コールセンターという仕事の多くは、非正規雇用で動いていて、離職率は9割にもなるという。

新しい人が入っても、1年後にやめている確率が90%だ。
ネチネチとクレーマーに説教されたり、ありえない暴言を怒鳴られたり、自由にトイレにも行けずに大量の着信件数をさばいていく現場も少なくない。

コールセンターは沖縄に多い


一方、コールセンターを誘致したがる自治体も多かった。都市から距離があり、産業や資源に乏しい土地で雇用を生み出すのに都合が良い。

また、大手企業の「お客様センター」などは、最低賃金の低い沖縄などに集中してることも多い。日本全国、どこからかけても沖縄に転送される。そのコールセンターには、行ったこともない「新宿駅から自社店舗への道」を完璧に説明できる者もいる。「関西弁で怒鳴られるのが怖い」という者もいる。

ぎりぎりまで経費削減、歪んだ効率重視、「お客様は神様」式の過剰サービス。現代を象徴する複数の問題がからみあうコールセンター業界に集中取材をおこなった『ルポ コールセンター』というルポタージュ本が最近出た。
神経すりへる離職率9割の現場「コールセンター」が沖縄に集中している
『ルポ コールセンター 過剰サービス労働の現場から』仲村和代著/朝日新聞出版

さまざまなコールセンターの現場で働く人や、その職場を管理する人、また、コールセンター業界の問題を改善しようと奮闘する人などに取材を重ねて完成した本だ。

「処理件数至上主義」


コールセンター業務は、「さばいた電話件数」で評価されてしまうことが多い。コールセンター業務だけを他社から外注されて行う会社では特にそうなってしまう。

「どれだけのブランドイメージ向上につながったか」という「質の評価」がされにくいため、「罵声に耐えるだけで、企業の業績や将来にとって大切ではない仕事」という誤解も多い。そういう「理解のなさ」によるストレスも現場には多いという。


だだっ広いフロアを大量のパーテーションで区切った職場は空気循環も悪く、インフルエンザ蔓延などの問題を抱えることも少なくない。

そこで働く人は、上司に通話状況を聞かれながら、コンピューター入力も同時に行う。全員から見える位置には殺到する通話待機人数や待機経過時間が忙しく表示され、待ち時間が長引いたりすれば赤く点滅したりして警告を繰り返す。

『ルポ コールセンター 過剰サービス労働の現場から』は、仲村和代著。朝日新聞出版より発売中。
(香山哲)

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