先の総選挙は自民圧勝に終わり、壊滅的敗北を喫した新党・中道改革連合を筆頭に、野党に大量の落選議員が生まれた。落ちれば「ただの人」どころか、無職となり生活に窮することも多い「元国会議員」の懐事情に迫る!
【無所属・前衆院議員 福島伸享氏 55歳】

「無職だからダメ」と息子の賃貸保証人を断られた。“落選のベテ...の画像はこちら >>

当選でも、落選でも、無所属は常に財政難!

 政党所属議員でも落選はこたえるが、無所属の場合はどうか。福島伸享(のぶゆき)氏は、保守王国・茨城1区で自民候補を相手に、’21年、’24年の衆院選で当選を勝ち取った気骨の人だ。
だが、2月の総選挙では、高市旋風に後押しされた自民候補に惜敗する。

「現在の小選挙区比例代表並立制の下では、今回のように党首の人気やイメージなどの“風頼り”になりやすく、選挙結果を左右してしまう。中小政党が選挙区で当選するのは極めて困難で、無所属はさらに厳しい。それに無所属は比例復活もない。それでも無所属でいるのは、長きにわたる自民党政権の下でこの国は停滞し、野党も本気で政権を取る気がないから。この国を改革するには、政界再編が必要です。その触媒となるための無所属なのです」

「無職だからダメ」と息子の賃貸保証人を断られた。“落選のベテラン” 福島伸享が明かす「議員は落ちれば“ただの人”以下」のリアル
雪が降る水戸駅前で街宣に奮闘する福島候補。無所属ながら最強といわれる選挙スタッフが脇を固めていた
 落選は議員本人のみならず、家族にも影響が及ぶ。

「大学生の息子は議員宿舎から通学してたが、落選して宿舎に住めなくなったので、一人暮らしを始めます。保証人に私の名前を書いたら、無職だからダメだと断られました。大変なのは、税金と社会保険料。前年の所得ベースで請求されるため、国民健康保険税だけで100万円ぐらい。『議員は落ちればただの人』と言いますが、ただの人以下。
でも、選挙に負けたのは5度目で、いわば“落選のベテラン”(笑)。家族も慣れたもので、淡々としてますよ」

事務所の維持費だけで、年間1200万円超!?

 議席を失えば、国費で支給されていた政治資金を自分で負担することになる。さらに、地方ならではの問題がのしかかる。

「茨城1区は広いうえに、県庁所在地の水戸と広大な農村部の県西という文化が異なるエリアをくっつけた選挙区なので、事務所を2か所置かざるを得ない。箱だけでは意味がないから人を雇い、電気代や電話料金、OA機器のリースなどで月100万円はかかる。広い選挙区なので、高速代もバカにならない。1日に3往復することもあり、これだけで8000円。だから、帰路は下道を使います。時間だけはあるので(笑)。落選中は基本、スーツは買わないし、会合や飲み会も減らす。趣味が家庭菜園なので、何かの足しにはなるでしょう。野菜なら売るほどあります(笑)」

 節約にも限度があるだろう。
生活費や政治活動資金をどう賄うのか。

「無所属は政党交付金がないので、その分は歳費から出さねばならない。だから、議員時代も手取りは公務員よりちょっと少ないくらい。もともと慎ましい生活だったので、落選しても暮らしは大して変わりません。ただ、民間企業に入ろうにも前職が議員では障害にしかならないし、選挙に出る人を採ってくれる企業はまずない。雇ってもらうには、政治家をやめるしかない。多くの落選議員がジレンマに陥るでしょう。その点、弁護士などの士業は融通が利く。私の場合は、得意分野のエネルギーや農業系のコンサルで細々と稼ぐしかない」

 経済的に苦しいなか、地元の他に、東京にも拠点を築いたというから驚く。

「後輩の会社に居候しているだけ。私の人徳なんかじゃなく、憐みでしょうね。でも、落選生活のノウハウもあって(笑)、私には地元や東京に支えてくれる人がいる。
落選議員は、まず政党に頼らなければ何もできないというのでは、政治家になれません。有権者に『お金を払ってでも支えよう』と思ってもらえて、初めて候補者足り得るんです」

 党より人物――。無所属政治家の矜持を見た。

【無所属・前衆院議員 福島伸享氏 55歳】
茨城1区 当選 4回 落選 5回
通産官僚として橋本行革に参加後、’09年の衆院選で民主党公認で初当選。政界再編を目指し、希望の党結党に参画。その後、無所属の衆院会派・有志の会を結成した

取材・文/齊藤武宏 取材・撮影/山本和幸

―[有名元議員たちの落選後]―
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