ウルフルズ 愉快痛快みんなが大好き“ウルフルズ100%”なアルバム『ボンツビワイワイ』/インタビュー

■New Album『ボンツビワイワイ』インタビュー(1/2)

ワイワイしたくなる絶対的な個性

昨年2月に4年半の充電期間を経て再始動を果たしたウルフルズ。前作『ONE MIND』で溢れる思いを爽快なバンドサウンドに託し、再び走り始めた彼らが早くもニュー・アルバム『ボンツビワイワイ』をリリースする。
そして、この作品では、多くのリスナーが待ち望んでいたであろうリズム&ブルースやソウルといったルーツミュージックに根ざした愉快痛快なウルフルズらしいパーティ・ミュージックを展開。さらには長きにわたる経験に培われた言語感覚を駆使したユニークな歌詞や前作から参加している若きプロデューサー菅原龍平を交え、ウルフルズらしい高揚感あふれるグルーヴが聴く者すべてを笑顔にするご機嫌なアルバムに仕上がっている。
(取材・文/小野田雄)

今、ウルフルズを始めた頃に近い心境で、バンドに臨んでいる

――2014年のウルフルズ再始動以前と以降で、バンドに臨む心境は変わりましたか?

トータス松本(以下、トータス):『ONE MIND』というのは復帰作でしたから、復活に向けて、ウルフルズらしい要素を詰め込んで、アルバムを作り上げたんですけど、その曲を持ち回ったひさしぶりのツアーでは昔の曲もいっぱい掘り起こして演奏したんですね。そうしたら、昔の単純明快な曲はすごい盛り上がったし、いろんな音楽のバックボーンを持っているサポートキーボードの浦(清英)くんもウルフルズの昔の曲は演奏していて、すごく楽しいんですって。そして、自分たちで歌ったり、演奏したりしていても、「これ、歌詞に意味がないよなー」と思いつつ、単純に盛り上がったりして。そうした経験が新たな音楽制作のヒントになったんですよ。


――つまり、それがロックバンドの形態で単純明快なルーツ指向の音楽を表現した新作アルバム『ボンツビワイワイ』に繋がったと。

トータス:ですね。しかも、周りを見渡してみると、それって、他の誰にも出来ひんことかもなって思ったりもしていて。海外では、ルーツ指向のヴィンテージな音楽をやってる人たちがいっぱいいるのに、日本ではこういう音楽をやっている人がとにかくいないんですよ。だから、日本にその波がやって来たら、僕らの天下ですよ(笑)。だから、「どういうことを歌おう」とか「こういう曲をやろう」とか考えるまでもなく、ウルフルズがもともと持っているものを気楽な感じでポンと出そうと思って臨んだのが、今回のアルバムなんです。


ウルフルズ 愉快痛快みんなが大好き“ウルフルズ100%”なアルバム『ボンツビワイワイ』/インタビュー

――しかも、周りから求められるウルフルズらしさを自己模倣しているような、ある種の窮屈さに苦しんでいた活動休止前と比べると、この作品では積極的に期待に応えようという瑞々しい推進力がみなぎっていますよね。

トータス:そう、たしかにかつては周りから求められる方向に突き進んでいた時期もありました。でも、今はそうじゃなく、自分たちが求めているものを優先させているし、ウルフルズを始めた頃に近い心境で、バンドに臨んでいるんですよ。

サンコンJr.:そういう心境になれたのは、活動休止の4年半があったからこそ。その間に、「自分が思うウルフルズってなんやろ?」とか「自分が音楽を続ける理由ってなんやろ?」と、答えが出ないなりに考える時間があったし、活動休止前は客観的に見ることが出来なかったウルフルズについて、冷静に見直すことが出来たし、ウルフルズと自分の距離が保てるようになったんです。

ウルフルケイスケ(以下、ケイスケ):僕もそう。
バンドの再始動から作品のリリース、ライブという流れのなかで、かつては見えなくなっていた“周りから求められているもの”が再確認出来たし、それに応えることが楽しいと思ったんですよ。それが今回のアルバムにあっては、「ボンツビワイワイ」や「ロッキン50肩ブギウギックリ腰」といった曲に反映されているんですよ。

――ジョンBさんが前作、今作のプロデュースを手掛けた菅原隆平さんたちと組んだザ・ドーナッツ!しかり、今はメンバーそれぞれの課外活動がバンドにとってはプラスに作用しているというか。

ジョンB:そうですね。そういう活動をしながら、でも、必ず、ウルフルズに戻ってくるのは、自分としても、こういうことが一番やりたいことだから。もちろん、ウルフルズは活動するなかで変化し続けているんですけど、もともとは「ボンツビワイワイ」みたいなところから始まってるバンドやから。
そうやって帰る場所があるというのは、ホントいいことだなって思いますね。

ウルフルズ 愉快痛快みんなが大好き“ウルフルズ100%”なアルバム『ボンツビワイワイ』/インタビュー

ウルフルズ 愉快痛快みんなが大好き“ウルフルズ100%”なアルバム『ボンツビワイワイ』/インタビュー

これといって試行錯誤することなく自然とグルーブが生まれた

――年齢的に、ウルフルズのメンバーより一回り下の菅原さんとお仕事をしてみて、その手応えはいかがでしたでしょうか?

トータス:ウルフルズの再始動にあたっては、4人だけで顔を突き合わせて作業したら、活動休止前のことを思い出してしまうんじゃないかという懸念もあったので、誰か若いやつに間に入ってもらいたいなと思ったんです。その一方で、菅原くんとは知り合いのライターさんが注目しているミュージシャンとして知り合って、ちっちゃいライブハウスでセッションしたり、黒田(ジョンB)は彼と一緒にがっつり作品を作ったり、メンバーに近くにいて。「一緒に仕事したら、いいんちゃうかな」って思っていたこともあって、前作、今作と、一緒に仕事をしてみたら、彼はすごくいいんですよ。しかも、後から聞いたら、高校生の頃からアルバムを買って聴いてくれていたようで、ウルフルズのことをよく分かっているうえに、ウルフルズのルーツとなる音楽はもちろん、僕らが知らない音楽もいろいろ聴いていて、そういう新しい要素も僕らに投げてきてくれるのが新鮮なんです。

――そして、この作品は配信シングルの「ボンツビワイワイ」からブルージーなバラードの「チークタイム」まで、全ての曲が非常にコンパクトで、どの曲もグルーブにあふれたものになっていますよね。


ケイスケ:今回、パーティーアルバムというテーマがあったから、“踊れる”とか“無条件”とか“理屈ない”とか、そういう意識が4人のなかにあったことが、まず大きくて。

トータス:そのうえで言葉に演奏が引っぱられているのか、演奏に言葉が引っぱられているのかは分からないけど、スタジオに入って音を出してみたら、「いい感じやね」って。だから、これといって試行錯誤することなく自然とグルーブが生まれたんですよ。

ジョンB「あと、『ONE MIND』の時から松本くんが打ち込みのリズムとベースを入れたデモを作るようになったんですね。それをもとにレコーディングするんですけど、より具体的なイメージをもって演奏出来たことも大きいんじゃないかと思います。

――トータスさんはデモの制作に関して、どんなことを意識されましたか?

トータス:僕としては、デモを聴かせた時にメンバーがニヤッとするか、「こう来たか!」と思えるかどうか。
まず最初にそう思ってもらうのが、僕の役目なんですよ。しかも、「難しい曲書いてきたなー」と思うようなものではなく、余白を残して、それぞれの楽器に解釈の余地を残しながら、歌詞で笑わす曲もあるし、リズムとかフレーズで弾く気を喚起させる曲もあるし、そういう瞬間を生み出すことが自分の曲作りのモチベーションだし、それが上手く噛み合った時にウルフルズの曲は爆発するんです。

ウルフルズ 愉快痛快みんなが大好き“ウルフルズ100%”なアルバム『ボンツビワイワイ』/インタビュー

「腰痛」という言葉でも歌い方一つでソウルフルに歌えるんです(笑)

――歌詞に関しては、どの曲も言葉遊びに徹していて、踊れるサウンドと相まって、パーティ感が増していますよね。

トータス:今回、メッセージを歌うのはいいかと、制作の最初の段階で思ったんですよ(笑)。というのも、『ONE MIND』では、メッセージも歌いましたし、ラブソングも書いた。聴いたら、元気になるような曲や自分を見つめた曲も作りましたから、今回は語呂と歌居心地の良さ、面白い韻をどれだけ踏めるかというところで勝負だ、と。だから、今回は自分が面白いと思える歌詞を追求したんですよね。しかも、こういう歌詞って、悩んでも出てこないから、出てこなかったらすぐに止めるし、酒飲みながら、思いつきでばーっと書くんですけど、それがいいかどうかは実際に歌ってみないと分からないんですよ。まぁ、でも、字面に対して、歌い回しが上手くいってるのか、たまたま、曲に対して言葉が上手くハマっているのかはよく分からないにせよ、これまで培ってきた経験や技術があってこそだとは思うし、自分のなかには、どんな言葉でもソウルフルに歌えるし、ぱっと聴き、何言ってるのか分からんでも、歌詞を読んでびっくりさせられる自負があって、例えば、「腰痛」という言葉でも歌い方一つでソウルフルに歌えるんです(笑)。

――そうしたユーモアを極めた歌詞を歌っているくらいですし、作品からは作業が順調に進行した充実のレコーディングが目に浮かんでくるようです。

トータス:レコーディングはとにかくゲラゲラ笑いながらの作業ですよね。笑って作らないといいもの出来ひんなと思ったし、笑わずにこういうアルバムは作れないですよ(笑)。もちろん、演奏は真剣ですよ。その瞬間は鬼のような顔して、弾ききって、叩ききるんですけど、その合間合間でどれだけ笑えるかという雰囲気を大事にしてました。

ウルフルズ 愉快痛快みんなが大好き“ウルフルズ100%”なアルバム『ボンツビワイワイ』/インタビュー

ウルフルズ 愉快痛快みんなが大好き“ウルフルズ100%”なアルバム『ボンツビワイワイ』/インタビュー

――曲のあちこちに入ってるガヤだったり、メンバーが一丸となったコーラスの凸凹感からレコーディングの楽しそうな雰囲気が伝わってきます。

トータス:昔の音楽、例えば、ニューオリンズの音楽なんかそうやけど、よく聴くと、ガヤみたいなコーラスがたくさん入っているんですよね。下手も上手いも関係なく歌っている、そういう昔のレコードの記憶がすり込まれているのかもしれんけど、ウルフルズの魅力にはコーラスもあって、僕は本気で歌っているんですけど、コーラスはなんか……なんかじゃないですか(笑)。それこそ、昔はね、ビーチボーイズにハマってる時なんか、彼らのようにもっと上手に歌ってよって思う時もあったんですけど、それは叶わぬ恋というか、憧れとしてはいいんでしょうけど、ウルフルズというバンドを俯瞰で見た時、ものすごい本気で歌ってるボーカルに対して、「なんかなぁ……」っていうコーラスが頑張って歌っているバランス感こそが僕らの個性なんですよね。だから、今回はみんなに頑張ってもらって、コーラスパートをたくさん設けたという。9月から始まる全国ツアーではメンバーが大変なことになるんじゃないかと(笑)。さらにはお客さんが歌う余白も残しているんでね、ツアーではお客さんにも存分に歌ってもらいたいですね。

――インタビュー2へ

ウルフルズ 愉快痛快みんなが大好き“ウルフルズ100%”なアルバム『ボンツビワイワイ』/インタビュー

≪リリース情報≫
New Album
『ボンツビワイワイ』
2015.09.09リリース
WPCL-12233 / ¥2,700(税抜)
[収録曲]
1. ボンツビワイワイ
2. ロッキン50肩ブギウギックリ腰
3. チャリダー
4. クラッター
5. チークタイム
6. スポーティパーティ
7. テクテク
8. ステキだね
9. 愛すれば
10. ウルフルシャッフル

≪ツアー情報≫
【ウルフルズツアー2015『ボンツビアツアツ』】
2015年9月12日(土)群馬・高崎 club FLEEZ
2015年9月15日(火)秋田 クラブ スウィンドル
2015年9月18日(金)鹿児島キャパルボホール
2015年9月20日(日)熊本DRUM Be-9
2015年9月24日(木)東京・恵比寿LIQUID ROOM
2015年9月25日(金)東京・恵比寿LIQUID ROOM
2015年9月27日(日)愛媛・松山W studio RED
2015年10月2日(金)北海道・小樽GOLD STONE
2015年10月4日(日)北海道・帯広メガストーン
2015年10月10日(土)沖縄音市場
2015年10月15日(木)静岡・浜松窓枠
2015年10月17日(土)広島CLUB QUATTRO
2015年10月20日(火)富山MAIRO
2015年10月22日(木)大阪・なんばHatch
2015年10月25日(日)京都磔磔

【ウルフルズツアー2015『ボンツビカイカン』】
2015年11月11日(水)東京・ルネこだいら
2015年11月13日(金)岡山市民会館
2015年11月15日(日)山口市民会館
2015年11月21日(土)滋賀・ひこね市文化プラザ
2015年11月23日(月・祝)奈良・なら100年会館
2015年11月26日(木)大阪フェスティバルホール
2015年11月29日(日)神奈川・厚木市文化会館
2015年12月1日(火)新潟・南魚沼市民会館
2015年12月4日(金)宮崎・メディキット県民文化センター
2015年12月6日(日)福岡・サンパレス ホテル&ホール
2015年12月9日(水)三重・尾鷲市民文化会館せぎやまホール
2015年12月11日(金)愛知・日本特殊陶業市民会館フォレストホール
2015年12月13日(日)福井フェニックス・プラザ
2015年12月18日(金)香川・アルファあなぶきホール・大ホール
2015年12月20日(日)高知県立県民文化ホール・オレンジホール
2015年12月23日(水・祝)岩手・盛岡市民文化ホール
2015年12月25日(金)青森・リンクモア平安閣市民ホール(青森市民ホール)
2015年12月27日(日)北海道・わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)

【ウルフルズツアー2015『ボンツビデカデカ』】
2016年1月23日(土)神戸ワールド記念ホール
2016年1月27日(水)日本武道館

≪関連リンク≫
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