生活を支えるじゃないですけど、辛いことがあったときにこの曲を聴いたらちょっと救われたとか、楽しいときにこの曲を聴いたらさらに楽しさが増したとか、そういう音楽の使われ方をしたいなと思っていて。自分自身、辛いときに音楽を聴いて救われたこともあるので、音楽の力をすごく信じているんですね。その力を信じて、自分達の音楽をやってます。聴いてくれる人に寄り添える曲であってほしい、と思ってやっているんです。どんなにポップだろうが、どんなに一筋縄ではいかないハードな曲だろうが、そういう芯を貫きながら音楽を作っていますね。
――バンドはキャリアを重ねるにつれ、サウンド的な方向性が定まるじゃないですか。なかなか、それを見せないバンドでもありますよね。
内澤:そうですか?(笑)
――すごくマニアックなことやっている一方で、間口の広いポップさも武器にしているし。
内澤:そういうことを分かって聴いてもらえると、すごく嬉しいんですよね。やっぱり、やっているからには音楽や楽器のことにあまり興味がない人達にもアプローチできる曲を作りたいし、音楽にすごく詳しい人にもアプローチできる曲も作りたいと思うので。その両方をやりたいんですよ。詳しくなくても自分達の曲で音楽が好きになって、音楽のこと詳しくなって、改めてandropの作品を聴いてみたら「あっ……、こんなことをやっていたんだ!」と驚くような。そういうバンドでありたいですね。自分達が好きな音楽もそうだったんですよ。この曲は身に染みるけど、音楽のことをいろいろ分かったうえで改めて聴いてみると、裏ではちゃんと身に染みるように作られていたんだ、と理解できて。いい仕事してるなって。そういうのを作れるバンドになりたいんですよね。自分らの音楽を聴いてくれる人に対して、ちゃんとやりたいんです。

新たな手法を何か選択するんじゃなくて、基礎的なことから次のステージに進みたかった
――プレイヤーとして、自分に課したハードルもいろいろありました?
伊藤:ライブで表現している熱量を音源でもやりたいってことは、例えば今まで変化球で勝負していたところをストレートで勝負できるようにならなきゃいけないってことだと思うんです。そのためには、基礎的な能力が必要になってくる。ほんとにいい音を出さなきゃいけないし、いいグルーヴで演奏できなきゃいけない。バンドのアンサンブルがどうなっているのか、ちゃんと全員が理解している必要があるし、演奏で何を目指すのか曲ごとに定まっていなきゃいけないし。それで内澤くんが作曲期間の時でも、3人でスタジオに入って、曲の細かいところまで1つ1つ見直していって。音に気持ちを乗せたとしてもノリが損なわれないようにしたい。熱くもあるけど、丁寧にできるようになっていかなきゃいけないところだったんです。新たな手法を何か選択するんじゃなくて、基礎的なことから次のステージに進みたかった。そういうところを固めて臨んだ結果が、今回のアルバムの曲達じゃないかなと思っています。
内澤:メンバーみんな、ストイックなんですよね。すごく真面目。細かいところまで考えるので、ほんと助かっています。
――誰が一番不真面目なんですか?
内澤:そういう切り返しですか(笑)。音楽以外はダメなところ、多いかもしれないです(笑)。最近の話なんですけど、普段もしっかりしないと、音楽もしっかりしないんじゃないかって、みんなでしっかりした人間目指しているんですけど(笑)。
前田:そう。遅刻をしない、忘れ物をしない、片付けをちゃんとする、とかね(笑)。
――ほぼ小学生レベルの話ですよ、それ。
佐藤:普通の社会人だったらあり得ない(笑)。
――でも音楽としてはレベルの高いところに来たな、と『androp』を完成させて感じました?
内澤:アルバムが発売され、聴いてくれる人達に音楽が届いてからですね。聴き手ありきで作っているので。そしてライブで曲を演奏したとき、自分の思い描いていた表情にみんながなってくれるのかが、すごく気になりますね。4~7月まで自分達のバンド史上、一番長いツアーを廻って、そこで得たものがすごく大きかったんです。バンドがすごく強くなった感じがする。そのツアーを経て、『androp』の曲を噛み砕いてからのツアーが9月から始まるんですけど、相当、変わった自分達を見せられると思います。
――まず入り時間に遅刻せず、忘れ物もしないで楽屋入りして……。
内澤:まあまあ、そうですよね(笑)。そこからのステージですから、全然違いますよ! ……って、今まで遅刻と忘れ物ばっかりしてたわけじゃないですけど (笑)。自分達は何でもできるって言えるぐらい自由度が高くなっているし、胸を張って音楽を届けられるような気がします。自分達の音楽を鳴らしてや るっていう前向きな気持ちしかないですね。
――インタビュー2へ
≪動画コメント≫
≪リリース情報≫
New Album
『androp』
2015.08.05リリース
【初回限定盤】CD+DVD
WPZL-31063~64 / ¥3,500(税抜)
※特殊パッケージ仕様
【通常盤】CD
WPCL-12178 / ¥3,000(税抜)
[収録曲]
1. Yeah! Yeah! Yeah!
2. From here
3. Shout
4. Answer
5. Paranoid
6. Star
7. Dreamer
8. Alternative Summer
9. Letter
10. Corna
11. Ghost
12. Run
13. Songs
14. You Make Me
<DVD>
1. From here(studio live)
2. Paranoid(studio live)
3. Letter(studio live)
4. Yeah! Yeah! Yeah!(studio live)
≪ツアー情報≫
【one-man live tour “androp”】
2015年9月19日(土)東京・Zepp Tokyo
2015年9月20日(日)東京・Zepp Tokyo
2015年9月23日(水・祝)宮城・仙台Rensa
2015年9月26日(土)北海道・Zepp Sapporo
2015年10月4日(日)広島・広島CLUB QUATTRO
2015年10月11日(日)福岡・Zepp Fukuoka
2015年10月17日(土)大阪・Zepp Namba
2015年10月18日(日)大阪・Zepp Namba
2015年10月24日(土)愛知・Zepp Nagoya
2015年10月25日(日)愛知・Zepp Nagoya
≪関連リンク≫
androp オフィシャルサイト
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