
プラントハンター・西畠清順さんによる『めざせ!世界一のクリスマスツリーPROJECT ~輝け、いのちの樹。~』(以下、『世界一のクリスマスツリーPROJECT』)に批判が殺到している。
クリスマスツリーのため生木をはるばる植樹
『世界一のクリスマスツリーPROJECT』は、ニューヨーク・ロックフェラーセンターの巨大クリスマスツリーを超える、世界一の高さとなる生木を神戸メリケンパークに運んでクリスマスツリーとして立てるもの。富山県氷見市から掘り採られた推定樹齢150年、全長30m、重さ24トンのあすなろの木が、11月17日に植樹された。
巨木には今後、会場やインターネット等で購入できる、メッセージカード型の反射材で出来たオーナメントを取り付けていく。オーナメントの数が5万枚を超えるとギネス記録を達成するということで、「『みんなで作る』世界一のクリスマスツリー」というのをアピールしている。
発起人となった西畠さんは、幕末より150年続く花と植木の卸問屋「花宇」の5代目で、そら植物園株式会社の代表取締役社長。中学生のときに阪神淡路大震災で被災した経験の持ち主でもある。『世界一のクリスマスツリーPROJECT』への支援金を募るクラウドファンディングサイトでは、「阪神淡路大震災を乗り越え、記念すべき開港150年を迎えた今年の神戸から、東北へ、熊本へ、そして世界中へ… 復興と再生のメッセージを届ける」と同プロジェクトの趣旨が説明されている。
イベント後はアクセサリーに加工
しかし、同プロジェクトに対してTwitter上を中心に批判が殺到している。クリスマスツリーに選ばれたあすなろの木は、「周りが山火事にあい、唯一生き延びた縁起のよい樹」と公式にも説明されているもの。「そんな貴重な木をわざわざ違う土地に植樹する必要はあるのか」という旨の指摘がされている。
さらに問題視されているのが、あすなろの木がイベント後、木珠ボウルに加工されるのが決定していること。大手通販会社「フェリシモ」より、あすなろの木を加工した木珠ボウルをあしらったメモリアルバングルが税込3,800円で販売されることが告知されている。そのため一層「木がかわいそう」と感じる人が多いようだ。
一方で、「木がかわいそう」という意見に対する違和感を表明する声も少なくない。そもそも人間の生活は、無数の木々によって支えられている。確かに、木で出来たオシャレなインテリアに囲まれながら西畠さんを批判している人がいるとしたら、それは何か奇妙なものなのではないか。そのように「木がかわいそう」という意見にむしろ人間のエゴを感じる人々も少なくないらしい。
同プロジェクトに注目しているコピーライターの糸井重里さんや、糸井さんが主宰するウェブサイト『ほぼ日刊イトイ新聞』も巻き込んで、ネット上の議論は過熱していく一方だ。
議論もまた狙いのひとつ
西畠さんは植樹式にて、『世界一のクリスマスツリーPROJECT』によって人々の間に議論を巻き起こすことも狙いのひとつだと明言している。世界各国を飛び回り植物を採集するプラントハンターである彼は、きっと知識だけでなく、植物に対する思いも並々ならぬものがあるだろう。その考え方に賛同できるかは一度置いておいて、単なるにぎやかしとして同プロジェクトを発案したわけではないことに間違いはないのかもしれない(西畠さんは、支援金が集まっても自身にとって億単位の赤字が出ることを公言している)。
この話題が単なる炎上に終わらず、“植物と人間の暮らし”に関する有意義な議論へと発展することを願いたい。
(HEW)