単独ライブとしては東北でこの日が80本目、宮城では36本目という影アナが流れ、ライブへの期待が高まる中、客電が落ち、サーチライトが幾重にも重なり眩すぎるほどの光がステージと客席に向け放たれた。ファンは早くも総立ちだ。光に包まれメンバーが登場すると大歓声が沸き起こり、会場の内の空気が変わった。オープニングナンバーは2016年に発売されたアルバムのタイトルチューン「醒めない」だ。<まだまだ醒めない アタマん中で ロック大陸の物語が/最初ガーンとなったあのメモリーに 今も温められている/さらに育てるつもり”という4人の変わらない想い、強い意志表示ともとれるフレーズが印象的なこの曲を、30周年記念ツアーの1曲目に選んだことが、このツアーの意味をあらわしている。草野が「30年前に変なことをやろうと思ってバンドを組んで、いまだに変なことをやっていて、そういうバンドを観に来るあなた達が一番変です」と、嬉しそうに語ると、客席からは笑いと大きな拍手が起きた。
聴き手の心の中に存在する、終わることのないそれぞれの“青春”物語を瞬時に露わにさせる、草野の“魔法”の声、ボーカル、その歌に寄り添うように、時に導くように弾く三輪のギター、雄弁かつ豪快さと繊細さを感じさせてくれるプレイで、スピッツの音をまさに支えるリズム隊、崎山のドラムと、田村のベースが心に響く。
そんな強固なバンドアンサンブルから放たれる、老若男女誰もが口ずさめる「涙がキラリ☆」「君が思い出になる前に」「チェリー」「ロビンソン」などのヒットシングルの他にも、「楓」「スターゲイザー」「ヘビーメロウ」など新旧の名曲がまさに星のごとく並ぶセットリストに、イントロが始まる度に客席からはため息が漏れていた。さらに「惑星のかけら」「メモリーズ・カスタム」「けもの道」などの、彼らの卓越した演奏力をより感じる事ができるハードロックナンバーも、しっかりと聴かせてくれた。このロックスピリットこそが、スピッツがスピッツたる所以だ。時に優しくて切ないメロディを歌い、時に強く猛々しいサウンドで情熱を伝え、キャリア30年のバンドとして生々しい姿を、25曲の楽曲を通して、いい意味で曝け出していたように感じた。
ライブは熱さを増していく一方だが、メンバー紹介の時の、一人ひとりのゆるいトークも、それぞれの人柄が滲み出ていて、これもスピッツのライブの楽しみのひとつだ。笑わせ、曲で感動させ、このメリハリが病みつきになる。「俺のすべて」ではステージ袖のスタッフも全員両手を突き上げ、盛り上がっている姿が感動的だった。スタッフを愛し、愛され、だから1本1本が素晴らしいライブになり、それが客席にも伝わるのだ。スピッツの音楽の、ライブの虜になる人は、若い層にもどんどん広がっている。
草野はこの日集まってくれたファンに感謝の言葉を贈りつつ「こんな僕らが30年間なぜ残ることができたのか、いいのかな?と思ったけど、役割を与えられてるということだと思うので、引退しません!」と、バンドが40年、50年続いていくことを高らかに宣言し、大きな拍手を浴びていた。
(取材・文/田中久勝)
≪リリース情報≫
■Live DVD / Blu-ray
『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』
2017.12.27リリース
※2017年8月24日@横浜アリーナ公演を収録した映像商品。
<デラックスエディション-完全数量限定生産盤->
【Blu-ray】2BD+2CD
UPXH-9024 / ¥15,000(税込)
【DVD】2DVD+2CD
UPBH-9548 / ¥14,000(税込)
<通常盤>
【Blu-ray】BD
UPXH-1058 / ¥7,980(税込)
【DVD】DVD
UPBH-1448 / ¥6,980(税込)
■6枚組アナログ盤
『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』(6枚組アナログ盤)
2017.12.27リリース
UPJH-9053~58 / ¥16,200(税込)
※完全受注限定生産商品。2017年7月5日に発売された『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』をアナログ化。6枚組豪華BOX仕様(ハードケース&重量盤)で登場
■SPITZ オフィシャルサイト