今週の週替わり主題歌は、瀧本美織の歌う「ろくでなし」。
言わずと知れた越路吹雪の超・代表曲だが、すんごく印象的な「オーウィ!」の部分も含め、「こんな声出るんだ!」と思うくらい瀧本美織が雰囲気たっぷりに歌い上げていた。
この歌声を本編でももっと聴かせてもらいたいところだが……。

コーちゃんの人生、イージーモードすぎるよ
いい物は持っているのに欲がないせいで、なかなかいい役がもらえていないコーちゃん(瀧本美織)だったが、それでも着実にファンがついているようだ。
特に「マダムキラー」と呼ばれるくらい、おばさまたちからは絶大な人気が。かと思えば、宝塚の後輩たちからもやたらと慕われるという、人たらしっぷり。
実際の越路吹雪も、大きな役についていない頃から妙にファンの数は多かったようだが、やはりにじみ出てしまうカリスマ性があったんだろうか。
このドラマにおいてもその求心力はハンパなく、コーちゃんがいようといまいと、他の登場人物たちの会話で話題に上るのはコーちゃんのことばっかり。
演出家たちがコーちゃんの才能を見抜いてひいきしてしまう……というのはまだ分からなくもないが、同じ歌劇団員までもが「コーちゃんがもっといい役をもらえないものか」と心配しているというのは、優しい世界過ぎるだろう。
女性ばかりの集団なんだからもっとこう、他人を蹴落としたり、才能に嫉妬したり……みたいなドロドロ展開を見たい感じもするのだが。
とにかくみんなのハートをわしづかみにしてしまう、愛されキャラなコーちゃんなのだが、ドラマの主人公として考えると、周りが優しすぎるため大きな困難にもぶつからないし、悩みもしない、なーんかいつものんきに飯食ってるという、ドラマ的な盛り上がりに欠けるキャラクターになってしまっているのだ。
だったらせめて、ステージ上でのあふれるカリスマ性を見せてもらいたいところなのだが、……全然出てこないね、公演のシーン。
「私にまかせろ。瞬く間に勝利を手にし、以前のあの華やかなる宝塚を、あのキラキラと美しい夢の世界を取り戻してみせよう!」
と、コーちゃんが凛々しく語っていたけど、まだ宝塚のキラキラした世界を見せてもらってないよ!
こんなヌルい戦争なら描かなくてもいいんじゃ……
今週は、太平洋戦争が本格化し、戦時色が濃厚となっていく時期が描かれていた。普通のドラマだったら暗〜い展開になりがちなところ。
『越路吹雪物語』でも、宝塚の男性スタッフが次々と徴兵されたり、劇場が閉鎖されたり、みんなで千人針を縫ったりと、戦争ドラマ定番の展開は入れ込んでいたものの、やはりコーちゃんのキャラゆえか、全般的にのんきな感じで描かれている。
宝塚歌劇団と戦争を描いた作品というと、ドラマ『愛と青春の宝塚』や手塚治虫の漫画『紙の砦』あたりが有名どころだが、『越路吹雪物語』と深刻度が全然違うよ!
日本のドラマや映画って、話の中で第二次世界大戦時期を経由する場合は、戦争をキッチリ描かなくてはいけないという風潮があるけれど、とりたてて戦争にまつわるトピックスがない、ドラマ全体のテーマとも関係がない場合は、戦争時期をサクッと飛ばしちゃってもいいと思うのだが……。
なんとなく「戦争って大変」という空気は流れているものの、周りの人たちからしょっちゅう食べ物をもらっていることもあり、イマイチ大変そうに見えないコーちゃんに、今週課された試練は、またしても恋愛!
「たとえどんな時代でも、恋は生まれるものです」
とは言うけど、こんなに恋愛ばっかりしなくても……。
コーちゃんの初主演作の脚本を担当した庄司義男(駿河太郎)が、急速にコーちゃんへの思いをつのらせ、唐突にプロポーズしたところで次週への引きとなっていたのだが、庄司の登場から3日目でのプロポーズということで、まったくコイツに感情移入できていないし、コーちゃんが宝塚歌劇団を辞めて庄司の実家についていくとも思えないし……。
どうせ「何だかんだあって断る」パターンでしょ?
相変わらず八重ちゃんの今後は心配
仕事もプライベートもイマイチ深刻度が高くないコーちゃんなので、どうしても周囲の人たちの動向に目が行ってしまう。
先週、何かと「女のくせに」と言ってくる嫌みな先輩・森継男(崎本大海)に対してブチギレていた岩谷時子(木南晴夏)が、今週は妙に急接近していた。
森ちゃんの「女のくせに」発言の裏には、身体が弱いせいで徴兵検査で丙種合格(実質不合格)となっており、日本男児として失格だというコンプレックスがあったからだということも明かされ、今後のこのふたりの関係が気になってしまう。
次週予告によると、戦況の悪化によりそんな森ちゃんの元へも召集令状が届くようで、嬉しくもあり悲しくもある、複雑な心境が描かれそうだ。
そして、借金を肩代わりしてもらうために満州の金持ちのところへ嫁に行った片桐八重子(市川由衣)は、登場こそなかったものの、ちょいちょい手紙で近況を知らせてくれており、どうやら子どもを出産したようだ。
実家や、奉公先での悲惨な生活と比べれば、満州で豊かな生活をしていそうなのでなによりなのだが、1945年、満州……とくれば、敗戦後の引き揚げというメチャクチャ苦難の道が予想されるわけで……。
つくづく主人公じゃない、周囲の人たちばっかりが苦労を背負うドラマだなと。
『やすらぎの郷』とのリンクに大コーフン!
さて、この帯ドラマ劇場枠を最初から観ていた人は、第1作目の『やすらぎの郷』とのリンクにもコーフンしたんじゃないだろうか。
戦時中の娯楽として映画が盛り上がっていた……と説明する場面で映し出された映画ポスターに、八千草薫が演じていた九条摂子をはじめ、千坂浩二、大村柳次郎といった『やすらぎの郷』ワールドの登場人物たちの名前が!(そういえば八千草薫も宝塚歌劇団OGですね)
戦時中の映画界を引っ張ってきた人たちという設定だったので、時期は合ってるけど、この世界、つながっているのか!
越路吹雪は、黒柳徹子の出世作『夢であいましょう』や『徹子の部屋』にも出演していることだし、『トットちゃん!』とのリンクにも期待してしまう!?
(イラストと文/北村ヂン)
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