日本最大規模のヒップホップフェス「POP YOURS 2024」では、22歳にしてヘッドライナーを務め、人気オーディション番組『ラップスタア誕生』では審査員を担当するなど、日本のヒップホップ界で圧倒的な存在感を放ってきたラッパーのLEX。今週末17日のサマーソニック東京「Spotify RADAR: Early Noise Stage」では、kZm、JJJと並んで「+81 Connect Live: after hours」で出演を飾る
【写真をすべて見る】LEXがヘッドライナーを飾った「POP YOURS 2024」
勢いの衰えない彼が、2021年にリリースしたアルバム『Logic』の第2弾となる『Logic 2』を先日リリースした。
そのカリスマ性で多くのリスナーを驚かせ続け魅了している彼の”強さ”だけでなく、リアルな”苦しみ”も垣間見える本作。作品の制作背景や2024年現在の彼の生活について、ざっくばらんに話を聞いた。
ー去年もインタビューをさせていただきましたが、2023年は逗子の方で暮らしていて。今年もお忙しかったと思いますが、どんな生活を送っていますか?
今年は生活の拠点を移して、基本的には東京にいながら、(逗子と東京を)行ったり来たりしてます。去年は海外に多く行ってたんですけど、今は日本でまだまだ達成しなきゃいけないことがいっぱいあるなと思って、いろんな人にもっと聴いてもらいたくて。それを新しい目標にしています。
ーなるほど。一旦国内のリスナーに目を向けたんですね。あとはPOP YOURSのヘッドライナーを務めたことも記憶に新しいです。実際に私も現地で拝見していたのですが、ステージングが凄かったです。蝶になって宙に浮いて……。
凄かったですよね。ステージ作りも事前にこういうことがしたいっていうのは伝えていて、リハーサルも入念に4回ほどしました。今回ワイヤーを使わせてもらったんですけど、最初のリハーサルの時に「(上に)上がるよ」とだけ言われてたんですけど、本番前日に「ちなみに回転もできるようにしといたから」って言われて、「マジすか、聞いてないっすよ」って(笑)。実際に回ったんですけど、「なかなか初めてで回れる人は少ないよ」って言われました。リハーサルで後ろの映像に写った蝶の羽と僕の体の位置が合うように何度も調整して。やっぱり足を運んでくれたお客さんに最高のものを見せたいっていうのがあったので。
ー実際にライブをしてみてどうでしたか?
本当に一瞬でした。
ーゲストに5lackさんも登場しました。一緒に曲を作ったのはLEXさんにとってどんな経験でした?
”マスター”ですね。MV撮影の時にもお会いして。キャリア的に僕は5年くらいやってきてるんですけど、それを踏まえて「この先、こういう見られ方をすると思うよ」という話とか、いろいろアドバイスをいただいて。貴重な機会でした。
ー大先輩とキャリアについて話ができるのは貴重な機会ですね。あとは妹のLANAさんとの「明るい部屋」も披露されていました。最近は「ティファニーで朝食を」もリリースされていましたが、「明るい部屋」が2人でリリースした初めての曲ですよね。
そうですね。(LANAは)実の妹で、曲は前からずっと一緒に作ってて、やっとリリースしたという感じです。「明るい部屋」はいろんな人の協力があって一から作らせてもらったんですけど、「ティファニーで朝食を」も2年前くらいにはもう完成していて。テーマも2人で話して、自分たちの生い立ちを歌って共感してくれる人がいたらいいなって。「明るい部屋」はポップなサウンドの中で結構シリアスな内容を歌っていると思うんですけど、「ティファニーで朝食を」は自分たちのやりたいことを打ち出しました。
ーPOP YOURSでは2人でステージに立ってみていかがでしたか?
なんか不思議な感覚だったっすね。観客のみなさんに大歓声で迎えていただいたんですけど、家に帰ったら普通に(LANAが)いるんですよ。本当にリスペクトしていますし、僕よりもしっかりしてるんで、いつも頼り甲斐のある妹だなと思ってます。
ー近い存在なのに不思議ですよね。
守護天使です。いつも守ってくれる。相談とかにも乗ってくれますし助けられてますね。妹がいなかったら多分、やめてなかったかもしれませんけど、どうなってたかわからないので。そういう面では本当に助けられてますね。
ー支え合っている関係性が素敵ですね。
俺が一方的に支えてもらってますね。逆らえないです(笑)。
「何に対しても心が動かなかった」
ーここからアルバム『Logic 2』についてもお話をお聞きしたいのですが、刺激的なトラップビートやポップス、四つ打ちのサウンドなど、ジャンルに縛られない自由なアルバムだと思いました。この楽曲たちを1枚のアルバムにまとめるのは大変じゃなかったですか?
自分としては全然大変じゃなかったです。前作(『King Of Everything』)に引き続き、『Logic 2』という作品はいろんなジャンルを取り入れた構成にしているので。『King Of Everything』をリリースした後くらいからすでに構想は練っていました。
ー今作の制作期間中は、LEXさんにとってどんな時期だったんでしょうか?
結構悩んだ時期でしたね。音楽のことを含め、この先どうやっていこうかなって考えることが多くて。あんまり友達とかにも会わなくなって、ずっと家に1人でいて、すごいキツかったけど今となっては意味のある時間だったなって思います。ただもう一回あの気持ちになりたいかって言われたら絶対なりたくない。そのとき、お前なにしてんだよって言ってくれたのが妹だったんです。普段から2人で話すことも多くて、時には3時間くらい話を聞いてもらったりして。立ち直るのにも時間がかかったんですけど、家族やチームとか、本当にいろんな人のサポートがあって助かりました。
ーどんなことが大変に感じました?
何だろう、全体的にでした。何があっても悪く捉えてしまったりとか。そういう時って人間、普通じゃなくなるんですよね。駅のホームで電車待ってるとき、ふと変なことを考えてしまったりするんですよ。今はもう、なんでそんなこと考えてたんだろう?って感じなんですけど。
ー「もうすぐ電車がくる」はその頃に書かれたものですか?
そうでした。
ー”何にもトキめかないんだしこれ以上”というリリックがありますよね。これはどういう状態だったんでしょうか。
別に家の外に出て遊びてぇとかもないし、曲を作ってうれしいとかもなかったし、何に対しても心が動かなくて。
ーそういう時期でも曲を作り続けることはできるんですか?
できなかったですね。気持ちをリリックに残しておくことしかできなかったです。
ーなるほど、そうですよね。前回インタビューした際にはLEXさんは基本的に過去のことは振り返らないと話していたと思うんですけど、今回のアルバムでは過去を振り返るリリックが多く見られました。
そうですね。その時期は結構いろいろ思い返すことが多かったですね。
ー「Control」では”俺は2013年で止まってるよ”というリリックもあります。これはどういう感覚ですか?
2013年、11~12歳くらいの頃から時が止まっているような感覚がしてたので、それを歌詞にしたんです。
ー「パンケーキ」でも”全て変わった あの夜に俺は帰りたかった”ってリリックがありますね。
あれはリスナーに委ねるような書き方をしていて。でもみなさんもあると思うんですよ。自分が大切にしている思い出の夜に帰りたかったってリリックです。
ーちなみに「パンケーキ」という曲名の由来はあるんですか?
それは本当にパッと思いついて。タイトル決まってねえな、じゃあパンケーキでいいやって。
ー(笑)覚えやすいし、いいですね。
覚えやすいですよね。曲はかっこいいから可愛いのがいいなと思った時に、カタカナで”パンケーキ”めっちゃいいなと思って。アルファベットじゃないのが重要なんですよ。
ー確かに(笑)。あとは「今日くらいはいい子でいようよ」の”かぶれじゃない馬鹿 俺らはカタカナ”って部分が気になって。
これはよく「USラッパーかぶれ」とかいろんなところで目にしますけど、それに対して、「かぶれじゃないんだよ馬鹿、俺らはカタカナなんだよ。別にひらがなでもやるけど、カタカナでもやるよ」っていう感じです。アルファベットを使って英語を母国語としてやっているわけではなくて、カタカナを使って日本のものとしてやってますって意味です。
ーそれは言い方としてすごくしっくりきますね。
日本に生まれて日本の音楽をやってるんですけど、そうなってくると日本語でラップをすることって大事だと僕は思いますね。伝わりやすさもありますし、日本語でしかできない言葉の使い方もありますし。
ー海外の人にも自分の音楽を聴いてほしいと思いますか?
今は思わないです。海外の曲も聴いて、その上で、日本で生活してるような人たちにも響けばというふうに思ってます。
ー今は気持ちが国内に向いているんですね。そういえば日本の曲は普段から聴くんですか?
日本の曲は聴くようになりましたね。友達とカラオケにも行くようになりました。スピッツとかウルフルズとか聴きますね。歌詞の書き方とかやっぱすごく勉強になるっす。
Photo by Yuji Kaneko
「できるだけ多くの愛を感じたいです」
ーそこから自分の楽曲に昇華することもあるんですね。あとは今作に呼んでいる客演についてもお話を聞きたいのですが、1曲目の「力をくれ」には¥ellow Bucksさんが参加していますね。こういうビートで¥ellow Bucksさんがラップしているのは個人的に新鮮に感じました。
ずっとBucksくんとやりたいなって思ってて。何曲か送らせてもらいました。今回の曲は、自分のヴァースとサビは結構前に完成していて。
ー¥ellow Bucksさんは以前から交友があったんですか?
前から現場が被ったりしてて顔見知りではありました。『ラップスタア誕生』で共演してから結構仲良くなったと思います。僕は人見知りなんでそんなに休憩中とかも積極的には話さなかったと思いますけど、収録の回数を重ねるごとに話すようになっていきました。
ーラップスタアでの審査はどうでしたか?
自分もプレーヤーなんで難しかったです。自分も頑張ってるんで。頑張ってる僕が頑張ってる人に対して言えることってなんだろう、みたいな。でもあの審査員の顔ぶれの中で僕が呼ばれたということは、僕は僕なりのジャッジをしていいのかなって思ってました。
ー先日は「力をくれ」のMVも撮影されていて、2人で車の上に乗ってヘッズの人たちも集合していましたね。
250人くらい来てくれました。髪型がまんま自分と同じやつがいたり、全身僕のブランドの洋服を着ているやつがいたりして。うれしいけど、俺でいいの?みたいな気持ちにもなりましたね。
Photo by Daiki Miura
Photo by Daiki Miura
ーそれはすごい。この曲のフックも頭から離れないですね。
これは降ってきたっす。力が欲しいと思ってたわけではなかったですけど。音も迫力があって、今回は特にDolby Atmosのサウンドでやらせてもらってるので、ぜひヘッドホンとかで聴いてみてほしいです。
ーあとは客演で言うと「Im Trying To Know」でGrace Aimiさんが参加されてますね。一緒に曲を作るのは初めてですよね。
昔から交流はあったんですけど初めてですね。この曲も結構前に沖縄で作った曲で。しかもスタジオとか入ってなくて、自分が持ってたPCとマイクで普通にみんなで遊びながら作った曲です。
ーいいヴァイブスですね。2人の出会いのきっかけはなんだったんですか?
多分Graceが僕の1枚目のアルバムをディグって知っててくれて。インスタのストーリーズでメンションが来たので見てみたら、めちゃくちゃ車で暴れてるやついるなと思って(笑)。そしたらOZworldくんの友達で、会ったらめちゃめちゃいいやつで。今でも会ったら遊びます。
ーこの曲はどういうテーマで作り始めたんですか?
テーマはあまりなくて、その時の流れとか空気感。あとは曲をつくる前に「最近どんな曲聴いてんの?」って音楽を共有し合って、共通するサウンドを探していきました。サビはGraceなんですけど、僕がメロディラインを作って、歌ってもらった感じです。鼻歌をマイクで録って、それに歌詞を当ててもらいました。
ー最後にアートワークのことについても聴きたくて。Zepp Hanedaのライブでアナキン(アナキン・スカイウォーカー:スター・ウォーズのキャラクター)が闇落ちするシーンをご自身で演じてましたよね。今回のアートワークはまさにその時のアナキン風LEXだと思うんですが、ライブでのそういった演出を通して、このアルバムの制作を通して、また新しいLEXに生まれ変わるんだ……という意味があるように思いました。やっぱりスター・ウォーズの影響は大きいですか?
影響はでかいっすね(と言ってアナキンのタトゥーを見せてくれる)。本当におっしゃる通りで、『Logic』と『Logic 2』でやっぱりちょっと自分の中で変化をつけたくて。それを現実的に考えた時に、いい変化も悪い変化もどっちもあるなと思ったんです。で、アルバムのアートワークを描いてくれているK2に、それこそZepp Hanedaくらいの時に、こういうアートワークがいいっていうお願いをしました。今のところ、ダース・ベイダーにはならなさそうでよかったです(笑)。
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ー(笑)今回のアルバムをリリースした後、9月にはツアーが始まりますね。収録されている曲もライブで聴くとまた違った魅力が発見できそうで今から楽しみです。どんなライブにしたいですか?
できるだけ多くの愛を感じたいです。元気とか感動とかいろいろありますけど、来てくれるみんなには、それぞれ何か持ち帰って欲しいですね。僕は全力でやらしてもらうんで。
『Logic 2』
LEX
Mary Joy Recordings
配信中
https://lexzx.lnk.to/Logic2
1. 力をくれ (feat. ¥ellow Bucks)
2. 物足りねぇ
3. XOXO
4. テンションを上げてよ
5. 222
6. オキニ
7. 今日くらいはいい子でいようよ
8. パンケーキ
9. 有名人ぶり
10. Control
11. I'm trying to know (feat. Grace Aimi)
12. もう一度キスをして (LEX & JP THE WAVY)
13. もうすぐ電車がくる
14. カムバック
15. 明るい部屋 (LEX & LANA)
LEX「Logic 2 Tour 2024」
9/13(金) 大阪 BIGCAT
9/20(金) 東京 EX THEATER ROPPONGI
OPEN 18:30 / START 19:30
【写真をすべて見る】LEXがヘッドライナーを飾った「POP YOURS 2024」
勢いの衰えない彼が、2021年にリリースしたアルバム『Logic』の第2弾となる『Logic 2』を先日リリースした。
LEXらしい刺激的なトラップや、ダンスミュージック、ジャージークラブなど、カラフルで幅広いジャンルの楽曲が詰まった本作は、アルバムを通して聴いていると、あっという間に全15曲が終わってしまうほど飽きが来ない。
そのカリスマ性で多くのリスナーを驚かせ続け魅了している彼の”強さ”だけでなく、リアルな”苦しみ”も垣間見える本作。作品の制作背景や2024年現在の彼の生活について、ざっくばらんに話を聞いた。
ー去年もインタビューをさせていただきましたが、2023年は逗子の方で暮らしていて。今年もお忙しかったと思いますが、どんな生活を送っていますか?
今年は生活の拠点を移して、基本的には東京にいながら、(逗子と東京を)行ったり来たりしてます。去年は海外に多く行ってたんですけど、今は日本でまだまだ達成しなきゃいけないことがいっぱいあるなと思って、いろんな人にもっと聴いてもらいたくて。それを新しい目標にしています。
ーなるほど。一旦国内のリスナーに目を向けたんですね。あとはPOP YOURSのヘッドライナーを務めたことも記憶に新しいです。実際に私も現地で拝見していたのですが、ステージングが凄かったです。蝶になって宙に浮いて……。
凄かったですよね。ステージ作りも事前にこういうことがしたいっていうのは伝えていて、リハーサルも入念に4回ほどしました。今回ワイヤーを使わせてもらったんですけど、最初のリハーサルの時に「(上に)上がるよ」とだけ言われてたんですけど、本番前日に「ちなみに回転もできるようにしといたから」って言われて、「マジすか、聞いてないっすよ」って(笑)。実際に回ったんですけど、「なかなか初めてで回れる人は少ないよ」って言われました。リハーサルで後ろの映像に写った蝶の羽と僕の体の位置が合うように何度も調整して。やっぱり足を運んでくれたお客さんに最高のものを見せたいっていうのがあったので。
ー実際にライブをしてみてどうでしたか?
本当に一瞬でした。
ーゲストに5lackさんも登場しました。一緒に曲を作ったのはLEXさんにとってどんな経験でした?
”マスター”ですね。MV撮影の時にもお会いして。キャリア的に僕は5年くらいやってきてるんですけど、それを踏まえて「この先、こういう見られ方をすると思うよ」という話とか、いろいろアドバイスをいただいて。貴重な機会でした。
ー大先輩とキャリアについて話ができるのは貴重な機会ですね。あとは妹のLANAさんとの「明るい部屋」も披露されていました。最近は「ティファニーで朝食を」もリリースされていましたが、「明るい部屋」が2人でリリースした初めての曲ですよね。
そうですね。(LANAは)実の妹で、曲は前からずっと一緒に作ってて、やっとリリースしたという感じです。「明るい部屋」はいろんな人の協力があって一から作らせてもらったんですけど、「ティファニーで朝食を」も2年前くらいにはもう完成していて。テーマも2人で話して、自分たちの生い立ちを歌って共感してくれる人がいたらいいなって。「明るい部屋」はポップなサウンドの中で結構シリアスな内容を歌っていると思うんですけど、「ティファニーで朝食を」は自分たちのやりたいことを打ち出しました。
ーPOP YOURSでは2人でステージに立ってみていかがでしたか?
なんか不思議な感覚だったっすね。観客のみなさんに大歓声で迎えていただいたんですけど、家に帰ったら普通に(LANAが)いるんですよ。本当にリスペクトしていますし、僕よりもしっかりしてるんで、いつも頼り甲斐のある妹だなと思ってます。
ー近い存在なのに不思議ですよね。
LEXさんにとってLANAさんはどんな存在ですか?
守護天使です。いつも守ってくれる。相談とかにも乗ってくれますし助けられてますね。妹がいなかったら多分、やめてなかったかもしれませんけど、どうなってたかわからないので。そういう面では本当に助けられてますね。
ー支え合っている関係性が素敵ですね。
俺が一方的に支えてもらってますね。逆らえないです(笑)。
「何に対しても心が動かなかった」
ーここからアルバム『Logic 2』についてもお話をお聞きしたいのですが、刺激的なトラップビートやポップス、四つ打ちのサウンドなど、ジャンルに縛られない自由なアルバムだと思いました。この楽曲たちを1枚のアルバムにまとめるのは大変じゃなかったですか?
自分としては全然大変じゃなかったです。前作(『King Of Everything』)に引き続き、『Logic 2』という作品はいろんなジャンルを取り入れた構成にしているので。『King Of Everything』をリリースした後くらいからすでに構想は練っていました。
ー今作の制作期間中は、LEXさんにとってどんな時期だったんでしょうか?
結構悩んだ時期でしたね。音楽のことを含め、この先どうやっていこうかなって考えることが多くて。あんまり友達とかにも会わなくなって、ずっと家に1人でいて、すごいキツかったけど今となっては意味のある時間だったなって思います。ただもう一回あの気持ちになりたいかって言われたら絶対なりたくない。そのとき、お前なにしてんだよって言ってくれたのが妹だったんです。普段から2人で話すことも多くて、時には3時間くらい話を聞いてもらったりして。立ち直るのにも時間がかかったんですけど、家族やチームとか、本当にいろんな人のサポートがあって助かりました。
ーどんなことが大変に感じました?
何だろう、全体的にでした。何があっても悪く捉えてしまったりとか。そういう時って人間、普通じゃなくなるんですよね。駅のホームで電車待ってるとき、ふと変なことを考えてしまったりするんですよ。今はもう、なんでそんなこと考えてたんだろう?って感じなんですけど。
ー「もうすぐ電車がくる」はその頃に書かれたものですか?
そうでした。
ー”何にもトキめかないんだしこれ以上”というリリックがありますよね。これはどういう状態だったんでしょうか。
別に家の外に出て遊びてぇとかもないし、曲を作ってうれしいとかもなかったし、何に対しても心が動かなくて。
ーそういう時期でも曲を作り続けることはできるんですか?
できなかったですね。気持ちをリリックに残しておくことしかできなかったです。
ーなるほど、そうですよね。前回インタビューした際にはLEXさんは基本的に過去のことは振り返らないと話していたと思うんですけど、今回のアルバムでは過去を振り返るリリックが多く見られました。
そうですね。その時期は結構いろいろ思い返すことが多かったですね。
ー「Control」では”俺は2013年で止まってるよ”というリリックもあります。これはどういう感覚ですか?
2013年、11~12歳くらいの頃から時が止まっているような感覚がしてたので、それを歌詞にしたんです。
そっから成長してんのかな俺、みたいな。何かをずっと引きずって生きてきたんじゃないか、みたいな感じだったっすね。どう言えばいいのか分からないけど、聴いてもらったら共感してもらえると思います。
ー「パンケーキ」でも”全て変わった あの夜に俺は帰りたかった”ってリリックがありますね。
あれはリスナーに委ねるような書き方をしていて。でもみなさんもあると思うんですよ。自分が大切にしている思い出の夜に帰りたかったってリリックです。
ーちなみに「パンケーキ」という曲名の由来はあるんですか?
それは本当にパッと思いついて。タイトル決まってねえな、じゃあパンケーキでいいやって。
ー(笑)覚えやすいし、いいですね。
覚えやすいですよね。曲はかっこいいから可愛いのがいいなと思った時に、カタカナで”パンケーキ”めっちゃいいなと思って。アルファベットじゃないのが重要なんですよ。
ー確かに(笑)。あとは「今日くらいはいい子でいようよ」の”かぶれじゃない馬鹿 俺らはカタカナ”って部分が気になって。
これはよく「USラッパーかぶれ」とかいろんなところで目にしますけど、それに対して、「かぶれじゃないんだよ馬鹿、俺らはカタカナなんだよ。別にひらがなでもやるけど、カタカナでもやるよ」っていう感じです。アルファベットを使って英語を母国語としてやっているわけではなくて、カタカナを使って日本のものとしてやってますって意味です。
ーそれは言い方としてすごくしっくりきますね。
日本に生まれて日本の音楽をやってるんですけど、そうなってくると日本語でラップをすることって大事だと僕は思いますね。伝わりやすさもありますし、日本語でしかできない言葉の使い方もありますし。
ー海外の人にも自分の音楽を聴いてほしいと思いますか?
今は思わないです。海外の曲も聴いて、その上で、日本で生活してるような人たちにも響けばというふうに思ってます。
ー今は気持ちが国内に向いているんですね。そういえば日本の曲は普段から聴くんですか?
日本の曲は聴くようになりましたね。友達とカラオケにも行くようになりました。スピッツとかウルフルズとか聴きますね。歌詞の書き方とかやっぱすごく勉強になるっす。
Photo by Yuji Kaneko
「できるだけ多くの愛を感じたいです」
ーそこから自分の楽曲に昇華することもあるんですね。あとは今作に呼んでいる客演についてもお話を聞きたいのですが、1曲目の「力をくれ」には¥ellow Bucksさんが参加していますね。こういうビートで¥ellow Bucksさんがラップしているのは個人的に新鮮に感じました。
ずっとBucksくんとやりたいなって思ってて。何曲か送らせてもらいました。今回の曲は、自分のヴァースとサビは結構前に完成していて。
ー¥ellow Bucksさんは以前から交友があったんですか?
前から現場が被ったりしてて顔見知りではありました。『ラップスタア誕生』で共演してから結構仲良くなったと思います。僕は人見知りなんでそんなに休憩中とかも積極的には話さなかったと思いますけど、収録の回数を重ねるごとに話すようになっていきました。
ーラップスタアでの審査はどうでしたか?
自分もプレーヤーなんで難しかったです。自分も頑張ってるんで。頑張ってる僕が頑張ってる人に対して言えることってなんだろう、みたいな。でもあの審査員の顔ぶれの中で僕が呼ばれたということは、僕は僕なりのジャッジをしていいのかなって思ってました。
ー先日は「力をくれ」のMVも撮影されていて、2人で車の上に乗ってヘッズの人たちも集合していましたね。
250人くらい来てくれました。髪型がまんま自分と同じやつがいたり、全身僕のブランドの洋服を着ているやつがいたりして。うれしいけど、俺でいいの?みたいな気持ちにもなりましたね。
Photo by Daiki Miura
Photo by Daiki Miura
ーそれはすごい。この曲のフックも頭から離れないですね。
これは降ってきたっす。力が欲しいと思ってたわけではなかったですけど。音も迫力があって、今回は特にDolby Atmosのサウンドでやらせてもらってるので、ぜひヘッドホンとかで聴いてみてほしいです。
ーあとは客演で言うと「Im Trying To Know」でGrace Aimiさんが参加されてますね。一緒に曲を作るのは初めてですよね。
昔から交流はあったんですけど初めてですね。この曲も結構前に沖縄で作った曲で。しかもスタジオとか入ってなくて、自分が持ってたPCとマイクで普通にみんなで遊びながら作った曲です。
ーいいヴァイブスですね。2人の出会いのきっかけはなんだったんですか?
多分Graceが僕の1枚目のアルバムをディグって知っててくれて。インスタのストーリーズでメンションが来たので見てみたら、めちゃくちゃ車で暴れてるやついるなと思って(笑)。そしたらOZworldくんの友達で、会ったらめちゃめちゃいいやつで。今でも会ったら遊びます。
ーこの曲はどういうテーマで作り始めたんですか?
テーマはあまりなくて、その時の流れとか空気感。あとは曲をつくる前に「最近どんな曲聴いてんの?」って音楽を共有し合って、共通するサウンドを探していきました。サビはGraceなんですけど、僕がメロディラインを作って、歌ってもらった感じです。鼻歌をマイクで録って、それに歌詞を当ててもらいました。
ー最後にアートワークのことについても聴きたくて。Zepp Hanedaのライブでアナキン(アナキン・スカイウォーカー:スター・ウォーズのキャラクター)が闇落ちするシーンをご自身で演じてましたよね。今回のアートワークはまさにその時のアナキン風LEXだと思うんですが、ライブでのそういった演出を通して、このアルバムの制作を通して、また新しいLEXに生まれ変わるんだ……という意味があるように思いました。やっぱりスター・ウォーズの影響は大きいですか?
影響はでかいっすね(と言ってアナキンのタトゥーを見せてくれる)。本当におっしゃる通りで、『Logic』と『Logic 2』でやっぱりちょっと自分の中で変化をつけたくて。それを現実的に考えた時に、いい変化も悪い変化もどっちもあるなと思ったんです。で、アルバムのアートワークを描いてくれているK2に、それこそZepp Hanedaくらいの時に、こういうアートワークがいいっていうお願いをしました。今のところ、ダース・ベイダーにはならなさそうでよかったです(笑)。
この投稿をInstagramで見るLEX(@lex_zx_lex_0)がシェアした投稿
ー(笑)今回のアルバムをリリースした後、9月にはツアーが始まりますね。収録されている曲もライブで聴くとまた違った魅力が発見できそうで今から楽しみです。どんなライブにしたいですか?
できるだけ多くの愛を感じたいです。元気とか感動とかいろいろありますけど、来てくれるみんなには、それぞれ何か持ち帰って欲しいですね。僕は全力でやらしてもらうんで。
『Logic 2』
LEX
Mary Joy Recordings
配信中
https://lexzx.lnk.to/Logic2
1. 力をくれ (feat. ¥ellow Bucks)
2. 物足りねぇ
3. XOXO
4. テンションを上げてよ
5. 222
6. オキニ
7. 今日くらいはいい子でいようよ
8. パンケーキ
9. 有名人ぶり
10. Control
11. I'm trying to know (feat. Grace Aimi)
12. もう一度キスをして (LEX & JP THE WAVY)
13. もうすぐ電車がくる
14. カムバック
15. 明るい部屋 (LEX & LANA)
LEX「Logic 2 Tour 2024」
9/13(金) 大阪 BIGCAT
9/20(金) 東京 EX THEATER ROPPONGI
OPEN 18:30 / START 19:30
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