

彼の口からこう続き、その一言を聞いて以降筆者は、彼のために何かすることを「こき使われている」という感覚から、「信頼されている」というふうに見解を変えられたのです。
「あの頃と変わったよね」
恋人間でよく聞く、こういった言葉。
女性がこの発言をするときに、いい意味で言っているのは、借金まみれでギャンブル大好きだった彼が借金を返済し、ギャンブルもやめたときに言う「あの頃と変わったよね!」といったシチュエーションくらいです。たいてい不満がある場合に、こういった言葉が口をついて出るのです。
そしてそのとき(もしかしたらほぼ常に)、頭の片隅では、恋人と付き合いたての頃のことを思い出しています。そこには、すべて先頭を切ってリードしてくれていた、デートの計画を分刻みで考えてくれていた、こちらを喜ばせようと必死に頑張ってくれていた彼の姿が浮かびます。きっと、あの頃の彼にとって、こちらは隣にいるだけでよかったのだろうと思います。
彼と同棲を始めて半年が経過しようとしている現在、彼のために毎朝早く起き、彼のごはんを作り、「私は息するスヌーズ機能…」などと思いながら低血圧の彼を何度も起こし、ペットに餌を与えて彼を送り出し…といった具合に、自分以外の物事が中心に自分の世界が回っていて、彼と一緒に暮らしたことへの良い点を探ってしまうほど。
そしていつも思うのです。付き合いたてのときの彼だったら、こんな気持ちにさせないだろうなと。

付き合いたての頃の彼なら、こちらに嫌われたくないため、今挙げたことを全て彼自身で成し遂げ、その上こちらへのおもてなしも欠かさないことでしょう。それはこちらとしては、彼に大切にしてもらっている実感を、身を以て感じられる上、自分の時間がしっかりとれる…
もう言うことないはずなのですが、冒頭の彼の一言を聞いて、今の生活は、むしろ付き合いたての頃よりも素敵なものに思えたのです。
「恋人」から脱皮する時期?

「夫婦」という存在を考えたとき、旦那さんが奥さんのために、いつも何かしてあげていたりリードしているというよりは、旦那さんと奥さんが力を合わせて生きているという印象を抱きます。なので、彼から頼みごとをされるということは、「恋人」から「夫婦」に近づけているような気がして、嬉しく思えるようになりました。
「引っ張ってもらう」から「隣で力になる存在」に段階が進んだのだと思えたのです。

その一言を聞く前は、何かとこきを使われて、「彼女」というよりも「都合のいい女」として扱われていやしないかと不安がよぎることさえあったのですが、彼の一言を聞いてからは、真剣に付き合えているという正反対の印象を抱きました。いまだにこき使われていると思うときもあるので、あくまで「徐々に」ですが、前向きに思えるきっかけをくれる一言なのでした。
使用は本心の場合のみ!

「あの頃と変わったよね」
「一緒にいて慣れてくることは悪いことではなくて、頼れるようになったってことだよ」
この一言には、筆者の心をプラスに働かせる力がありましたが、受け取り方によっては、うまく言いくるめられているようにも思えます。当然ながら、恋人に対し、うまく言いくるめるために使ったら大罪です!
また、「最初の頃に比べて気にかけてくれなくなった」など、この一言では女性の不満が解消されない点もきっとあるでしょう。恋人を大切に思ったところで何の罰も当たりません。恋人と関係を進めつつ、最初の頃と変わらずにいてほしいところもあるのです。男性の皆さんも、時々は、付き合いたての頃にとっていた彼女への態度を思い出してみてください。
(武井怜)