「悲しいとき~!」でブレイクした「いつもここから」はポテンシャルが高すぎる
画像は「がぶ飲みミルクコーヒー」ブランドサイトのスクリーンショット

中高生を中心に根強い人気を誇る「がぶ飲みミルクコーヒー」(ポッカサッポロフード&ビバレッジ)がこの2月19日にリニューアル。ペットボトル飲料になって今年で20周年とあって、ブランドサイトも開設し、「がぶのみ」ブランドの強化をしていくようだ。

同サイトには、CMキャラクターを務めていたお笑いコンビ「いつもここから」を20年ぶりに起用し、当時のCMやネタイラストも一挙公開。アラフォー筆者にはあのころの思い出が鮮烈によみがえってくるわけだが、そもそも皆さんはいつもここからの存在を覚えているだろうか?


あるあるネタ+めくり芸でポジションを確立


いつもここからは、色白スリムで弱気な風貌の菊池秀規さん、色黒がっちり系で強気な風貌の山田一成さんのコンビで、得意とするのは「あるあるネタ」のめくり芸。
「悲しいとき~!」を連呼しながら、その悲しいシチュエーションが描かれたスケッチブックをめくり、物悲しくもシュールな笑いを誘うスタイルが代名詞的なネタだ。
がぶ飲みミルクコーヒーのCMでは「がぶ飲みしたいとき~」のアレンジになっていたが、まさにこのネタでブレイクしたのである。

当時はあるあるネタがお笑い界でかなりのシェアを占めていた。
相手がへこむシュールなひと言で笑いを取っていたふかわりょうや、栃木なまりでムカついた事をつぶやく、つぶやきシロー辺りがブームの走りだと思う。
『エンタの神様』のヒットもあって、テツandトモ、はなわなど、リズム系あるあるネタが台頭してきたなか、スケッチブックのめくり芸で異彩を放っていたのがいつもここからだった。

(後にリズム系あるあるネタの発展系として、レギュラー、小梅太夫、オリエンタルラジオなど、あるあるネタ風で「むしろない」系が人気になる)


漫画家レベルの画力は芸能界随一!?


スケッチブックやフリップを使ったイラストネタは鉄拳やバカリズムも得意としているが、そのクオリティの高さでいえば、いつもここからがズバ抜けていた印象。
それもそのはず、イラストを担当していた菊池さんは漫画家目指して上京し、雑誌連載を持っていたほどの腕前の持ち主。
切ない悲しみがひしひしと伝わってきながらも、しっかりと笑いに変わるのは、この絶妙なイラストあってこそ。優れた観察眼を絵で表現できる武器は、お笑い界でもトップクラスなのではないか?


実は、お笑い芸人ネタ本ブームの先駆けだったりする


真似したくなるフレーズとポーズもあって、テレビでの露出も高まるなか、「悲しいとき」ネタをまとめた本も発売されているが、これが36刷で13万部突破という好記録を樹立。
当時、プライベート語りがメインだったタレント本に対して、テレビで見せるネタをまとめたネタ本は画期的な存在だった。
このヒットが呼び水となり、ヒロシやパペットマペット、レギュラーなどもネタ本を発売。それぞれ、ベストセラーとなっている。
つまり、いつもここからはお笑い芸人のネタ本ブームの先駆けでもあるのだ。

そのポテンシャルの高さはもちろんだが、お笑い界における功績もなにげに大きいのである。


現在も『ピタゴラスイッチ』レギュラー出演中


02年より現在も放送中のEテレ『ピタゴラスイッチ』。
人気コーナー「アルゴリズムたいそう&こうしん」は、番組開始当初からいつもここからがレギュラーを務めている。
03年にはCD化もされているが、『CDジャーナル』のレビューで「あの『だんご3兄弟』を超えるヒットとなるか、注目だ」とガイドコメントが寄せられるほど。
残念ながらセールスは遠くおよばなかったが、現在も子ども人気の高い定番ソング&お遊戯となっている。
このコーナー、再放送も非常に多いため、いつの時代の2人なのかはわからないが、健在な姿が確認できるから注目だ。


現在のいつもここからは、このコーナーのレギュラーを始め、地方営業、BSや地方局のテレビ番組出演が主だという。
過去のインタビューを見ても、この2人にはどうにも「売れたい欲」がない模様。
「浮き沈みには慣れた」と語る山田さんに、「僕らはこれといって出世欲もないしね」と笑う菊池さん。
もう一つの看板あるあるネタ「ツッコミ暴走族」では、「どけどけー! どけどけー! 邪魔だ邪魔だー!」なんて叫びまくっていたが、人を押しのけてでも笑いを取るタイプではないのである。
ファンが求めているのは、あるあるネタだと理解したうえで、これからも「悲しいとき」は、ずっとやり続けていくと語る2人。
時代に左右されないあるあるネタだけに、再評価、再ブレイクのときは案外近いのかも知れない。

(バーグマン田形)