鴉をもっと自由に聴いてほしいからこそのコンセプトアルバム/インタビュー2

■鴉/ニューアルバム『還り咲』インタビュー(2/3)

――インタビュー1より

この5年の間に自分を新しくできたからこそ、気づけたことも多い

──お話を聞けば聴くほど、曲を作る意味合いやサウンドなど、この5年の間にいろんなことが変わりましたね。

近野:そうですね。
自分を新しくできたからこそ、気づけたことも多いと思いますね。

──それで『還り咲』というタイトルに?

近野:このタイトルは、今回のアルバムをリリースする会社の代表でもある大柴広己くんが考えてくれたんです。自分でもいろいろ考えたんですけど、意味合いが強すぎてまとまらず。でもこれ、すごくしっくりくるタイトルだったので、使わせてもらうことにしました。

──ところで今回の収録曲は、5年の間に作った曲なんですか?

近野:四季をテーマにした、タイトルが漢字1文字の曲は2017年以降にコンセプトを考えてからの曲ですね。それ以外はけっこう前に作った曲で。「脳内カメラ」はメジャーデビューのきっかけになった曲ですから。タイアップが取れなかったり、なんかタイミングに恵まれずリリースされることなくお蔵入りになってしまって。だからカメラとかフィルムとか、今となっては言葉が非現代で(笑)。
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──あえてそういう言葉を選んだのだろうと思ってました。デジタル全盛期の、カメラどころかスマホの時代に。

近野:だとしたら、相当な勇気ですよね。
もう若い人たちに「何言ってるんだろう?!」と言われることを覚悟してたんで(笑)。でもなんか、このタイミングだから逆にいいなぁと思って。というか、このタイミングで出さないと、本当にいつ出すんだろうと思ったり。そういうすごい過去の曲も半分くらい入ってます。

──他にもメジャーデビュー前からあった曲はあるんですか?

近野:ありますね。鴉として発表していない曲もあるし。そもそもバンドのために作った「河川敷」と「されど存続」は、ソロアルバムのなかで弾き語りバージョンとしてリリースしている曲なんです。

──死生観がテーマにも思える「されど存続」、すごく好きでした。

近野:ありがとうございます。20代半ばに作った曲だと思うんですけど。なんか今読むと笑っちゃうとこもあるし、「お前に何がわかるんだ」って言いたくなる、すべてを悟ったようなことを書いてる曲で。ただカッコつけたくて書いたんだと思うんですけど、今歌うとけっこう染みてくるというか。


──逆に褒めてあげたい気持ちになりませんか? その歳でよく書いたねって。

近野:天才だな~、この少年はすごいなぁって思う(笑)。だけど今は絶対こんなに大きいことは言えないですもん。
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──それにしてもそんなに前に書かれた曲なのに、なんの違和感もなく馴染んでいますね。

近野:特に「されど存続」は自分でもビックリしました。この曲、もともと自分で打ち込んで作ったデモ音源があって。ある時、今のメンバーに「昔、こんなの作ってたんだよ」って聴かせたら、「アレンジが最近の若いバンドみたいだね」「これ、今としっかりリンクするんじゃない?」っていう話になったので。あとはまぁ全体的なバランスとして昔の曲も、アルバムのストーリーの世界をもっと濃くしてくれる感じにはなっているので。

──またサウンドもすごく濃密ですね。「蛍」をはじめ、ベースとドラムのコンビネーションが本当にカッコよかったです。

近野:今回、本当にベーシストに救われてるっていうのがあって。ドラムもそうですけど、リズム隊がけっこう活躍してくれていて、俺、やることないなって思ったくらい(笑)。
バンドってこれだよなって思いましたね。今までは頑張ってギターで埋めなきゃ埋めなきゃっていう焦りもあったんですけど、今回のサポートのベーシスト2人はともにグイグイ出てくるタイプなんで。ドラムとベースで成立してるとこがすごく多くて。

──そのぶん歌とギターの自由度が高くなるとも言えますよね。

近野:そうですね。「霙」とか、めっちゃ音が薄いんですけど、あえてそうしたっていうか。
鴉をもっと自由に聴いてほしいからこそのコンセプトアルバム/インタビュー2

──最後にですが、これまでと違うスタンスで作ったアルバム『還り咲』の手応えはどうですか。

近野:なんかこう、いい感じです(笑)。初めてコンセプトみたいなのを考えて作ったアルバムですけど、それは聴き方の自由度ってことを思ったからで。感じ方はそれぞれだから好きに聴いてくださいっていうより、「今回はこういう意味合いで作りました。でも聴き方は自由です」って言ったほうが逆に自由に聴けるのかなって。もっと自由に聴いてほしいからこそのコンセプトアルバムというか。


──そういうコンセプトありきの歌詞かもしれないですけど、最後の曲「都」の最後の最後に「今迎えにいく」と歌われるのが、とってもいいですね。

近野:最初からずっと歌詞が繋がってきて、最後にそこに辿り着くっていう。でもこの「都」という曲を切り分けると、1個1個がそれまでの9曲になるんです。それもまぁ「こういう意味合いで作りました」のひとつなので、どう聴いてもらっても構わないんですけどね。でも自分的には、その最後の歌詞に秋田の人口減少を掛けていたりはします。それも「こういう意味合い」のひとつだけど(笑)。

――インタビュー3へ

≪ライブ情報≫
【鴉4th.album還り咲レコ発ワンマン「東名阪秋咲き巡り」】
2018年4月26日(木)東京・下北沢SHELTER
2018年5月25日(金)大阪・福島LIVE SQUARE 2nd LINE
2018年6月22日(金)愛知・名古屋CLUB 3STAR KURUMAMICHI



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