大黒摩季、松山千春、ゲスの極み乙女。ら多彩な顔ぶれとなったRSR最終日/ライブレポート

■【RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO】ライブレポート
2016.08.13(SAT)at 石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ
(※画像8点)
(C)RISING SUN ROCK FESTIVAL

――1日目より

2日目も文句なしの快晴。朝から昼にかけてはゆっくりと過ごし、この日のライブは大黒摩季からスタート。
2010年の活動休止以来、実に6年ぶりとなる復活ライブを、ここで行なう彼女。RED STAR FIELDにはステージ後方までびっしりと人波が及んで、注目度の高さを感じさせる。正直、これまであまり熱心に聴いたことはなかったのだけれど、「熱くなれ」から始まったライブは、「DA・KA・RA」「チョット」「永遠の夢に向かって」「夏が来る」「いちばん近くにいてね」などなど、なじみのあるナンバーのオンパレード。改めて、こんなにたくさんのヒット曲がある凄い人なんだな、と実感。あまつさえ、ひとつひとつの曲を慈しむように歌う彼女の伸びやかな声には“歌う喜び”が溢れていて、その真摯さが胸に迫る。まさに“魂の歌唱”にぐいぐい引き込まれてしまった。終盤の「ら・ら・ら」では地元・小樽の菁園(せいえん)中の生徒達がコーラスで参加。間違いなく彼女のライブは今年のハイライトであり、ライジングサンの歴史にも残る感動的なものだったと思う。終演後の彼女の姿をバックステージで見かけた友人が「一人で立っていられないぐらいふらふらだったよ」と言っていた。精魂込めて務めたステージだったのだろう。本格復帰を果たす今後の活躍も応援したい。

大黒摩季、松山千春、ゲスの極み乙女。ら多彩な顔ぶれとなったRSR最終日/ライブレポート
撮影 小川舞

大黒摩季、松山千春、ゲスの極み乙女。ら多彩な顔ぶれとなったRSR最終日/ライブレポート
撮影 新保勇樹

一旦テントに戻って仲間と炭火でジンギスカンを楽しみつつ、SUN STAGEの東京スカパラダイスオーケストラを聴く。
目下放映中のCMでおなじみの「Paradise Has No Border」を皮切りに「ルパン三世のテーマ」や「美しく燃える森」「DOWN BEAT STOMP」など最高にアガるナンバーを連発した彼らは、フェス巧者の貫禄をいかんなく発揮した。夜は全員でMANNISH BOYSのライブにゲスト参加もしたそうだ。

大黒摩季、松山千春、ゲスの極み乙女。ら多彩な顔ぶれとなったRSR最終日/ライブレポート
撮影 小川舞

次は今年の“目玉”とも言える地元の名士、松山千春の登場である。「俺、フォーク・シンガーだべや。それがロック・フェスに出ていいのか?」と北海道弁で語りかけ笑いを誘った彼は、「夢の旅人」を皮切りに、「長い夜」「季節の中で」「大空と大地の中で」「大いなる愛よ夢よ」と、道産子ならずとも知っているヒット曲の数々を朗々と歌いあげ、私の周りで見ていた若い来場者たちは「千春、ヤバいな!」「マジでいいよね?」と興奮しながら楽しんでいた。本人のうれしそうな表情と、曲が終わる度に深々とおじぎをする姿も印象的だった。昨年の安全地帯のときも思ったが、こういう“ベテラン枠”しかも道産子アーティストが世代を越えて盛り上がるのは嬉しい。

大黒摩季、松山千春、ゲスの極み乙女。ら多彩な顔ぶれとなったRSR最終日/ライブレポート
撮影 柴田恵理

続くは特別企画『宴会部長 増子直純の~よりぬきROOTS66 in EZO~』。“66”というのは、ローリング・ストーンズもカバーしたかの有名なアメリカの国道66号線の歌のことかと思いきや、66年生まれのミュージシャンの集まり、という意味だそうで、おなじみ怒髪天の増子直純をはじめ、大槻ケンヂ、田島貴男、スガ シカオ、伊藤ふみお、中川敬、トータス松本、八熊慎一、渡辺美里、斉藤和義……その豪華すぎる顔ぶれに、おぉ、66年生まれって人材の宝庫だったんだ!と感慨を新たにする。とりわけ感激したのは、この企画のためだけに出て来た渡辺美里(単独出演熱望!)で、持ち歌の「My Revolution」を歌った時には「おおっ!!」という大きな歓声があがった。

大黒摩季、松山千春、ゲスの極み乙女。ら多彩な顔ぶれとなったRSR最終日/ライブレポート
撮影 柴田恵理

出演者のルーツ、というのがコンセプトだけに演奏されるのはすべて時代を象徴した名曲。「TRAIN-TRAIN」「ヤングマン」「北酒場」「勝手にしやがれ」といった曲が続くと、いろんなテントから歌声が聞こえてきて場内も軒並みカラオケ状態である。
ステージ上で歌う面々もとにかく楽しそう。終盤には今年亡くなったデヴィッド・ボウイの「Changes」の日本語カバーも披露され、胸が熱くなった。先人が遺したスピリットは、こうしてきっちりと受け継がれている。メンバーの豪華さもさることながら、フェスらしい特別感に満ちた最高の企画だった。

大黒摩季、松山千春、ゲスの極み乙女。ら多彩な顔ぶれとなったRSR最終日/ライブレポート
撮影 柴田恵理

深夜帯に入って登場したゲスの極み乙女。はショパンの「幻想即興曲」を絡めながら、独自の空間を創出。「私以外私じゃないの」や「ロマンスがありあまる」といったおなじみの曲に加えて「アソビ」などの新曲も披露した。プログレッシブなバンド・アンサンブルと川谷絵音のゆるふわボーカルのコントラストが絶妙。柔らかなようでいて硬く、難解なようであってとびきりポップ。いいバンドだなあと改めて感じた。

大黒摩季、松山千春、ゲスの極み乙女。ら多彩な顔ぶれとなったRSR最終日/ライブレポート
撮影 小川舞

そして次はいよいよ大トリのBRAHMAN。北海道にちなんでか、アイヌ語の歌詞を持つ「Kamuy-pirma」や、HEATWAVEの山口洋とソウルフラワーユニオンの中川敬を呼んで共に歌った「満月の夕」などをまじえながら、“煽る”よりも“聴かせる”ライブを展開。
ひとしきり演奏した後、TOSHI-LOWが「今しか言えないことを……」と神妙な顔で。一体何を言うのかと思ったら、「おはようございます」。張りつめた会場の雰囲気が笑いとともに一気に解れた瞬間だった(笑)。このライブを引き受けるまでに至るプロセスを丁寧に説明する長いMCが続いた後、「このステージには北海道の人間が出るべきだと思う」と言ってブラッドサースティー・ブッチャーズの「散文とブルース」を披露。これにはやられた。心が震えた。

じんわりと光を放つ朝日を見ながら、駆け抜けるように生きて去った吉村秀樹のことを思った。人は去り、思い出だけが積み重なっていくが、どんなことがあっても夜は明けるものだな……と、少しだけ感傷的な気分になった。盛り上がって大騒ぎして迎える朝もいいが、こんな朝もいい。
(取材・文/美馬亜貴子)

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