
BECK
■【20th Anniversary FUJI ROCK FESTIVAL'16】写真レポート
2016.07.22(FRI)、23(SAT)、24(SUN)at 新潟県 湯沢町 苗場スキー場
(※画像29点)
1997年に山梨県富士天神山スキー場で第1回目が開催されてから今年で20回目を迎える【FUJI ROCK FESTIVAL】が、7月22~24日に新潟県湯沢町苗場スキー場で開催された。今年は各日のヘッドライナーがシガー・ロス(22日)、ベック(23日)、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(24日)という豪華ラインナップで土日はチケットが完売し、前夜祭も含めて延べ12万5000人を動員。
20年間の総延べ入場者数も200万人を突破するという、日本の夏フェスの代表と呼ぶにふさわしい華やかな開催となった。

SIGUR ROS

JAMES BLAKE

ROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRA(feat. 八代亜紀、仲井戸”CHABO”麗市、奥田民生、トータス松本)
初日。朝10時過ぎに会場に到着し、まずは飲食ブースが並ぶオアシスエリアで乾杯。1年ぶりに目にする光景に「今年も帰ってきたなぁ」という感慨に浸っていると、グリーンステージからフジロックのテーマソングである忌野清志郎「田舎へ行こう!」が大音量で流れてきた。いよいよ今年のフジロックの開幕だ。

DISCLOSURE

FLIGHT FACILITIES

The Birthday
この日はホワイトステージのオープニングを飾ったラ・ゴッサ・ソルダを皮切りにさまざまなアーティストを観たが、とくに印象的だったのがルート・セブンティーン・ロックン・ロール・オーケストラとヘッドライナーのシガー・ロス。池畑潤二(Dr)らによるフジロック限定バンドのルート・セブンティーン・ロックン・ロールは、ゲストとして迎えるボーカルの一人に八代亜紀が登場。スパンコールが光るピンク色のドレスに身を包み、笑顔を振りまきながらステージ中央に向かう彼女の姿を見たときの衝撃は、今でも目に焼き付いている。そして、まずはBBキング「The Thrill Gone」を披露した後、オーディエンスに向かって一言「ビール飲んでる? ビールいいよね。でも……冷やもいいけど、お酒はやっぱり温めかな」。その瞬間、大きな歓声が沸き上がる。そして、誰もが知る「舟歌」のイントロが流れると、それまで座って観ていた人も立ち上がり、グリーンステージは異様な熱気に包まれた。
まさかフジロックで八代亜紀が観られる日が来ようとは。苗場の山に響き渡る貫禄のコブシに感激し、思わず涙がポロリとこぼれました…。

THE NEW MASTERSOUNDS


一方、この日のグリーンステージのトリを飾ったシガー・ロス。2005年以来2度目となる出演に、どれだけの人が待ちわびていたことだろう。夜9時の定刻通りにスタートしたライブは、新曲「Oveour」から始まった。それにしても、どれだけ目を凝らしてもステージ上がどうなっているのかまったくわからない。というのも、ステージにブラインドのようなセットが組まれており、メンバーはその奥で演奏しているのだ。しかし、それが逆に功を奏して音に集中できる。ほどなくしてブラインドが上がると、ついにメンバー3人の姿が明らかに。と同時に、彼らの動きとモニターに映し出される映像がシンクロし始め、さらにはステージ全体を使ったVJ演出など、その神々しいまでの美しさに圧倒される。夜になって肌寒いくらい気温の下がった気候もまた、アイスランド出身の彼らを観るに相応しい演出にさえ思えた。息をするのも忘れて見入っていると、予定されていた90分はあっという間。
最後の曲「popplagio」を終え、メンバーがステージを去った後も、もっと観たい!と願うオーディエンスの拍手がいつまでも鳴り止まなかった。

WILCO

TRAVIS

FRF 20th SPECIAL G&G Miller Orchestra (JUMP WITH JOEY、FRONTPAGE ORCHESTRA、加藤登紀子、曽我部恵一、中納良恵)

SQUAREPUSHER

TORTOISE

KULA SHAKER

SPECIAL OTHERS


2日目の始まりはヘヴンステージから。ベルリンに拠点を置くプロデューサー、マーク・エルネストゥスと西アフリカ・セネガルのサバール・ドラム伝承者たちからなるマーク・エルネストゥス・ンダッガ・リズム・フォースでたっぷり踊らされ、炎天下で気温もグングンと上がる中、早くもグロッキー状態に。続くROVOでも多幸感溢れるサウンドに昇天寸前だったが、この日のクライマックスはやはりヘッドライナーのベック。超満員のオーディエンスの前に現れたベックは、ライダースに黒のドットシャツという出で立ち。その時点ですでに観衆(主に女子)をメロメロにさせる破壊力を発揮したのに加え、それに輪をかけてすべての観客を魅了したのが、グレイテストヒッツ集とも言っても過言ではないセットリスト。1994年リリースのメジャー・デビュー・アルバム『Mellow Gold』収録の「Loser」から昨年リリースされた「Dreams」まで、彼の全キャリアを網羅したラインナップに、当然のことながらオーディエンスは身体と声で表現できる最大の歓喜を表す。そして、アンコールでは白いスーツに白いハット、シャツはピンクのドットへとお召し替え。40代半ばを迎えてもなおキラキラとしたオーラを放つベックに、もう死んでもいいかもと思えるくらい完全ノックアウトされた夜だった。

RED HOT CHILI PEPPERS

BEN HARPER & THE INNOCENT CRIMINALS

Ken Yokoyama

電気グルーヴ

BATTLES
3日目、最終日。前2日間分の疲労も溜まってきたため、夜のレッド・ホット・チリ・ペッパーズに備え昼過ぎに会場イン。この日は土曜日に続きチケットが完売しているだけあって、どこもかしこも人・人・人で溢れかえっていた。
少しでも人がいない場所を求めてヘヴンステージに向かったところで、結果レッチリをも上回る素晴らしいステージに遭遇。その名も、アーネスト・ラングリン・アンド・フレンド。ジャマイカが誇る世界でも最高峰のギタリスト、アーネスト・ラングリンを中心としたバンドで、1932年生まれの彼は今年、60年に及んだ世界各国を回るツアー生活からの引退を決断。つまり、これを見逃したらもう二度と観られないということなのだ。御年84歳と聞き、こんな地球の裏側の山奥まで来て体力は大丈夫だろうか……と心配したが、目の前に現れた彼は足取りもしっかりとしており、すこぶる元気そう。おまけに立ち振る舞いも穏やかで、失礼ながら“ニコニコと気のいいおじいちゃん”といった感じなのに、一度ギターを弾き始めると超絶テクニックをいとも簡単に繰り出すものだから、その一挙手一投足を見逃すまいと目が釘付けになってしまった。そんな彼の周りを固めるメンバーもみんなワールド・ミュージック界の重要人物ばかりなのだが、この日ばかりは大先輩への敬意に満ちていたのが印象的。最後、アーネスト・ラングリンを中心に一列に並んでオーディエンスに挨拶した後、それぞれが彼と抱き合ってステージでの健闘を称え合っている姿に、憧れの先輩との共演を喜ぶ彼らの胸の内が垣間見れた気がして、思わず目頭が熱くなった。

EXPLOSIONS IN THE SKY

YEARS & YEARS

KAMASI WASHINGTON


そして、この日はクロージング・アクトの電気グルーヴも最高だった。レッチリが終わった後、超満員のオーディエンスで膨れ上がったグリーンステージを彼らがダンスフロアへと化す。ライブ全編に渡ってフジロックへの愛が感じられる演出に、思わずニヤけてしまうような嬉しさと、もうすぐこのお祭りが終わってしまう寂しさが相まって、もう踊るしかないような状況――。ふと周囲を見渡すと、きっと同じような想いを抱えた人たちが思い思いに踊っている。
その光景は、電気グルーヴありがとう! フジロックありがとう!と叫びたくなるくらい圧巻の眺めだった。
ここまで紹介したもの以外にも、3日間で多くのライブを堪能した。しかし、当然のことながら出演者すべてのステージを観るのは不可能。それゆえ苗場から帰京する道中では、迷った末に諦めたステージや、体力の限界やノーチェックによりうっかり見逃してしまったバンドの評判を耳にし、大後悔大会が始まる。今年もそんなステージが大量に発生。その悔しさからか、最終的には来年観たいアーティスト予想までし始める始末。そう、2017年のフジロックはすでに始まっています。また来年、苗場で会いましょう!
(取材・文/片貝久美子)
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