
正義に目覚め、復讐者から“弱者を守り、悪を倒す”というシンプルかつ主人公らしい生き方にシフトチェンジしたアグニ。薪にされていた祝福持ちの奴隷を解放し、弱者の神的存在となった。
しかし、外で待ち構えていたのは、大勢のベヘムドルグ兵を率いたユダと、例の凶悪犯罪者三人衆。三人がかりに手も足も出ず、もはやトランスフォーマーと化した怪力ダイダにブッ飛ばされたアグニが、巨大なマンションらしき建物に突っ込んでしまった所で今話は終了。
助けたい人たちを焼かれてしまうのと、自ら焼いてしまうのはどちらが不幸なのだろうか?
もちろんそのマンションらしき建物は、アグニから引火して一気に燃え上がってしまうだろう。寒さをしのぐ為か様々な建物が密集した作りになっているベヘムドルグは、街全体一気に火が広がってしまうだろう。今話のラストのアオリ文句は“街に消えない火が灯る”。
自分を偽り、復讐者を演じていた時のアグニだったらベヘムドルグが燃え上がろうが、国民全員死のうが何も気にしなかったはず。しかし、“人を助けたい”と本当の自分と初めて向き合った瞬間、すぐにこの有様だ。助けたい人たちを焼かれてしまった第1話と、助けたい人たちを焼いてしまうかもしれない次話。アグニにとってどちらがより不幸なのだろうか?
こうならないようにユダは、アグニを建物に近づけないようにと、ダイダに予め釘を刺していた。少し軽薄ではあったがダイダもわざとやった訳ではないし、ベヘムドルグが燃えてしまって良い事なんて何もない。アグニにとっても、ユダにとっても、凶悪犯罪者三人衆にとっても、もちろんベヘムドルグ国民全員にとってもこれは最悪の展開だ。
結局はトガタがどう動くか次第
それはトガタだ。今話のトガタは、自分が思い描いていたシナリオが全て破綻してしまい、珍しくへこたれていた。男だか女だかさえもわからない金髪の人間にオンブされながら、涙を流して愚痴をこぼしていた。そんなトガタは、燃え上がるベヘムドルグを見てどう思うのだろうか?
巨大な炎を見て逃げ出すのか、迫力あるシーンとしてカメラに収めたいのか、それとも街中にしかけた爆弾を使って上手いこと鎮火するのか。どれにしろ、この漫画最強かつ何をしでかすかわからないトラブルメーカーのトガタ次第で、この先のストーリーが大きく変わっていくだろう。
今のアグニは、感情移入するだけで少し気持ちが滅入ってしまうほど不憫だ。どうか、アグニが少しでも救われる様な展開を期待したい。
(沢野奈津夫)