会社の倒産件数は年々減少傾向にある一方、休廃業は高止まりにある。東京商工リサーチの調査では、2016年に休廃業・解散した企業数は2万9,583件(前年比8.2%増)で、倒産件数の3.5倍。
実に、年間4万件近い企業が市場から撤退している。
倒産や休廃業・解散する会社に最後まで付き合う必要はない。20代~30代のビジネスパーソンは将来を見据えて、“泥船会社”からいち早く逃げ、別の会社に転職するのが賢い生き方だ。

「そんなことを言ったってウチの会社が潰れるか分らないよね」という声もある。そこで、会社与信調査のプロである東京商工リサーチ情報本部情報部部長 原田三寛氏に、「どのような会社が倒産、休廃業・解散する可能性があるか」とズバリ聞いた。なお、本文にあげたデータはすべて東京商工リサーチの調査に基づく。
「いまだにPCがWindows XP」は危ない? 東京商工リサーチが教える「倒産する会社の特徴」
東京商工リサーチ情報本部情報部部長の原田三寛氏


社長が高齢化している会社は業績が低迷


まず見るべきは、社長の年齢だ。2016年の全国社長の平均年齢は、61.19歳。世代交代が進まず、高齢化が顕著になった。社長の年齢上昇に伴い業績が悪化する傾向も強まっている。ビジネスモデルの劣化や後継者難などで事業承継が難しい企業は今後の先行きは厳しそうだ。
ちなみに60代以上の社長比率が多い業種TOP3は、不動産業(62.53%)、卸売業(62.17%)、製造業(60.97%)となっている。
「60代から70代が代表をつとめている会社は増収が少なく、赤字が多い傾向にあります。
新規の投資をしないため、生産性が上がらず、連帯保証をおってまで会社の規模を大きくしようという意思が欠けているためです。こうした会社はそのうち休廃業・解散しやすい」(原田氏)
特に、社長の資産や人脈で存続している会社には要注意だ。社長が後継者を示し、周囲も受け入れている場合であれば別だが、後継者不在となると社長の意思でいつでも会社をたたむことができる。
これは就活中の企業選びにも通じる。中小・零細企業を受けるときは、社長の年齢を聞くのもいいかもしれない。


第2の「てるみくらぶ」の悲劇を防ぐためには


50人の新卒内定者が旅行会社「てるみくらぶ」入社を心待ちにしていたとき、2017年3月27日に負債総額151億円を抱えて東京地裁へ破産を申請し、同日、手続き開始決定がおりた。
就活生や社員にとってはまさに天国から地獄へ突き落とされた日でもあった。しかし、一方、「捨てる神があれば拾う神があり」で、その後、内定者に対して他の企業から次々とオファーがあったのは記憶に新しい。
「旅行会社に限らず、許認可が必要な企業はホームページで情報をしっかりと公開しているかがチェックが必要です」(原田氏)

原田氏は、以下の4点をチェックすべきと解説する。
1.ホームページに事業に必要な許認可番号や業績をきちんと公開しているか
2.決済に利用できないクレジット会社はないか
3.過剰に前払いを求めていないか
4.目玉以外の商品も過度に安売りしていないか

同社では、客観的に信用力を示す指標のひとつとして、1~100までの段階で表した「リスクスコア」をユーザーに提供している。てるみくらぶに関しても調査を行なっていたが、ある時から利益を非開示にしたという。協力業者に対する支払い遅延の話などもあり、リスクスコアは2016年9月の時点で最低の「1」になったそうだ。

「業績を非開示にする会社は倒産の可能性があります。
てるみくらぶの事例では2014年から粉飾決算に手を染めていた可能性が強いです。目玉商品が安いのは結構ですが、すべての商品が過剰に安いのは問題です。恐らく、手持ちの現金がすぐにでも欲しかったのでしょう」(原田氏)
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ブラック企業の倒産リスク


厚生労働省は、労働関係法令に違反した企業の一覧(いわゆる「ブラック企業リスト」)を公表している。東京商工リサーチがリストに名を連ねた332社を追跡調査したところ、倒産16社(負債1千万円未満を含む)、休廃業・解散は判明分で2社の合計18社が退場していることがわかった。
「ブラック企業のらく印を押されると、銀行もガバナンスやコンプライアンスの観点から、融資に及び腰になります。特に、小・零細企業でブラック企業リストに載ると倒産のリスクは一気に高まります」(原田氏)

もともと、建設・製造業・サービス業は労働基準法を遵守しない企業が多い。特に、売上高が10億円未満の中小企業は、「法令を守れば会社が倒産する」とうそぶく社長も少なくない。しかし、現在は法令を守らないと逆に倒産リスクが高まる構図になった。今後もブラック企業リストは注視していく必要がありそうだ。
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増加する不適切会計企業にも倒産リスク


2016年に「不適切会計」を開示した上場企業は57社で、2008年以降最多を記録しているが、ここにも倒産のリスクが潜んでいる。不適切会計は、上場企業だけではなく、中小・零細企業にも見受けられる。

「どこの会社でも、トップをはじめとする役員は、中長期的な売上・利益の目標計画を立案します。しかし、計画と現場の実態が大幅にかけ離れている場合があります。原因は、トップと現場のコミュニケーションが不足です。
現場は上司に計画の見直しを進言しますが、上司はトップの意向をくんで、部下を叱咤し、計画を実行するよう指示します。そこで数字を改ざんし粉飾決算となる可能性があります。
決算上の数字はよくても何年も粉飾決算を続けていけば、会社は危機的な状況になるのです。実際それで倒産した事例は多くあります」 (原田氏)

自社を顧みて高圧的なノルマによって不適切な処理が常態化しているようであれば、会社の体力が少ないほど倒産のリスクが高まっているとみるべきだ。本来であれば、経営陣が冷静に自社の動向をチェックし、普段のコミュニケーションを密にすればこうようなことはない。ワンマン経営のありがちな弱点とも言える。
ただし、大企業は、第三者委員会の設置などでガバナンスやコンプライアンスがしっかりしているため、倒産のリスクはより少なくなるが、問題は中小・零細企業。風通しが良くない会社は、一度、会社の体制を見直した方が良いというのが原田氏の見立てだ。


民事再生後の会社の生存率は約30%


もし会社が民事再生法を適用したら、社員はどのような道を歩めば良いのか。
本来であれば、民事再生法の適用以前に“泥船会社”から逃げるのがベストだが、さまざまな理由で会社に残る人もいる。ただし、適用企業のその後は極めてシビアだ。
調査によると民事再生法適用企業の生存率は29.1%。7割の企業が消滅している。

「民事再生適用企業は同一法人体として残るのは極めて困難。まだM&Aで吸収合併されればいい方ですね」(原田氏)

会社が民事再生を申請したときは、極めて厳しい現実に直面する。「残るべきか辞めるべきか」の二択を突きつけられるが、このデータを参考にして、別の企業を探す方が良いと考えられる。
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いまだにWindows XPを使っているのは倒産の予兆?


「会社の信用調査をしていると、2年前はガラスのテーブルが綺麗であったのに、倒産する半年前は指紋だらけになり、細かいところに管理が行き届いていないところもありました。
今までしっかりしていたのにほころびが出でくるのも見逃してはいけません。人の出入りが激しく、取引先が次々と変わっていくのも倒産の予兆と言えます。特に財務担当者がコロコロ変わっていくのも注意すべきです。笑い話ですが、未だにWindows XPを使っているところは、システム運用上の変更が難しい場合を除いて投資する余力がないと受け止めています」(原田氏)

信用調査のプロである同氏によれば、倒産の予兆はさまざまあるという。調査員はそれを見抜く眼力が求められる。

プロの調査員の能力を得ることは出来ないが、倒産や、休廃業、解散した企業の事例に基づいて自社を観察していけば、その後の会社に「残るか」「転職すべきか」、道を選択することが可能だ。
(長井雄一朗)
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