「新・牡丹と薔薇」(東海テレビ、フジテレビ 毎週 月〜金 ひる1時25分〜)12月16日(水)放送。第14話「姉の捨て身の交換条件」より
脚本:中島丈博 演出:藤木靖之
多摩留に身を捧げるぼたん「新・牡丹と薔薇」14話
『牡丹と薔薇』中島丈博/徳間文庫

頭はジキル、身体はハイド


「こんなことばかりしているとその思い出もめちゃめちゃに汚されるのよ。」
「あなたの心のなかに美しい思い出を抱きしめて生きていってくれればいいんじゃないの」(ぼたん/黛英里佳)

ストーカー、リベンジポルノと美輪子(逢沢りな)への執着がエスカレートしていく多摩留(戸塚純貴)に、家族ぐるみで対抗する小日向家。
主に、お父さん・崑一(岡田浩暉)とぼたん。
崑一の声の大きさがテレビドラマ規格を超えていたことにおののきましたが、やっぱりぼたんが突拍子ない。自分の純潔で豊満な身体を多摩留に捧げ、美輪子を守ろうとします。
相手は、若くて出したい盛りだろうから、大喜びで貪り食うんだろうな、け。と思ったら、やったにはやったけれど、その後、愛してるのは美輪子だけなのに、とすすり泣き、それから、汚らわしい不潔だ! と号泣し、青年の純情を見せます。
頭はナイーブな少年、下半身はケモノ。ジキルとハイドみたいな苦しみを味わう多摩留は同情に値します。
それに比べて、実に冷ややかなぼたん。
瀬尾綱輝(片岡信和)に対しては、もったいぶった挙げ句、そんなこと私我慢できないわ! ひどい!ひどい! と激しく拒絶していたというのに、この差は何?
ぼたんは、大事な美輪子のためならなんでもできるのだ、と思うのが妥当だけれど、何も知らない美輪子に、ふふん、という感じもあって。やっぱり美輪子ばかりにうっとりさせてはいられないわ、という嫉妬もあるのでしょうか。

これらすべてひっくるめて、愛と呼ぶのであります。
ぼたんの愛憎の切り返しの極端さは、多摩留と似た者同士と言えなくもない。

愛がひっくり返って憎しみとなって燃え盛る多摩留は、M計画を実行することに。
それにしても、社会的な問題だとか、人間の病理の追求だとか、流行を意識だとか、そんなことはまったくおかまいなしに、ただただ、個人の衝動の発露を描いているだけで14回。よく保つなあと感心するばかり。
黛英里佳も逢沢りなも、ビフォー、アフターでがらりと雰囲気を変えられるところがザッツ女優。黛は現在30歳で、どちらかといえばなまめかしくなったほうが実年齢に近いでしょうが、23歳の初心なぼたんを演じていることにおみそれしました。
(木俣冬)
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