
「イクメン」という言葉に、男性はどんなイメージを持つでしょうか? 「育児に積極的に参加する男」や「育児していることを周りにアピールする男」などなど、個々人によってイメージは異なるでしょう。
実は先日、男の“エセイクメン”ぶりを非難したつぶやきが、女性の共感を呼び話題になりました。
つぶやきは、イクメンを自称する不倫ワンチャン狙いの男性を、口説かれている独身女性が一刀両断するストーリーの漫画とともに発せられました。ツイートした女性は、「“自称”イクメン・愛妻家にろくな奴はいないという典型的な見本」と称し、女性から共感を呼んだようです。
イクメンという言葉が広まり始めたは、2010年。男性の積極的な育児参加や育児休業取得の促進を目的として、国が主導してPRをしました。現在ではその甲斐あって、イクメンという言葉は定着し、男性の家事育児への参画も年々増加傾向にあります。
一方で、いまだに「イクメン」という言葉の持つ特別感を、育児の実態が伴わないのにことさら強調する男性もいるため、女性からの批判的な声が集まってしまう現実もあります。
まったく面倒を見ないのに子育てアピールをするような人は言語道断として、イクメンという言葉に批判が集まるのには、男性と女性の「イクメン」の基準に、ギャップがあるからではと思うのです。
自称イクメンを生み出しかねない男女のギャップ
今回執筆にあたり、子を持つママたちに話を聞くと、夫の育児への不満には、いくつか共通点がありました。この男女のギャップが、「イクメン=家事育児をやってくれる人」という本来の意味に対する不満にもつながっていると思うので、ご紹介していきます。
●育児は指示待ち! でもやっていると主張
育児や家事をやっている男性の中には、「妻に頼まれないと動けないタイプ」と「言われる前に自分から動くタイプ」の2タイプがいます。ママたちに言わせると、クオリティは別問題として、前者はイクメンとは言い切れず、放っておくと何もしないので、イライラすることもあるといいます(もちろんやらないよりかは良いですが)。
「子どもの保育園の迎えには、頼めば行ってくれるけど、自分から「行くよ」という提案はほとんどありません。時間はわかっているはずなのに、たまには自分から言って欲しいし、指示待ちされるとうんざりする」(34歳・二児のママ)
しかし男性の多くは、過程よりも結果を重視する生き物ですから、頼まれて動こうが自分から動こうが、育児をやったという結果はあるので、「自分はやれている!」という主張になり、ママとのギャップを生んでいるかもしれません。
●タイミングを逃すと、やっているうちに入らない!?
結果と過程から生まれるもう1つのギャップが、家事・育児のタイミングの問題です。たとえば「お皿洗っておいて」と女性から頼まれたとき、女性は「今すぐ洗って欲しい」という希望を出しています。しかし男性はだいたい「後でやる」など、今すぐ女性の希望を叶えません。
ありがちなシチュエーションかもしれませんが、この場合、結果的に皿洗いを男性がしたとしても、女性の中では希望を叶えていることにはなっておらず、イライラをつのらせていることもしばしば。
しかし男性側には、やっぱり「お皿を洗った」という意識があるので、やっている!やっていない!というギャップが生まれてしまうのです。
「私が何かしているから、今別のことをあなたにやって欲しくて頼むのに、大体が『このテレビ終わったら』とか後回しにしてばっかり。後でやってドヤ顔されても、頼んだ時にやってたら余った時間で別のことができるじゃん!って思ってしまう」(30歳・一児のママ)
指示待ちなうえ、指示を受けても今すぐやらない。イラつく気持ちはわかりますが、これって子がいてもいなくても起きている問題かもしれませんね。
自称イクメンと自称サバサバ女が似ている問題
全てとはいいませんが、上記のようなギャップがある上で「俺は育児をやっている」と主張したり、はたまた「愛娘が生活の中心です」と周りにアピールしていると「娘が中心とか言いながら、自分が観たいテレビを見終わってからじゃないと、家のことはやらないくせに!」なんて、不満が出るはめになります。
自称イクメンが生まれる図式、恐ろしいですね。
ちなみにイクメンの話を聞いたとき、筆者は「サバサバ女」を自称する話と、似たギャップを感じました。サバサバ女とは言葉の通り、自分で自分の性格はサバサバ(あっさり)していて、女の嫌な部分を持ち合わせていないと主張する女性のことです。
しかしよく考えれば、人の性格を判断するのは他人なのに、自称してしまう図々しさがそこにはあります。
イクメンも、家事育児は子を育てる上では義務なのに、「あの人ってイクメンだね!」と言われる前に、自称してしまう図々しさが、多くの女性の違和感を生み出している原因かもしれません。
イクメンという言葉が流行し始めた当時は、育児への参画を促す意味がありました。7年たった今、男性の育児への積極的な関わりは、当たり前になりつつあります。このような時代の変化もとらえられず、「イクメンです」なんて口に出していると、そのうち寒さ満点のパパになってしまうかもしれません。
子育ては戦いといいますが、夫婦が仲睦まじく協力戦ができるよう、日本の家事育児の現状を見守りたいと思います。
(おおしまりえ)