同ツアーは8月2日に発売されたニューアルバム『VIOLINISM III』を携えて行なわれる。そしてこのアルバムは2002年にリリースされた『VIOLINISM II』以来15年振りとなる、フル・アコースティック・サウンドの限界に挑戦した意欲作である。メンバーは天野清継(ギター)、榊原大(ピアノ)、柏木広樹(チェロ)、西嶋徹(コントラバス)、そして葉加瀬太郎(ヴァイオリン)という前作と同じ構成。このレコーディング・メンバーで、コンサート・ツアーも行われる。それぞれが円熟の域に達した葉加瀬と4人の旧友との再会が注目されるところだ。
そんな名手5人が一同に集まり、同じくHATSレーベルの盟友、鳥山雄司プロデュースのもと合宿で練り上げレコーディングされた渾身のサウンドを、今度はコンサートでエンタテインメントとして再構築するのである。そこで一役買っているのが映画監督であり演出家の堤幸彦。葉加瀬太郎のアイデアをもとに北イタリアの架空の街、クレルモンナーラを想定し、オープニングで上映する映像を制作した。メンバー全員のキャラクターもそこで設定され、これまた念入りに作られた舞台セットに映像そのままの姿で登場する。コンサートの出だしからもう、楽しいことこの上ない。そして、ステージにおける演劇性をさらに高めていたのがパーカッション奏者である仙道さおり。今回、タップやパントマイムを演じる舞台女優としても活躍した彼女の存在は大きい。
さて、コンサートはフォーレの「ドリーの子守唄」とショパンの「華麗なる大円舞曲」、ニューアルバムの冒頭を飾るこの2曲でスタート。さすがアコースティック楽器の名手たち。楽器から出る音が芳醇な響きを持っている。葉加瀬の軽快なMCを挟みながらコンサートは進行し、ラヴェル、ラフマニノフ、ブラームスらの楽曲、葉加瀬のオリジナルなどニューアルバム『VIOLINISM III』からの曲を次々に披露して第1部を終了。
20分の休憩を挟み、今度は全員がステージ前面に腰掛け、さらにアンプラグドな雰囲気で第2部がスタート。葉加瀬のヴァイオリン、メンバーのフィドル、マンドリン、ピアニカ、グロッケン、ウクレレ、そして仙道のカホンも加わり、アットホームな雰囲気で「おおスザンナ~ひまわり」、さらに9月13日にHATSレーベルより発売されたばかりの仙道さおりのニューアルバム『Saoli's Recipe』から「Road of Happiness」を披露。
そして舞台が元に戻り、同じく9月13日に発売されたばかりの柏木広樹のニューアルバム『TODAY for TOMORROW』から「Reminiscence」が演奏される。仙道も柏木も、さすが同じレーベル・メイトのサウンドだ。15周年を迎えたHATSレーベルが70年代のECM、80年代のウインダムヒルと同様にそのレーベル名を聞いただけでイメージできる、共通の音楽性を有していることが分かる。さらにスポンサーである日医工のイメージソングで葉加瀬のオリジナル「WITH ONE WISH」へと曲は進む。
インターミッション的に挟み込まれる映像タイムも程よいアクセントになっていた。中でも葉加瀬出演の「ふれあい散歩道」が等身大の葉加瀬太郎を垣間見れるようで良い味を出していた。
さあ、コンサートも終盤になり、いよいよこの日のクライマックスへ差し掛かる。軽快に盛り上がるニューアルバムからの「アナザー・デイ・オブ・サン」、そして最後はやはりこの曲「情熱大陸」。恒例、メンバー全員のソロ回しはコンサートのハイライトでもある。客席には新しいコンサート・グッズ、“ハカシェイカー” やニュー・タイプの “ハカセンス” も普及し、大いに盛り上がっていた。さらにこの曲の中盤ではメンバー全員によるスネアのマーチングという見せ場が会場をさらにヒートアップさせる。この曲「情熱大陸」では、毎年いろいろな趣向が凝らされた展開が話題となるが、今年の演出もなかなか凄い。
メンバー全員の高い演奏能力でじっくり聴かせる要素はもちろん、お祭りとして楽しめることにもこだわったコンサート。たとえクラシック音楽に詳しくなくても、だれもがポピュラー音楽という共通の領域で楽しめる。これが葉加瀬太郎の音楽だ。コンサートのエンディングで思い切り騒いだあと、アンコールはニューアルバムに収録された美しいメロディの「ドリーム」。この曲を聴いて、穏やかな余韻で帰路につく。やっぱり音楽っていいな、と納得できる贅沢な時間であった。
全国50公演にもおよぶこのツアー、葉加瀬太郎は年末まで全力で駆け抜ける。葉加瀬をはじめメンバー全員が奏でる素晴らしい演奏と音色、軽快なトーク、そしてなりきり度満点の舞台演出。この比類なき葉加瀬太郎流のエンタテインメントをぜひ体験してみては?
≪ツアー情報≫
【葉加瀬太郎コンサートツアー2017「VIOLINISM III」】
2017年9月16日(土)群馬 ベイシア文化ホール(群馬県民会館)
2017年9月17日(日)富山 富山オーバード・ホール
2017年9月20日(水)東京 Bunkamura オーチャードホール
2017年9月21日(木)東京 Bunkamura オーチャードホール
2017年9月23日(土・祝) 三重 三重県文化会館 大ホール
2017年9月24日(日)岐阜 長良川国際会議場メインホール
2017年9月26日(火)茨城 茨城県立県民文化センター 大ホール
2017年9月30日(土)秋田 秋田県民会館
2017年10月1日(日)青森 リンクステーションホール青森
2017年10月3日(火)宮城 東京エレクトロンホール宮城
2017年10月7日(土)京都 ロームシアター京都 メインホール(旧京都会館)
2017年10月8日(日)大阪 フェスティバルホール
2017年10月9日(月・祝)大阪 フェスティバルホール
2017年10月13日(金)石川 本多の森ホール
2017年10月14日(土)長野 ホクト文化ホール(長野県県民文化会館)
2017年10月19日(木)大分 大分・iichiko グランシアタ
2017年10月21日(土)宮崎 宮崎市民文化ホール
2017年10月22日(日)鹿児島 鹿児島市民文化ホール 第1ホール
2017年10月28日(土)千葉 市川市文化会館
2017年10月29日(日)静岡 静岡市民文化会館 大ホール
2017年10月31日(火)東京 Bunkamura オーチャードホール
2017年11月1日(水)東京 Bunkamura オーチャードホール
2017年11月3日(金・祝)愛媛 松山市民会館 大ホール
2017年11月5日(日)香川 サンポートホール高松 大ホール
2017年11月9日(木)岡山 倉敷市民会館
2017年11月11日(土)和歌山 和歌山県民文化会館 大ホール
2017年11月12日(日)山口 周南市文化会館
2017年11月17日(金)広島 広島文化学園 HBGホール
2017年11月19日(日)兵庫 神戸国際会館こくさいホール
2017年11月21日(火)新潟 新潟県民会館
2017年11月23日(木・祝)埼玉 大宮ソニックシティ 大ホール
2017年11月24日(金)山梨 コラニー文化ホール 大ホール
2017年11月26日(日)栃木 宇都宮市文化会館 大ホール
2017年11月28日(火)神奈川 相模女子大学グリーンホール 大ホール
2017年11月29日(水)福島 會津風雅堂
2017年12月1日(金)北海道 帯広市民文化ホール
2017年12月3日(日)北海道 ニトリ文化ホール
2017年12月6日(水)大阪 フェスティバルホール
2017年12月7日(木)奈良 なら100年会館 大ホール
2017年12月10日(日)沖縄 沖縄コンベンション劇場
2017年12月16日(土)東京 NHK ホール
2017年12月17日(日)東京 NHK ホール
2017年12月20日(水)愛知 愛知県芸術劇場大ホール
2017年12月21日(木)愛知 愛知県芸術劇場大ホール
2017年12月22日(金)愛知 愛知県芸術劇場大ホール
2017年12月24日(日)長崎 長崎ブリックホール
2017年12月25日(月)福岡 福岡シンフォニーホール(アクロス福岡)
2017年12月27日(水)東京 国際フォーラムA
2017年12月25日(月)大阪 大阪国際会議場 グランキューブ大阪メインホール
■葉加瀬太郎 オフィシャルサイト