先日、Twitterを見ていて思わず目が止まったのがこちらのツイート。
「大阪モダン焼き」裏蓋に宿るリアリティ 食品サンプル職人のコンペが凄かった

“「お椀からこぼれる味噌汁をリアルに表現した食品サンプル」型のスマホスタンド”、という、かなり複雑なひねりが効いたグッズだ。


「大阪モダン焼き」裏蓋に宿るリアリティ 食品サンプル職人のコンペが凄かった


欲しい!と思って、ツイート元の情報を掘り下げていくと、このグッズは株式会社いわさきという食品サンプルの老舗メーカー(創業は昭和7年だとか!)が作っているもので、会社の公式Twitterアカウントではそれ以外にも、
「ハム型しおり」
「大阪モダン焼き」裏蓋に宿るリアリティ 食品サンプル職人のコンペが凄かった

「しめじカチューシャ」
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「ご飯マグネット」
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など、何気なく使っていたら相当驚かれそうなグッズが多数紹介されていた。

こうなってくると、「株式会社いわさき」が一体どんな企業なのか一気に気になり始める。大阪市東住吉区に本社を置く会社で、タイミング良く、2017年4月28日~5月7日までインテックス大阪で開催される「'17食博覧会・大阪」に出展していたり、2017年4月29日、30日にはATCエイジレスセンターで「食品サンプルの世界展2017」という展示イベントを開催する予定だということがわかった。

株式会社いわさきを深く知るためには行かねばなるまい!と気合を入れ、ATCエイジレスセンターで開催される「食品サンプルの世界展2017」の方に足を運んでみることにした。


食品サンプル製作者の技術を競うコンペ


こちらの展示内容のメインとなるのは、2017年に開催された「いわさき製作スキルコンペ」に出品された作品の数々だ。公式サイトによると、株式会社いわさきでは毎年、社内の食品サンプル製作者の全員を対象にコンペを開催していて、そこには普段の業務で作るものとは違った自由な発想によるオリジナリティ溢れる食品サンプルが出品されるのだという。つまり、各製作者のアイデアと技術が試される場なのである。


会場に着くとスタッフの方に投票用紙を渡され、どの食品サンプルが良いと思ったか、投票できるようになっていた。
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コンペには毎年テーマが設定されているそうで、今年のテーマは「日本のご当地料理」。

明石の蛸めし、
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浜松の羽根つき餃子、
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岡山のデミカツ丼、
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などのご当地グルメが渾身のクオリティで表現されている。展示を見に来ていた小学生ぐらいの女の子が食品サンプルを見つめながら「マジでガチやな……」と、そのリアルさにぼう然としていたのが印象的だった。作品を見ていると、口の中に唾液が溢れ、腹がギュルギュルと鳴る。

会場には全部で67作品が展示されており、ボリューム的にそのすべてをここで紹介することはできないが、私のお気に入りをいくつか紹介させていただきたい。


「瀬戸御膳」、
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「はしだてオイルサーディン」、
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「博多の肉ゴボー天うどん、かしわごはん」、
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「チキン南蛮(宮崎県)」、
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「ジャガバター(北海道)」
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「茨城名物 水戸納豆」、
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「ふるさとへ走る」、
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「滋賀県の郷土料理 鮒寿司」、
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「生姜が決め手!姫路おでん」、
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「博多の食卓」、
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どれもただ精巧だというだけじゃなく、食べ物の美味しさが脳にダイレクトに伝わってくるのだ。

中には「震災時の食卓」なんていう作品も。
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こうして当時の記憶を留めておく上でも食品サンプルは役に立つのである。

すべて見た上で私が一番すごいと感じたのは、
「大阪モダン焼きとごはん(テイクアウトver)」
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特にこの蓋の裏のリアリティよ!
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感動した。お店に置かれるサンプルとしては表現されないであろう部分だからこそ面白い。


「天丼」の食品サンプル制作を体験


展示会場では実際に食品サンプルを体験制作できるコーナーもあり、「天丼」を作らせてもらった。


丼にごはんを敷き、
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選んだ具材に、
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ロウの衣をつける。
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揚げたての天ぷらそのものだ。
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ご飯の上に盛り付けてタレをかけて完成!
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仕事机に置いてあるのだが、見ていると腹が減って仕方ない。

と、すっかり展示を堪能。ますます気になることが増えたので、後日改めて、株式会社いわさきについて広報の方にお話を伺ってみた。
――Twitterにたくさんの斬新な食品サンプルグッズをアップされていて、すごく遊び心のある会社だと感じました。
実際はどんな雰囲気の会社なんでしょうか?

「当社は創業85年になります。飲食店の店頭に陳列している食品サンプルをメインとした販促物を取り扱っている会社で、Twitterに投稿したような一般の方向けの商品はほとんど扱っていないんです。食品サンプルは見るとなんとなくワクワクするものですが、その雰囲気は職場の空気にも反映されていると思います。上司と部下の距離が近く、若手社員も積極的に発言ができるようなアットホームで活発な職場です。ちなみに、Twitterに投稿したおもしろグッズのアイデアは社員からの公募です」

――特に「味噌汁スマホスタンド」のインパクトはすごかったです。ああいう面白いアイデアを普段からみなさんで考えていらっしゃるんですか?

「(株式会社いわさきが出展していた)『食博』の準備として全従業員にアイデア募集のアンケートを行い、その中で実現できて面白そうなものを形にしました。
『味噌汁スマホスタンド』は、ある製作者の方がびっくりサンプルとしてこぼれた味噌汁を試作していたところ『豆腐でスマホを立てたら面白いんちゃうん!』と思いついたそうです。おかげ様でTwitterでも話題になりました。いわさきには1,000種類以上の定番の食材の部品が揃っているので、それを組み合わせるだけでも色々なものが出来ます。『しめじのカチューシャ』についても『食博』の撮影コーナー用におもしろいアイテムを作ろう!と有志で集まって作業をしているときに浮かんだ『しめじが頭から生えてるように見えたら面白いよね』という発想からですが、あんなことをしたら面白い、こんなものがあったら変だ、というインスピレーションを沸かせる多くの部品があってのことだと感じます」

――ちなみに私は残念ながら「食博」の方へは行けなかったのですが、株式会社いわさきのブースはどんな様子だったんでしょうか?

「普段は飲食店の店頭を飾る食品サンプルや販促物を取り扱っていますが、4年に一度の『食博』では一般のお客様に楽しんでいただけるような商品を考えて出展しています。今年はレンコンやちくわのペンスタンド
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や、つぶれソフトクリーム
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や、こぼれたコーヒー
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などのびっくりアイテム、パティシエールに焼いてもらった手作りクッキーを元にしたアクセサリーや、納豆のミンティアケース、
「大阪モダン焼き」裏蓋に宿るリアリティ 食品サンプル職人のコンペが凄かった

など『あったら面白そう!』を形にしたアイテムを数多く揃えました。定番の食べ物のキーホルダーやマグネットも、食博では非常に人気のおみやげ品で、今回は数十種類用意しました。
その他、全高70cmのタワーバーガー、
「大阪モダン焼き」裏蓋に宿るリアリティ 食品サンプル職人のコンペが凄かった

巨大おにぎり、
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パインメガネ、
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など、食博の思い出に面白い写真を撮っていただける撮影コーナーや、たこ焼きをはじくスマートボール、
「大阪モダン焼き」裏蓋に宿るリアリティ 食品サンプル職人のコンペが凄かった

野菜を転がすパターゴルフ、野菜に向かって輪を投げる輪投げで遊べるゲームコーナー、も作りました」

――たこ焼きスマートボール……それは体験してみたかったです!「食博」で販売していたグッズは通販でも購入できますか?

「通常はほとんど取り扱っていないのですが、今回の『食博』のために作ったグッズに関しては数量限定での追加を検討したいと思います。また『味噌汁スマホスタンド』についてはリクエストの声が特に多いため、準備ができ次第、数には限りがありますが販売する予定です」


――マメにサイトをチェックさせてもらいます!過去に作られたものでこれぞ!という珍グッズはありますか?

「ブッシュドノエルの本立て『ブックドノエル』や、
「大阪モダン焼き」裏蓋に宿るリアリティ 食品サンプル職人のコンペが凄かった

冷蔵庫に貴重品を隠せる『ロールケーキの金庫』、
「大阪モダン焼き」裏蓋に宿るリアリティ 食品サンプル職人のコンペが凄かった

『鯛皮の財布』、
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『ケーキのハイヒール』
「大阪モダン焼き」裏蓋に宿るリアリティ 食品サンプル職人のコンペが凄かった

などですね。『ブックドノエル』は前回の食博で一点ものとして販売いたしました」

――今回、展示で拝見した「いわさき製作スキルコンペ」の出品作のクオリティに驚きました。あのコンペに対する社内の方々の思いはどんなものなのでしょうか?かなり熱意を感じたのですが。

「『エンドユーザーに喜ばれる製品、作品を発信して行こう!』というのが開催主旨です。普段はお客様からご発注いただいた飲食店向けの食品サンプルを製作していますが、コンペ作品に関してはテーマに合わせて製作員自身が自ら作りたいメニューを考え、普段使っている技術であったり、模索した新しい技法やアイディアであったりを存分に発揮する場になっています。製作員が全員参加することによってスキルの底上げを行ったり、コンペ作品を作製するうえで使用した新しい技法等を全社的に共有する場でもあります」

――優勝するとご褒美があったりするんですか?

「賞にはグランプリ、社長賞、専務賞、各部長賞、パート賞、努力賞、一般審査賞があり、一般審査賞以外は社内審査で決定されます。入賞者には賞状と副賞の賞金が贈られますが、なにより製作員としての名誉がご褒美になるのではないでしょうか!」

ちなみに今年度のグランプリには「瀬戸御膳」

が選ばれたそう!

――最後に、株式会社いわさきのみなさんが食品サンプル作りで一番大事にしていることを教えてください!

「お客様の食欲を喚起させ、飲食店の繁盛に繋がるよう、より良く、より安く、より早くを意識しながら製品をつくることが大前提です」

――ありがとうございました!

株式会社いわさきの食品サンプルにかける真摯な思いと、その真剣さゆえに生まれる奇跡のように面白い発想にうならされる結果となった。下記の公式サイトに「食品サンプルギャラリー」があり、これがもういつまでも見ていられる内容になっているのでぜひチェックしてみて欲しい!
(スズキナオ)

取材協力:
株式会社いわさき
http://www.iwasaki-ts.co.jp/