
視聴者の心を抉ること事に特化した演出
警察に出頭したものの厳重注意で釈放となった美穂子(戸田恵梨香)と連絡が取れない深瀬(藤原竜也)は、谷原(市原隼人)と浅見(玉森裕太)の計らいで、大阪に帰る直前に会うチャンスを得る。
勇気を振り絞り、道路を挟んで大声で思いを告白する深瀬。
今までの8話を見てきている我々視聴者は、シェネルが唄うエンディングテーマ「Destiny」が流れると、「何かイヤなことが起こる」もしくは「イヤな事実が判明する」と、脳にすり込まれている。「Destiny」は不幸を告げるテーマとして、認識させられている。
それなのにだ、それなのになぜか、楽しそうにお喋りをする二人の元に、おかわりのコーヒーとハチミツをもって恭子(YOU)がやってくると、その不幸を告げるテーマ「Destiny」のバイオリンが流れ出す。
楽しい場面でなぜ「Destiny」が?答えは単純。これから何かイヤな事が起こるということ。何が起きるかはわからないが、“何か不幸な事が起きる”のはハッキリとわかる。
「美味しい。変わった味」と美穂子は、楽しそうにハチミツの感想を言う。
「なんのハチミツかわかる?」
もうぜったい蕎麦じゃん。さっきまで蕎麦アレルギーのアナフィラキシーショックの話をしていて、これからイヤな事実が発覚するのなら、そのハチミツは、蕎麦の花から出来たものに決まっている。
高原ハチミツを舐めた深瀬は、10年前の事件の時に広沢に飲ませたコーヒーに入れたハチミツが同じものだと気付いてしまう。ゆっくりとラベルの裏側を見てみると、案の定「国産ハチミツ(蕎麦)」と記載されていた。
「広沢由樹を殺したのは、俺だった」
まさか、エンディングテーマをこんなに巧みに使ってくるとは思わなかった。原作は「読んでイヤな気持ちになるミステリー」、“イヤミスの女王”湊かなえ。それだけにこのバラし方は、スタッフ陣が考えに考え抜いて、一番視聴者の心を抉るものを選んだのだろう。おかげで、最終回を見るのが怖くて仕方ない。

さらにゾワゾワする最終回
だが、浅見の学校での事件も、谷原の本社復帰も、村井(三浦貴大)の夫婦間についても、好転の兆しは見せている。蕎麦の花のハチミツコーヒーに関しても、広沢が飲まなかったのかもしれない。広沢は深瀬からコーヒーを受け取る際に「ありがとう。
これらを踏まえると、最終回くらい少しは救われる形になるのかもしれない。
そこで最後に、筆者が気付いた、もしくは、考えすぎて全く関係のないかもしれない気になる部分をまとめておきたい。
・テントウ虫のキーホルダー
一番の謎がこれだ。一体いつ、誰が落としたものなのだろうか。
・谷原と浅見が証拠隠滅の為に捨てた血
車に乗って崖から落ちたはずの広沢の血が、崖の上にあったことは不自然。広沢のものではないのだろうか?
・集団窃盗団
ラジオで何度も流れていた集団窃盗団も何か関係があるだろう。第2話の回想で、カギを取りに行った際に事務所ですれ違った高身長の男がいた。その男と、今話で小笠原(武田鉄矢)が後を付けていたチンピラのような若者の一人は、どことなく似ている。
・車のカギ
雪にハマって動けなくなった車のカギを浅見は「差しっぱなしだったかも」と言っている。広沢が向かった時には、すでに車が盗まれていた可能性はけっこう高い。
・谷原の事故現場到着の告白がない
旅行メンバーの4人は、知っている事を全部話したように見えるが、実は谷原だけ、事故現場に到着したときの描写がしっかりとは描かれていない。さらに第3話で、深瀬の「俺も広沢と一緒に行けば良かった」という発言に対して、谷原は「そしたらお前も死んでたよ」と言っていたのも気になる。
・川本(夏菜)の証言
学生時代に付き合っていたという川本は、広沢に対して「今思い返しても腹が立つ」と証言している。気を遣いすぎて、かえって人に迷惑をかけているという事からの発言だが、タイトルの「リバース」の裏表という意味でも、もしかしたら広沢の性格の悪さが招いた事件なのかもしれない。
・広沢の卒業後の進路
広沢はボランティア関係で海外に行きたいと発言しているが、誰も行き先を知らない。また、それとキーホルダーがNPOのものなのも関係しそうだ。
・高原ハチミツの出どころ
それほど大量生産されていないはずの高原ハチミツ。それをクローバーコーヒーのマスター・乾(バッファロー吾郎A)が偶然同じ物を持っているのは少し気になる。長野のNPOに何かしらの関係がある人物なのかもしれない。犯人だったら一番イヤだ。
総合しても全然真実は想像出来ないのだが、おそらくこれらがどうにかなって、ラストを迎えるのだろう。バッドエンドか、それともいくぶんマシなバッドエンドか、ギリギリまで予想して最終回を待ちたい。
(沢野奈津夫@HEW イラスト/Morimori no moRi)