脚本:渡辺千穂 演出:安達もじり

86話はこんな話
さくら(井頭愛海)が夜遊びしていることを知って、すみれ(芳根京子)は激怒。誘った龍一(森永悠希)のことを母親の良子(百田夏菜子)に咎め、気まずい雰囲気に。
なんであそこまで言われなあかんの
86話は、すみれ視点に戻った感じ。
さくらの行動にものすごく無理解なすみれ。自分が子供のときの大冒険のことを忘れてしまっているのだなあ。
それとも、迷子になったときすごくこわかったことを無意識で記憶しているのか、なんて思って見ていたら、
それには明美(谷村美月)が「自分の愛情がちゃんと伝わってる自信がない」のではと鋭く分析していた。さすが元ベビーナース。母と子に関してよくわかっている。
すみれがあまりにも執拗に、さくらの夜遊びの責任を問うものだから、良子は「なんであそこまで言われなあかんの」とむくれてしまう。
「あほではすまないわ 夜の世界よ どんなひとがいるかもわからないのよ 普通に暮らしていたら出会うことのない人ともで会うてしまうかもしれないのよ。なにかあったらどうするの。取り返しのつかないことがあったら」「さくらは女の子なのよ」「ちょっと・・・(龍一を)甘やかし過ぎなんやない」などと畳み掛けるから、最初は申し訳なさそうにしていた良子が「行きたい言うてついて行ったのはさくらちゃんやない」と反論してしまう。君枝(土村芳)と明美はうなだれるばかり。
キアリスの4人はこんなふうにときどきジメッとなる。カラッとした性格の子がひとりもいないのは、おとなしいお嬢様集団という設定にしてしまったからなのか。
とりわけ、86話の琴子はいい働きをしていた。
「これや、これがあかんのよ」「これが妙な方向に走らせる原因やないの」と、おばちゃんたちが健ちゃん健ちゃんと追いかけることが「非行のはじまり」ではないか、と心配するとぼけたおかしさは、さすが、志村けんと長年コントをやっていただけはある実力派だ。
新入社員の“ライバル現る”で戦々恐々の武ちゃん、その前は気楽に「有楽町で逢いましょう」(57年、フランク永井)を歌っていて、なかなか上手だった。
切り替えられる紀夫
すみれはいつまでもくどくど怒るタイプだが、紀夫(永山絢斗)はびしっと怒ったあとは、すぐに切り替えられる人。それは、そういうふうに自分を律していたからだった。
後に、新入社員・西城一朗(永瀬匡)と中西直政(森優作)に「社会人は気持ちを切り替えることが大事です」とアドバイスしていることから、その意志がわかる。
この新入社員の歓迎のとき「よっ」と武ちゃんが囃したあと、「よっ」と続ける(それも2回続けて)紀夫も人柄の良さが出ていた。永山絢斗はどこかオフビートなユーモアがある。
(木俣冬)