人気の「しいたけ占い」とは


はあちゅう、燃え殻、てれびのスキマ・・・と、近ごろは、人名なのかなんなのか、わかりにくい作家が売れる時代のようで、人気の「しいたけ占い」(KADOKAWA)の作家のペンネームは「しいたけ」ときた。
本田翼も驚いた、大人気「しいたけ占い」ってなんだ。SNSでのふるまいも視野に入れた今年の運勢がわかる
『しいたけ占い 12星座の蜜と毒』 しいたけ/KADOKAWA

「しいたけ占い」が人気だと聞いたとき、「どうぶつ占い」のように、松茸、椎茸、えのき、なめこ、マッシュルーム・・・などと、何種類かのきのこにカテゴライズするわけではなく、しいたけだけで、いったいどんな占いを? といぶかしんだものだが、違うのだ。「しいたけ」という占い師による12星座占いだ。

念のため、12星座占いとは、占いのなかではよく知られているほうで、牡羊座、牡牛座、蟹座・・・12の星座にカテゴライズしたもの。「しいたけ占い」では、この12星座のマークは、しいたけと星座のマークがコラボっている。

ペンネームに関して追記すれば、占い師の場合、むかしから、マドモアゼル愛、ルネ・ヴァン・ダール・ワタナベ、錢天牛、ありえ~る・ろどん、鏡リュウジ、水晶玉子・・・等々、神秘的で、ファンタジックなイメージで売っていく人が多い。
その一方で、石井ゆかり、橘さくらなど、名前だけでは職業がわからない占い師もいて(石井ゆかりは、占い師ではない、ライターであると宣言している)、名前もいろいろ、占い方法もいろいろ。前述の「どうぶつ占い」をはじめとして「13星座占い」なんていうのもあった。「六星占星術」「五星三心占い」などなど占術もいろいろ。
わたしたちは、当たる! と聞けば、すぐに飛びつくということを、季節が巡るのと同じように繰り返していく。

いま新たに注目が集まっているのが「しいたけ占い」だ。VOGUE GIRLで連載中の毎週のウェブ占いは当たると好評、2冊目の著書「しいたけ占い 12星座の蜜と毒」も発売された。
帯のコメントは本田翼による「蟹座の“隠れ短気”はひみつって言ったじゃないですか!!」で、心のうちにひみつにしていたことが「しいたけ」の占いによって明るみになったらしい。

「しいたけ占い 12星座の蜜と毒」の中身は


「しいたけ占い 12星座の蜜と毒」は、おなじみの12星座占い(牡羊座、牡牛座、双子座と誕生日によって12種類にワケられる)に則り、それぞれの「基本性格」、「全体運」、「恋愛」「仕事」、「悩み」、「SNS」、「開運ワード」について解説されているほか、2018年の運勢と、しいたけからのメッセージが書かれている。

タイトルの「蜜と毒」は「基本性格」をその2つに分けて説明しているのと、ほかの項目にも、蜜と毒部分を、マーカーで色分けしたふうに、ピンク(蜜部分)とグレー(毒部分)にしてあって、視覚的にもアプローチしてくる。

とりわけ、注目は「SNS」の項目だろう。

しいたけ自身が、ウェブ占いが目下主な活躍の場であり、ブログもTwitterもやっているからこその企画だろうと想像するが、現代人がSNSというツールを活用することにより、新たに抱えざるを得なくなった悩みに注目し、12星座分けにして、各々にアドバイスしている。これまで占いといえば「全体」「仕事」「恋愛」というものが主だったがそこに「SNS」が同列で並ぶのはじつに現代的だ。

ちなみに、わたしは水瓶座で、ふだん現実的な分、「SNS」は「ファンタジー性」を発揮すると書いてあった。そうか、あんまりファンタジー性(詩的な感じ)を出してないから、2018年はポエムぽいつぶやきを増やそうかな。

自分以外の星座のページも役に立つ


占いの本は、12星座に分けて書かれていると、1冊の12分の1しか読むところがなくて、物足りないという気持ちにもなりがちで、一冊一星座の本もよく見かける。だが、「しいたけ占い」は、あなたはこういう人で、今年はこんないいことと悪いことがありますというような実用性よりも、日常、誰もが抱く悩みに対して、原因や解消方法について、読みやすいコトバで書いてあり、ひとの星座のところを読んでも、参考になるし、面白く読める。

例えば、こんな感じ。


“恋愛って甘さを感じ合う側面もありますが、残りの半分は「現実的に伝え合う」という関係の継続なのです”
(山羊座の恋愛運より)

うん、わたしは山羊座じゃないが役に立つ。
むしろ、対人関係に悩んでいるとき、相手の星座部分を読んで、相手の気持ちを知るのに使えそうだ。

しいたけって何者?


なぜ、そういうスタイルなのかと思ったら、この「しいたけ」なる人物は、プロフィールを読むと、哲学を研究していたとあり、なんとなくナットクした。名前だけ見ると、「しいたけ」は、「五星三心占い」のゲッターズ飯田のような、神秘系でもふつう系でもない、おもしろ系の名前にも思えるが、そうではなく、哲学系。なぜ、生きるのか、愛とは何かなど、生きていくうえでぶち当たる問題の本質を突き詰めようという視線があるのだと思う。心理学にも近いのか、読者の深層心理にやさしく迫っていく印象だ。

それゆえか、後半40ページほど(占いは200ページくらい)は、「しいたけの部屋」として、ブログで綴っていたコラムが掲載されている。
テーマは「毒について考えてみた」だ。
そこには「人に嫌われたら」とか「男の人の既読スルーに出合ったら」など、ここにもSNS絡みのことも入っているし、さらに、恋愛の悩みや生きるのに悩んだときなど、さまざまな局面で出会う「毒」について書いてある。

わたしが好きなのは「レタスの悪口を言ってはいけない」というタイトル。これは、以前、タイトルに惹かれてブログで読んだこともあるくらいだ。本文も、レタスの良さの例えに、くすっとなる。しいたけがここで(というか、本全体で)書いているのは、ひとには必ずある「毒」をなくすのではなくて、共に生きようという提案だ。


「しいたけ」というペンネームの由来も、作者のコンプレックスの克服にまつわるものだった。自分の「毒」と共生しようと、コトバでいうのは簡単だけれど、この作者が、些細なことであっても実践しているからこそ、信頼できる。

ハッピーになる色もわかります


占い本も多様で、行動するのにいい日にちと良くない日、良い方角と悪い方角や、幸せになるアイテムなどが書いてある即効性タイプや、あなたはそのままでいい、いいことがある、大丈夫、というような安心をくれるタイプなど、いろいろ。

「しいたけ占い」は、コトバはやさしいけれど理路整然として読みやすい、哲学的な「しいたけ」の語りを読んでいると、いやなことを違う視点で見られるようになって、ちょっとだけ先に進もうという気持ちになる。
新しい年のはじめに、最適な本だ。

そうはいっても、やっぱり速攻系がほしい方には、毎日がハッピーになる色も載っています。

(木俣冬)