画面割れスマホを持つ人が「信用できない」のはなぜか、心理学者に聞いてみた

スマートフォンの画面割れを放置することは、仕事や人間関係に悪影響を及ぼす可能性があるようだ。あるアンケート調査では、「スマホの画面が割れている職場の同僚は信用できない、出世ができなさそう」などと思う人が多くいた。
スマホと仕事がデキるかどうかは別物ではないのか。人はなぜ割れスマホで相手への信用を失うのか、心理学者に聞いてみた。

割れスマホの同僚は悪い印象


富士通コネクテッドテクノロジーズが2018年2月にスマートフォン保持者400人に対して実施した「スマートフォンの画面割れに関するアンケート調査」では、「もし、職場の同僚のスマホの画面が割れているのを見つけたらあなたはその人に対してどのような印象を持ちますか」の問いに対して「出世ができなさそう」が34%でトップに、次いで「仕事ができなさそう」31%、「一緒に仕事をしたくない」24%、「信頼できない」23%という結果になっていた。

画面割れスマホを持つ人が「信用できない」のはなぜか、心理学者に聞いてみた
出典:富士通コネクテッドテクノロジーズ株式会社「スマートフォンの画面割れに関するアンケート調査」2018年2月3日~5日


たかがスマホ画面が割れているだけで、仕事も出世もできず、一緒に仕事をしたくないと思われるどころか信用まで失うとはいったいどういうことか。
そこで日本ビジネス心理学会副会長で心理学者の匠英一氏に、なぜ割れスマホの持ち主は「信用できない」のか聞いてみた。

匠氏が心理分析をした結果、次の3つの要因に分類することができたという。

●「割れスマホ」を持つ人が信用できない心理の3つの要因
1.割ってしまった行動=「あわて者」
相手の割れスマホを見て「なぜ割れたのか?」を考えたときに、その人があわて者のように感じられます。そうしたリスクのある「危ない行動をしがち」な人物は、「仕事のできない人」を連想させてしまいます。リスク意識が低く、自分の行動を適切にコントロールできない、そうなると「出世できない人」といったように評価されてしまうわけです。

2.割れている状態の放置=「面倒くさがり屋」
割れスマホを持ち続けていると、直す手間をかけない面倒くさがり屋とみなされます。また掃除をしていない部屋に住み、散らかっていても整理できず、掃除もしない人間とも重なってきます。そうしたイメージはだらしない人であり、結果として「出世できない人」と連想されてしまいます。

3.割れ部分の修理ができない=「金欠」
割れスマホの修理がいつになってもできないとすると、貧乏な生活を送っているのだと判断されてしまいます。
これは金欠で「お金のない人」のイメージに直結してしまいます。

「割れ窓理論」による心理の働きに関連


匠氏によると、こうした3つの原因を考えると、心理学でよく知られる「割れ窓理論」と関連していることがわかるという。

●「割れ窓理論(Broken Windows Theory)」との関連性
「割れ窓理論」は、「小さな穴がいつか全体に影響して破滅的な結果になる」という現象を説明するものです。犯罪心理学の分野でよく知られるようになりました。具体的には、割れたガラス窓がひとつでもあり、それが放置されたままだと、そのうち他の窓まで割られてしまい、やがてビル全体が荒れ果ててしまう、といった悪循環となるというものです。例えば、私は過去に自転車のかごの中にちらしを丸めたものを入れっぱなしにして駐輪しておいたことがあったのですが、戻って起きたら誰かにかごの中へゴミを捨てられていました。「犯罪は悪い心が在るから起きる」と思うのが一般的な見方ですが、「悪い心がなくても犯罪は起きる」というところに、実はこの「割れ窓理論」の本質があります。

これとまったく同じ原理で、この「割れスマホ」の問題を考えることができるわけです。
つまり、私たちは自分の持ち物を自分の身体の一部のようにみなして使用しているのですが、その一部が「割れた窓」のように傷ついたままになっているため、そこから割れ窓がもっと増えていくとみなされるのです。

「メタファー効果」による心理の働きにも関連


画面割れスマホを持つ人が「信用できない」のはなぜか、心理学者に聞いてみた

そして匠氏は、もう一つ別の心理的な働き「メタファー効果」を考えることでもわかりやすくなると述べる。

●メタファー効果との関連性
これは部分が全体をイメージさせる“比喩的な”イメージを生み出す心理作用も表しており、連想の「メタファー効果」と言います。
“メタファー”は比喩の働きを意味するのですが、人は何かを理解したり解釈したりするときには、別の何かに見立てることでわかりやすくしようとするのです。私たちは意識せずにそのようなメタファーを使ってイメージしているともいえるのです。
そうすると、“持ち物”という部分であっても、“自分”という全体を表すイメージが作られてしまい、その部分の悪い状態がそのまま当人の全体イメージに重なってしまうというわけです。

一方で、この「メタファー効果」はうまく使えば逆によく見られることにもなります。高級車に乗っていれば、それを運転している人も“高級な人”のように思えるといったようにです。つまり、割れや傷一つなく、きれいなスマホを持ち歩いているということは、“仕事も丁寧な人”“実直で信頼できる人”などのメタファーとなり、“いつか必ず出世するだろう”ということまで連想させられる可能性もあるということです。

取材協力
匠英一氏
1990年に東大大学院を経て(株)認知科学研究所を設立。著作は50冊あり、現在デジタルハリウッド大学教授を兼ねてビジネス心理検定の試験普及に従事。
日本ビジネス心理学会

さらに詳しい心理分析を知りたい場合はこちら

参考
富士通コネクテッドテクノロジーズ株式会社
「スマートフォンの画面割れに関するアンケート調査」
【調査対象者】 N=400 【調査期間】 2018 年 2 月 3 日(土)~5 日(月)
・対象者条件 : スマートフォン保有者/男女 /20 代~50 代
・割付条件1 : スマートフォン保有者
・割付条件2 : スマートフォンの画面割れ経験者/未経験者を均一回収
・調査方法 : インターネット


(石原亜香利)
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