先日、筆者は『まいにち、テニス!』発売を記念して行われたトークイベントに参加してきました。
修造さんのイメージというと、まさに"熱血"。イベントでも熱くなりすぎるあまり暴走し、周りのスタッフが慌てるというような状況になるのでは……と思っていた開始前。
しかしイベントでは、確かに"暴走"することはあるものの、誰よりも会場全体を見渡し、イベントの空気感をコントロールする姿がありました。

例えば、真面目なトークが続き、会場の空気が重くなりつつあるという絶妙なタイミングでボケを挟んだり、観客席や報道陣の反応もしっかりと見ており、時折そちらに会話を振って弄ったり……。
実際は熱くなりつつも、全体をしっかりと見渡す冷静な一面があるのでは?
そんな疑問を修造さん本人にぶつけてきました!
松岡修造、実はネガティブだった
「修造さんは冷静な部分があるのでは?」という疑問に対して、確かにテニスをする上でも、ただ情熱に任せることはしなかったといいます。
「どちらかというと、僕は分析をするタイプなんですよ。そういった意味では冷静なのかもしれませんね。前向きな、天然な人はできるものはできるだろうと、そこまで分析はしない。僕は『こうやって打てばいいんだ』とかを論理的に言葉として、指導するなかでも説明しようと思っているんです」
今回のイベントでも、「このカレンダーはポジティブな人が書ける内容ではない。僕は元々ネガティブ、後ろ向きな性格。そんな自分が壁に当たったとき、考えていった言葉が入ってる」と話したように、『まいにち、テニス』は、そういった修造さんの性格から生まれたそう。
「自分を分析することで、『まいにち、テニス!』というのはできたんだと思うし。自分が前に進むために、文章化してちゃんと自分に置き換えて、自分の理解できる言葉にしてきたわけです」
元々はネガティブだからこそ、前向きになるためには何をすべきか、しっかり言語化して考える……。
今回の日めくりでも飛び出している修造さんの熱すぎる"名言"の数々は、自分自身に向きあい、しっかりと考え込まれて生まれたものだったんですね!

スポーツを伝える時に大事にしていることは?
イベントでは、修造さんは「灰になる」ほど、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを全力で応援したいと決意しました。
最近では、世界陸上ロンドンも記憶に新しいですが、修造さんはこういった国際大会について次のように語ります。
「なにが魅力かというと、オリンピックと一緒のレベルにあるわけですよ。昔は世界大会といっても注目されてなかったですが、今はテレビで放送されたりと、注目度が上がってます。そうすると、選手たちの戦い方も全然違って、オリンピックのフィーリングで戦える。2020年に向けてすごく大きな力となるんです」
ところで、最近まで行われていた世界陸上といえば、MCの織田裕二さんの熱さが話題になることもしばしば。「スポーツを熱く伝える」という点では共通点がありますが、修造さんは「あんまり人を意識することはない」といいます。
それでは、修造さんがスポーツを伝えるうえで、大事にしていることは何なのでしょうか。
「やっぱり伝えるというのは、ひとつのテクニックでもあると思うんですよ。なぜなら僕が一般視聴者の代表として伝えてるわけですから、僕の盛り上がり方がその番組の伝え方になるんですよ。もちろん生で見てると自然な感情も出ますよ。でも自分の中で、ディレクターと話して、この試合はどういう伝え方がいいんだろうと。そこが一番大事なところかな」
熱すぎる応援がフィーチャーされがちな修造さん。
松岡修造が教える集中力アップ術
さて、ここからは若手社会人へのアドバイスもお聞きしました。

テニスでも仕事でも、集中力はとても重要な要素。メンタルの重要さを度々言及している修造さんですが、集中力を高めるための方法はあるのでしょうか。
「集中しよう、集中しようと思えば思うほど、集中できないわけですよ。なぜなら集中してる時というのは、もっとも余計な雑念がない時なんですよね。じゃあ何をすればいいのかというと、『今、目の前で起きてるものに対してだけ、注目していく』ということ。この力が加わると、本当の集中というのは出来上がっていくわけです」
今年の全仏テニス準々決勝でアンディ・マレーに敗れた錦織圭選手に対して、「集中力がなかった」と指摘していましたが、錦織選手が集中力を切らせてしまった原因も、余計な雑念が入ってしまったためのようです。
「錦織選手もなぜマレー戦で集中できなくなったかというと、すごくリードしていた(第一セットを6―2で先取)ことで、もっとやってみようとか、『勝てるんじゃないか』という欲とか、いろんな要素が入っちゃった。それが集中力を妨げたということですね」

松岡修造が考える真の「グローバルな人間」
そして若い時から海外を舞台で活躍してきた修造さん。「修造チャレンジ」でジュニアの選手相手に世界の厳しさを語る場面も印象的です。
スポーツだけではなく、あらゆる分野でグローバル化が進んでいますが、やはり日本人はどんどん世界を目指すべきなのでしょうか。
「テニスに関して言うと、No.1を目指すなら、環境面の違いなどから、世界に出ざるを得ないですね。
必ずしも世界に出なくても良いと考える修造さん、真意を次のように語ります。
「日本で出来ることはしないといけないんですよね。まずは日本の文化というのを知るべきじゃないかなと。それから海外に出れば、日本の良さも世界の良さも含めた、本当の意味でのインターナショナルな人間になれると思ってます」
真の「グローバルな人間」になるためには、世界だけではなく日本のこともよく知らなければならない……。世界の厳しさを知りつくした修造さんからのアドバイスでした。
そして最後に、今の若い世代へ伝えたいことをお聞きしました!
「間違いなく僕の時代よりも迷いが多いと思いますね。チョイスする要素が多すぎて、いろいろ迷うような状態。その中で決断するためには、最終的には色んな失敗をしたり、自分自身が本当にしたいことを見つけるしかない。だから自分の心の声を聞く力を持てる人間になってほしいというのが、一番言いたいことです」
