撮影／川田洋司
■木村カエラ FREE LIVE＜GO！SHOW TIME＞
2015.09.09(WED) at 渋谷公会堂
（※画像8点）
溢れるばかりの愛情が、木村カエラというアーティストの本質なのだと思う。
だからこそ、彼女に多くの人は惹き付けられて止まない。
デビュー10周年を記念したアニバーサリー・イヤーが、この6月の全国ツアーの完走とともに大団円を迎えた木村カエラ。その後も一息つくことなく、9月2日には約1年ぶりとなるシングル『EGG』をリリース。その発売を記念してフリーライブを行ったのだが、彼女にとって最初で最後となる現在の渋谷公会堂（間もなく改築となるため）でどんな姿を魅せたかをリポートする。
平日、しかも台風が近づくというあいにくのコンディションだったが、会場にはラッキーな当選者で満員。開演前から熱気に包まれていた。場内が暗転し、ドラムのカウントが鳴り響いた後に、真っ赤なフレアミニ・ワンピを纏ったカエラが「TODAY IS A NEW DAY」の冒頭をアカペラで歌い出し、スペシャルなショウは始まりを告げた。
撮影／川田洋司
観客が拳を突き上げ、「ハイ！ハイ！」の雄叫びで答えたロックチューン「STARs」。ワンピに合わせたかのようなまっ赤なエレキギターをかき鳴らして熱唱した「BEAT」と、のっけからフルスロットルの勢いだ。
「こんばんは。木村カエラです！ アメニモマケズ、カゼニモマケズ、台風にも負けずに来てくれてありがとう」と心からの謝意を伝えると、いつものいたずらっぽいトークに突入。
「でも、みんな今日は“タダ”で来てくれたんだよね（笑）。しかも、お一人様で来てくれてるんだよね」という問いかけには、あちこちから笑いが起きたり、妙にハイテンションな絶叫が飛んだりと、なんとも和やかで楽しいムードに。
「ねえねえ、そんなにハイテンションっておかしいでしょ（笑）。台風で変になっちゃったのかな（笑）。みんな（一人だって）大丈夫だよ、私がいるから！」と、熱いメッセージを投げかけるとさらなる盛り上がりを見せたのは言うまでもない。
「EGG」のカップリング曲で、軽やかで心躍るナンバー「SHOW TIME」では、ジャズのフィーリングを感じさせつつも跳ねるような陽気さを纏ったピアノが楽曲の雰囲気をさらにもり立てていた。
撮影／小境勝巳
撮影／小境勝巳
打込み感がおしゃれな「Ring a Ding Dong」、エッジーなギターのイントロがあまりにも有名なライブ人気曲「リルラ リルハ」を、この日のライブではキーボードによる特別アレンジにて演奏。間奏のファンキーなピアノソロに合わせ、カエラがスカートの裾を翻しながらバレリーナのように舞う姿はどこか幻想的にすら見えた。
実はこの日、長年カエラとツアーを共にしてきたバンドメンバーではなく、ヒイズミマサユ機（PE'Z）を中心としたスペシャル編成でライブを行っていた。というのも、フリーライブのもとである「EGG」のカップリング曲「SHOW TIME」と「オバケなんてないさ」の編曲をヒイズミの“お友達”だというH ZETT M（ほぼ本人だというのが巷の定説ですが／笑）が手がけた。その縁でこの日のライブをコンダクトすることになったのだという。
撮影／川田洋司
「ハロウィンも近いので」とカエラが紹介した、誰もが知る「オバケなんてないさ」もヒイズミの手にかかると、ポップでキュート、それでいてスタイリッシュなナンバーへと昇華。天井からはためくフラッグがブラックライトに照らされ、オバケのように見せる演出も含め、一瞬にしてファンタジックでポエトリーな世界観に誘われた。
このほか、名曲「Butterfly」をピアノ伴奏だけでしっとりと歌い上げるなど、この日ならではのサウンドを十分に味わうことができた。
スペイシーなデジタルサウンドとどこか優しげなノイズで始まった、この日のメインディッシュとも言える「EGG」。蒼ざめた哀しみがほのかに漂う冒頭から、次第に有機的なサウンドが厚みを増すことで力強くなっていくこのスローナンバー。ミラーボールから放たれる無数の光に包まれながら、カエラは一言一言に魂を込めて歌い切った。
撮影／川田洋司
「ヒナが生まれて来るためにはもの凄い力で殻を破らなきゃならない。そうやって頑張ってる人はきっとたくさんいると思うけど、“どんな時だって側にいるよ”ってシンプルなメッセージを込めて作りました」と語ったカエラ。彼女の温かな思いを受け止めて、静かに、そして確かに会場が一つとなった。この楽曲はストリングス四重奏も加わり、さらにスケール感がアップしていたのだが、この案は長年のカエラ自身の希望でもあったという。
「夢だったストリングスがやっと入りました！ 4人ともみんな可愛くて、私にはサンリオのキャラクターのキキとララみたいに見えちゃうのね（笑）。でも、この後に弾いてもらう曲のリハーサルではびっくりするぐらい激しくて。『女の人って恐いな』って思いました」と、ユーモラスなMCで再び会場は笑いに包まれ、温かな空気が流れた。
撮影／川田洋司
「ここからカッコいい曲やるよ！ 前の人の頭を叩いちゃうくらいの勢いで（笑）楽しんでください！」の言葉で、怒濤の終盤へ。ハードなバンドサウンドが身上の「You bet!!」は、ストリングスが絡み合うことでより壮大でドラマチックに変身。
パワフルなドラムが印象的な「Yellow」やダークでエモーショナルな「TREE CLIMBERS」も、流れるような弦楽器の音色とヘヴィなバンドサウンドが巧みなコラボレーションを見せていた。
「みんな、サイコーだね！ ラスト、行くよ〜」と叫び、エッジーでスピーディーな「KEKKO」で本編は熱狂のうちに終演した。
カエラを呼ぶアンコールの声は鳴り止まず、その声に背中を押されるようにして再び登壇したときは、本編とは対照的に白のロングドレス姿で現れ、目でもファンを楽しませてくれた。さらに、「皆さんにライブのお知らせです。クリスマスライブ、やるんだって！ 私も知らなかったんだけど（笑）、カエラサンタになるみたいです」と、12月25日、クリスマス当日に昭和女子大学 人見記念講堂でのライブをサプライズ発表すると、ファンは大喜びして歓声を上げた。
「アンコールにお応えして、歌います」と、カエラが選んだのはキャッチーなロック＆ポップソング「Magic Music」。曲に合わせて会場の全員がジャンプ！
撮影／川田洋司
撮影／小境勝巳
「今日は本当にありがとうございました。遠くから来てくれた人もいるよね、ありがとうね。今はお天気が悪いけど、“天気雨”という意味の歌を歌います。この曲も『EGG』と同じように、温かな愛が入っています。明日からが少しでもいい日になるよう、思いを込めて歌います」。
そう語りかけるように話した後、「Sun Shower」を歌唱。
アコースティックで大人っぽいアレンジに乗せて、柔らかでウォームな歌声を響かせたカエラ。この溢れるばかりの愛情が、木村カエラというアーティストの本質なのだと思う。だからこそ、彼女に多くの人は惹き付けられて止まない。愛溢れる日＝クリスマスに、どんなライブを魅せてくれるか今から楽しみになる、そんな初秋の嵐の夜だった。
（取材・文／橘川有子）
≪セットリスト≫
1. TODAY IS A NEW DAY
2. STARs
3. BEAT
4. SHOW TIME
5. Ring a Ding Dong
6. リルラ リルハ
7. オバケなんてないさ
8. Butterfly
9. EGG
10. You bet!!
11. Yellow
12. TREE CLIMBERS
13. KEKKO
＜アンコール＞
1. Magic Music
2. Sun shower
≪リリース情報≫
New Single
『EGG』
2015.09.02リリース
【初回限定盤】CD＋DVD
VIZL-855 / ￥1,800（税抜）
【通常盤】CD
VICL-37088 / ￥1,200（税抜）
［収録曲］
1. EGG
2. SHOW TIME
3. オバケなんてないさ
4. EGG （Instrumental）
＜DVD＞ ※初回限定盤のみ収録
木村カエラ ライブハウスTOUR2015 「MITAI KIKITAI UTAITAI」 at 下北沢SHELTER 2015.6.23 ライブ＆ドキュメント
1. sonic manic
2. c'mon
3. Satisfaction
4. Level 42
5. one more
6. TODAY IS A NEW DAY
≪ライブ情報≫
【木村カエラ クリスマススペシャルライブ at 昭和女子大学 人見記念講堂（※タイトル未定）】
公演日：2015年12月25日（金）
時間：開場18時 / 開演19時
会場：昭和女子大学 人見記念講堂
チケット：￥6,000（税抜）
チケット一般発売：11月21日（土）
問い合わせ：HOT STUFF PROMOTION（TEL.03-5720-9999）
≪関連リンク≫
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