スリルを背負うことが好きで仕方ないギャンブル狂少女・蛇喰夢子(じゃばみ・ゆめこ)の物語。

生爪デスマッチ
初勝負に勝って話題の人物となった夢子。彼女にちょっかいを出してきたのは、生徒会役員の皇伊月。玩具メーカーの令嬢だ。
彼女が提案してきたのは、ダブル神経衰弱。2つのデッキのトランプを使用し、マークも数字も同じものを開くという難しいゲーム。掛け金は2000万。
一回目は皇の勝利。夢子が泣きの二戦目を申し出た所、皇は「夢子の生爪をもらう」とムチャな賭けを言い出す。
ところが夢子は、イカサマを見破ってあっさり1ターンで勝利。もう一戦、双方の生爪をかけようと持ちかける夢子に詰め寄られ、皇は泣き崩れた。
なお、序盤で借金を抱えていじめられていた芽亜里は、ラストシーンでまたボロクソに負けている。トラブルに巻き込まれると輝く芽亜里への、スタッフの偏愛を感じます。
夢子の人並み外れすぎた才能
一話は、圧倒的不利な芽亜里戦で、夢子の鋭い考察力を表現した。
二話は、夢子の人間離れした能力を描いた回だ。
104枚(トランプ2デッキ)を、マークと数字全部覚える神経衰弱。
皇のイカサマを見破ったとはいえ、裏面にある模様を3分位内に全部把握して二戦目に活かす、というのは人間技じゃない。
皇がイカサマの52枚のマーク全部記憶しているのも、相当なもんだけど。
『賭ケグルイ』は、勝負師同士の腹の探り合いやハッタリ合戦は多く描かれるものの、それほど人外級の能力合戦は出てこない。
おそらく2話のこの試合が、夢子の飛び抜けた能力を見ることができる一番のパートだ。
後に原作では「ひもを切ればギロチンが落ちて指が飛ぶ」という、頭を何も使わない試合も出て来る。こちらも同じように夢子はニコニコワクワク。
夢子にとって「ゲームの難易度・難解さ」は、別にどうだっていいらしい。
どこまでがハッタリなの?
原作では「借金を負わせた挙句、爪を賭けさせる女がいる」という噂がたっている。
アニメではその話はカット。一方で皇は妙に煽り、「私ヤバイですよ」感を出している。
ネイルに対する偏執というよりは、『キン肉マン』のネプチューンマンのマスク狩り的な、ファッションギャンブラーたちへの力誇示行動に近そう。

イカサマのあるダブル神経衰弱は、「先攻になれば勝ち」という、ギャンブルでもなんでもない試合に成り下がっている。
つまり、皇が夢子を完封することもできるのだ。それで負けても、夢子は文句を言わなかっただろう。
皇が「相手の爪をはぐ」ほどのヤバいギャンブル狂だと思ったのに。単に安全地帯であぐらをかく、自己顕示欲の塊だった。
「私は絶対に勝つ勝負も、絶対に負ける勝負も嫌いなんです」。
皇は「絶対勝てる勝負」以外には挑まない。おかしなことではない。
けれどもそれは、夢子の求める「不確定な賭け事の快楽」からは大きく外れる思考だった。
こいつらは何を賭けているんだ
身体に関わる暴力的なギャンブルは後にも出て来るが、多くはない。性的な賭けはほとんどない(妄だけは特殊性癖なので別枠)。
ただし一般生徒の間では、借金が払えない家畜生徒への暴行は実在する。
要は、生徒会を始めとしたトッププレイヤーたちは、性・身体程度には、賭けるだけの意味を見出してはいない、ということだ。
生徒会レベルだと「儲けたい」「一時的に満足したい」人は、多分いない。
彼女たちのギャンブルは、プライド、人生、信頼、権力など、お金で買えないものを長い目で入手するため。あるいはそういう力を持つものを封殺するため。こうなると、相手を苦しませたり殺したりする程度ではだめだ。
他のメンツと比べると、皇が趣味で生爪を集めている、というのは「並のクレイジー」の枠から出ていない。
なお、皇の出番はまだまだ序の口。
小物として酷い顔で泣いて落ちぶれた彼女、なにもかもかなぐりすてて這い上がってからが熱い。
(たまごまご)