ドイツでも賛否が別れる電子たばこ 販売禁止の州も

世界の禁煙の波はドイツにも押し寄せている。そこで注目されているのが新しい形のたばこだ。
加熱式たばこの「アイコス」は大々的に宣伝され、ベルリンでは電子たばこの専門店も増加している。

「電子たばこ」とひと括りにされることのある、これら新しい方式のたばこだが、厳密には違いがある。加熱式たばこはタバコの葉を加熱しその蒸気に含まれるニコチンを吸うタイプのタバコで、電子たばこは液体を加熱し蒸気を吸い込む作りになっている。

どちらもドイツで売られているが、ドイツでは電子たばこが目立っている。例えば「IQOS(アイコス)」が大々的な広告を出す一方で、加熱式たばこは実際の売り場ではそれほど目立っていない。日本で人気を得ている「glo(グロー)」や「Ploom TECH(プルーム・テック)」もドイツの店舗では見当たらない。ただし、ドイツでは特定のブランドの電子たばこに人気が集中するわけではない。街中の電子たばこ特設店の店員によると、ブランドで決めるというよりは「車と一緒で性能と自分の好みの兼ね合い」で買う人が多いという。

さてこの電子たばこ、新しいだけにさまざまな議論も起きている。
ドイツでも賛否が別れる電子たばこ 販売禁止の州も


電子たばこには「たばこ税」がかからない


ドイツにおいて、電子たばこは法律的にもまだ宙に浮いた存在だ。まず税金のかけ方が決まっていない。ドイツにもたばこ税があり、普通のたばこは1箱6〜7ユーロ(約790円〜920円)する。しかし電子たばこには、たばこ税がかからない。
そのため交換用の液体は1本4〜5ユーロ(約530円〜660円)と安価だ。

液体の取り扱いも曖昧だ。ドイツで販売されている電子たばこ用の液体は、ニコチンを含む。そのニコチンは、日本と同様にドイツでも薬事法により規定されているが、電子たばこ用の液体はまだ薬事法の下で取り締まられておらず、現状では誰でも手に入れられる。

電子たばこの喫煙も法律の適用範囲外だ。州法にのっとり、ドイツでは基本的に飲食店内での喫煙は罰金が課される。しかし電子たばこには喫煙に対しては罰則がない。電子たばこの店内での喫煙を許可するかどうかは、各飲食店の判断に委ねられているのが現状だ。
ドイツでも賛否が別れる電子たばこ 販売禁止の州も


州によっては販売が禁止に


電子たばこは、州によっても対応が異なる。ベルリンのように販売が合法の州もあれば、ブレーメンやバイエルンのように販売が禁止されている州も存在する(ただし、その州に住む個人がネット販売などで他の州や国から購入し、使用することについては罰せられない)。

健康への影響についても意見は対立している。例えば、ベルリン行政が運営するサイトは電子たばこに懐疑的だ。
ドイツがん研究センターの医師の「電子たばこの安全性は証明されていない」というコメントや、「電子たばこを5分間吸うと気道が狭くなる」という肺の専門医たちの意見を紹介し、電子たばこへの慎重な姿勢を見せる。
ドイツでも賛否が別れる電子たばこ 販売禁止の州も

一方で、電子たばこ専門店は当然ながら反対の立場を取る。ベルリンに店舗を構える電子たばこ専門店「フォグ・ユー」に聞いたところ、「そもそも電子たばこの健康被害の扱い方がフェアではない。液体にはニコチンが含まれているため、ニコチンが持つ健康への影響は当然ある。電子たばこの利点は、タバコが燃える時に発生する有害物質がないところだ」と、通常のたばこと比べたときの、電子たばこの利点にもっと焦点を当てるべきだと訴える。

電子たばこは市場に出てからまだ日が浅く、研究も普通のたばこに比べると少ない。法整備を含めて、評価が定まるまではもう少し時間がかかりそうだ。
(田中史一)
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