朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第22週「2001-2003」

第103回〈3月28日(月)放送 作:藤本有紀、演出:深川貴志〉

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』虚無蔵と錠一郎から授かった木刀とCDを支えに自分の道を切り拓いた五十嵐
写真提供/NHK

※本文にネタバレを含みます

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It is fete, isn’t it? これは運命

2001年、21世紀になった。ハリウッド映画『サムライベースボール』のオーディションがいよいよはじまり、そのチームのひとりになんと五十嵐(本郷奏多)が参加していて、ひなた(川栄李奈)は動揺する。

【レビュー一覧】朝ドラ『カムカムエヴリバディ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜103回掲載中)

五十嵐はアクション監督の弟子になっていて、BUN IGARASHIと名乗っていた。
10年前のいささか頼りない姿と比べ、スーツ姿で堂々とした五十嵐にひなたは「むちゃくちゃかっこようなってへん!?」とテンションをあげる。

五十嵐がアクション俳優にはなれなかったもののアクションに関わることを続けることができたのは、虚無蔵(松重豊)にもらった木刀と錠一郎(オダギリジョー)にもらったトミー(早乙女太一)のCDを支えにしたからだった。つまり、 10年前、虚無蔵と錠一郎が彼に語ったことはその瞬間、すぐに効くものではなかったが、じわじわと効いて、五十嵐をここまでにしたのだ。

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』虚無蔵と錠一郎から授かった木刀とCDを支えに自分の道を切り拓いた五十嵐
写真提供/NHK

あのときは、ひなたとの別れを思い直すように虚無像と錠一郎は諭しているのかと思ったが、それよりも五十嵐自身のアイデンティティに関することだったようだ。恋や結婚よりもまず自分がやりたいことをやること。それを五十嵐が見失っていたのを虚無蔵と錠一郎が忘れないように木刀とCDを与えた。


そして五十嵐は鍛錬して、実家の会社を辞めて、アメリカに渡り、アクション監督のアシスタントになり、撮影所に晴れて凱旋した。撮影所の経験を役に立ったと憑きものがとれたような顔で言う五十嵐。

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』虚無蔵と錠一郎から授かった木刀とCDを支えに自分の道を切り拓いた五十嵐
写真提供/NHK

ハリウッドで働いているということは五十嵐は英語もできるということ。「言葉の壁も大きいしね」と言いつつひなたよりも先を行っているということである。これだけうまく行っているのだから、ひなたとの関係をもう一度考え直す可能性もあるのではないだろうか。「It is fete, isn’t it?」――これは運命 という英会話の一節に引っかかりを覚えるひなた。




虚無蔵は再会した五十嵐の頭を撫でる。ひなたの前ではポケットに手をつっこんで気取った感じになっていた五十嵐も虚無蔵の前では小僧の雰囲気である。

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』虚無蔵と錠一郎から授かった木刀とCDを支えに自分の道を切り拓いた五十嵐
写真提供/NHK

アニー・ヒラカワ(森山良子)も再び日本にやって来た。今度は甥で時代劇が大好きなジョージ(ハリー杉山)を伴って。

アニーはジョージに、ひなたを見ていると若い頃の自分を思い出すと語り、さらには岡山にも関係があるらしく……。これだけ安子風味を振りまいて、サービスし過ぎという感じがしないでもないが。
こうなったらもう安子でもそうでなくても視聴者は正解を観るまで視聴をやめることはできない。連続ドラマの勝ちパターンを手に入れたということだ。

るい(深津絵里)は前髪オンザ眉毛でその眉がやや太眉になっていて、なにかやる気がみなぎって感じる。しかも朝から母娘でやたらと流暢な英語を朗唱している家ってイケイケだよなあ。
(木俣冬)

『カムカムエヴリバディ』をさらに楽しむために♪










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番組情報

連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ

2021年11月1日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時00分~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時00分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時00分~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時00分(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時00分~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

制作統括:堀之内礼二郎 櫻井賢
:藤本有紀
プロデューサー:葛西勇也 橋本果奈 齋藤明日香
演出:安達もじり 橋爪紳一朗 深川貴志 松岡一史
音楽:金子隆博
主演:上白石萌音 深津絵里 川栄李奈
語り:城田優
主題歌:AI「アルデバラン」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami