まず冒頭では、一青窈が敬愛する詩人の谷川俊太郎氏と共演。「かっぱ」を2人で朗読する様は、まるで輪唱のような不思議な響きで、瞬時に「一青窈ワールド」へと引き込んだ。 記念ライブにゲストはつきものだが、この日の公演はとびきり豪華で、なおかつそれぞれに深いストーリーが隠されていた。
たとえば最初の歌のゲスト、岸谷香はプライベートでも親交が深い間柄。だが、もともとは中学時代に寂しさを埋めてくれたのがプリンセス・プリンセスの楽曲だったという。そんな中でも思い入れの深い「パパ」を2人で歌える幸せを噛み締めているのが、その声からも伝わってきた。かと思えば、ゴスペラーズは大学時代のサークルの先輩で歌を志すきっかけを作ったという。メンバーを前にエピソードを披露し、その時の思い出のナンバー「真っ赤な太陽」をエモーショナルに歌いあったほか、自己紹介ソングである「侍ゴスペラーズ」に加えてほしいと嘆願。「侍ヒトスペラーズ」バージョンで、勇ましいアカペラを響かせた。この時ばかりは、普段は艶っぽい一青窈も大学時代に戻ったかのようなあどけない笑顔を浮かべていたのが印象的だった。
第1幕は一青窈の土台を作った人たちがゲストだとしたら、第2幕はプロになってから縁の深い人々をステージに次々に招き入れたようだ。 SOIL&“PIMP”SESSIONSの社長とダブゾンビが派手な衣装に身を包み現れると、一種異様な雰囲気に。
ギラギラの2人に続いたのは、水野良樹(いきものがかり)。なんともカジュアルな服装で、「こんな地味な格好で……」と恐縮しながら現れ、笑いを誘った。最新作『歌祭文 ~ALL TIME BEST~』に収められた「七変化」は水野が手がけた楽曲だ。涙腺を刺激する切ないナンバーに、水野のギターが花を添えた。
和楽器バンドは若い世代のバンドだが、和に重きを置くアーティストとして相通じるものがあるのだろう。事実、メンバーの鈴華ゆう子や町屋は、一青窈に憧れていたと告白。互いへのリスペクトを込めて「東風破」を華やかに歌い競った。
本編を締めくくったのはやはり「ハナミズキ」。「最後にこの一言を言わせてください。
アンコールでは、オールキャストが再集結。飲み友達だというさかいゆうや、番組を通じて交流を始めた台湾のスター、クラウド・ルーなどが並ぶ様は、音楽に垣根はないと改めて思い起こさせてくれた。全てを歌いきった後、デビュー当初から音楽の師として一青窈を導き、寄り添ってきた武部から花束の贈呈。溢れる想いを胸に深々と頭を垂れると、熱い思いに観客もスタンデングオベーションで応えた。「まだまだ精進して歌い続けます」と誓った通り、この先も一青窈だからこそ歌える艶やかで切なくて、甘くてほろ苦い歌をきっとこの先も届けてくれるに違いない。
豪華なゲストを迎えた豊かな音楽性と感動にあふれたスペシャルなコンサートの様子は、5月20日(日)のWOWOWライブで放送される。温かくて感動的な時間をぜひ体感してみてはいかがだろうか。
(取材・文:橘川有子)
≪番組情報≫
WOWOW
『一青窈謝音会~アリガ十五~』
2018年5月20日(日)WOWOWライブ
http://wowow.co.jp/hitotoyo/