『遊戯王 デュエルモンスターズ』とは、古代エジプト王の人格を秘める高校生、武藤遊戯がカードゲームを通して成長する物語。

冒頭のセリフは127話で放送された次回予告。ナレーションを務めるのはヒロインの真崎杏子。城之内を応援する形で次回予告を展開していくも、最後はいつも通りに元気よくタイトルを読み上げた。リズミカルかつ残酷なネタバレである。
ネタバレ次回予告はこれ以外にもある
遊戯王における次回予告は以下の3つの過程を踏んで執り行われる。
1,次回の内容に対する杏子の私見
2,タイトルコール
3,締めの言葉(デュエルスタンバイ! お楽しみに! デュエルの幕が下りる、など)
次回予告の時点で戦いの勝敗を暴露してしまうことは、遊戯王では時々ある。具体例を挙げて考察してみる。
城之内が勝ったからビッグ5も残りあと2人。でも、追いつめられてデュエル経験のない静香ちゃんを狙ったりしないかしら……? やっぱり! しずかちゃんがデュエルを始めちゃってる! えぇ、御伽くんと本田も一緒なの? 3対1で一見有利な対戦だけど、本田は素人同然だし、本当に大丈夫? 次回『男の花道 本田玉砕』。デュエルスタンバイ!
獏良を追ってクル・エルナの地下神殿に乗り込んだ遊戯。だけど千年アイテムと死霊たちの力でパワーアップしたギアーバウンドの前には復活したマハドの力も通じない。そのとき、二人のピンチを救ったのはマナの精霊だったの。
それぞれ105話、209話で放送された次回予告である。
冒頭の次回予告と上記の2つのタイトルを並べてみる。
『城之内死す』
『男の花道 本田玉砕』
『盗賊王バクラの最期』
それぞれに『死す』、『玉砕』、『最期』という極限ワードが組みこまれており、字面を見ただけでネタバレになってしまう。あ、この人たち負けたんだな、と。
さらに、タイトルコール前の杏子の一言も並べてみる
ここを耐えればマリクに勝てるんだから! 次回『城之内死す』
本田は素人同然だし、本当に大丈夫? 次回『男の花道 本田玉砕』
神官たちも駆けつけ、ついに獏良と神官団の死闘が始まるわ! 次回『盗賊王バクラの最期』
直前の一言が反語に近い形となり、次回予告と対比される形になる。
マリクに勝てるんだから!(いや、勝てない)
本田は素人同然だし、本当に大丈夫?(大丈夫じゃない)
ついにバクラと神官団の死闘が始まるわ!(だが終わる)
ネタバレ次回予告によって、勝敗を知っているテレビの前の視聴者と勝敗を知らずに命懸けで戦う登場人物というねじれが生じてしまう。
ただ遊戯王の場合、大事なのは勝敗ではなく、どのように負けたかを見るのが大事である。
『遊☆戯☆王』のコミック序盤では、金に目がくらんだ学生ボディガード、過激なやらせ・暴力を撮りたがる悪徳ディレクターなど、数多くの外道が登場する。主人公の遊戯(古代エジプト王)がそういった不届き者を、読者の想像を超える形で『制裁』していくスタイルだった。負け方を楽しむ物語。そう考えれば、勝ち負けなんてどうでもよくなる。
劇場版『遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』公開中
4月23日より始まった映画『遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』。
1,古代エジプト王との再会を果たす
2,デュエルを挑み、それに応じてもらう
3,勝つ
1が最難関だが、3も難関。海馬が遊戯に勝利したのは1度だけ。自殺をチラつかせて動揺を誘った末の結果である。ベジータが悟空に勝てないように、海馬も遊戯にはなかなか勝てない。だが、それでもいい。海馬がなりふり構わず勝利に執着する、そんな姿勢が好きなのだ。
(山川悠)