スピッツの結成30周年記念ツアー『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』の最終公演が1日、宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)で行われ、前日と合わせ18,000人のファンが30周年を祝福するともに、名曲の数々に酔いしれた。このツアーは7月1日静岡・エコパアリーナを皮切りに、日本武道館3days、横浜アリーナ2days、を含む、全国11か所で22公演行い、草野マサムネ(Vo)、三輪テツヤ(Gt)、田村明浩(Ba)、崎山(Dr)が全員50歳という節目を迎えた年のツアーを完走した。


単独ライブとしては東北でこの日が80本目、宮城では36本目という影アナが流れ、ライブへの期待が高まる中、客電が落ち、サーチライトが幾重にも重なり眩すぎるほどの光がステージと客席に向け放たれた。ファンは早くも総立ちだ。光に包まれメンバーが登場すると大歓声が沸き起こり、会場の内の空気が変わった。オープニングナンバーは2016年に発売されたアルバムのタイトルチューン「醒めない」だ。<まだまだ醒めない アタマん中で ロック大陸の物語が/最初ガーンとなったあのメモリーに 今も温められている/さらに育てるつもり”という4人の変わらない想い、強い意志表示ともとれるフレーズが印象的なこの曲を、30周年記念ツアーの1曲目に選んだことが、このツアーの意味をあらわしている。草野が「30年前に変なことをやろうと思ってバンドを組んで、いまだに変なことをやっていて、そういうバンドを観に来るあなた達が一番変です」と、嬉しそうに語ると、客席からは笑いと大きな拍手が起きた。
スピッツに出会えたこと、スピッツの音楽が人生に潤いを与えてくれたことに、そこにいた全ての人が感謝していることが伝わってくる拍手だった。

聴き手の心の中に存在する、終わることのないそれぞれの“青春”物語を瞬時に露わにさせる、草野の“魔法”の声、ボーカル、その歌に寄り添うように、時に導くように弾く三輪のギター、雄弁かつ豪快さと繊細さを感じさせてくれるプレイで、スピッツの音をまさに支えるリズム隊、崎山のドラムと、田村のベースが心に響く。

そんな強固なバンドアンサンブルから放たれる、老若男女誰もが口ずさめる「涙がキラリ☆」「君が思い出になる前に」「チェリー」「ロビンソン」などのヒットシングルの他にも、「楓」「スターゲイザー」「ヘビーメロウ」など新旧の名曲がまさに星のごとく並ぶセットリストに、イントロが始まる度に客席からはため息が漏れていた。さらに「惑星のかけら」「メモリーズ・カスタム」「けもの道」などの、彼らの卓越した演奏力をより感じる事ができるハードロックナンバーも、しっかりと聴かせてくれた。このロックスピリットこそが、スピッツがスピッツたる所以だ。時に優しくて切ないメロディを歌い、時に強く猛々しいサウンドで情熱を伝え、キャリア30年のバンドとして生々しい姿を、25曲の楽曲を通して、いい意味で曝け出していたように感じた。


ライブは熱さを増していく一方だが、メンバー紹介の時の、一人ひとりのゆるいトークも、それぞれの人柄が滲み出ていて、これもスピッツのライブの楽しみのひとつだ。笑わせ、曲で感動させ、このメリハリが病みつきになる。「俺のすべて」ではステージ袖のスタッフも全員両手を突き上げ、盛り上がっている姿が感動的だった。スタッフを愛し、愛され、だから1本1本が素晴らしいライブになり、それが客席にも伝わるのだ。スピッツの音楽の、ライブの虜になる人は、若い層にもどんどん広がっている。

草野はこの日集まってくれたファンに感謝の言葉を贈りつつ「こんな僕らが30年間なぜ残ることができたのか、いいのかな?と思ったけど、役割を与えられてるということだと思うので、引退しません!」と、バンドが40年、50年続いていくことを高らかに宣言し、大きな拍手を浴びていた。
世代、男女を問わず、一人ひとりの記憶と思い出に寄り添い、時代を超えて愛され続ける音楽を、ひたむきに作り続けてきたアーティストしか辿り着けない、30年という到達点。4人の目には、この到達点から見える風景はどう映っていたのだろうか。それはアンコールの最後に選んだ「スパイダー」の<だからもっと遠くまで君を奪って逃げるラララ 千の夜を飛び越えて走り続ける>という言葉にこめられているのではないだろうか。“永遠のロック少年”4人とファンが、何があっても走り続けるということを、お互いに確認できた、30周年記念ツアーだった。スピッツという稀代のロックバンドはまだまだ進化し、その旅はまだまだ続くと確信させてくれた、ツアーファイナルだった。
(取材・文/田中久勝)

≪リリース情報≫
■Live DVD / Blu-ray
『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』
2017.12.27リリース
※2017年8月24日@横浜アリーナ公演を収録した映像商品。
「ヘビーメロウ」「歌ウサギ」「1987→」の新曲3曲に加え、レア曲「波のり」を初のライブ映像化。【デラックスエディション-完全数量限定生産盤-】には、別日収録の「ハチの針」「恋のうた」を加えたライブCD2枚、スピッツ結成30年の軌跡を振り返ることができる貴重な映像DISC、100ページにおよぶ豪華写真集などが付属。さらに、結成当時に配布されたステッカーの復刻版を封入

<デラックスエディション-完全数量限定生産盤->
【Blu-ray】2BD+2CD
UPXH-9024 / ¥15,000(税込)
【DVD】2DVD+2CD
UPBH-9548 / ¥14,000(税込)
<通常盤>
【Blu-ray】BD
UPXH-1058 / ¥7,980(税込)
【DVD】DVD
UPBH-1448 / ¥6,980(税込)

■6枚組アナログ盤
『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』(6枚組アナログ盤)
2017.12.27リリース
UPJH-9053~58 / ¥16,200(税込)
※完全受注限定生産商品。2017年7月5日に発売された『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』をアナログ化。6枚組豪華BOX仕様(ハードケース&重量盤)で登場

■SPITZ オフィシャルサイト