ハロウィンでの仮装はなぜ日本で流行した? アメリカとの違いとは
画像出典:Amazon.co.jp「Helloween (英語) ペーパーバック

ハロウィンといったら、いまや日本ではパレードができるお祭り騒ぎだ。しかし、このような状況になったのもごく最近のこと。
なぜ日本でハロウィンがヒットしたのだろうか。本場アメリカとの違いも考えてみたい。

ハロウィンの起源は?


クリスマスほどではないものの、いまや日本では1つのイベントとしてハロウィンが受け入れられている。そもそもハロウィンとは何なのか、起源や由来を探ってみたい。

ハロウィンの起源・由来とは


ハロウィンは、主にキリスト教の文化として伝えられているが、起源はキリスト教ではない。古代ケルト人(中央ヨーロッパの異民族で、現在はアイルランドなどに多く住む)が信仰していたとされるドルイド教だ。歴史は2000年以上にも前にさかのぼる。

ドルイド教では、11月1日が新しい1年のはじまりとされていた。日本でいう正月のようなものである。11月1日のために10月31日からお祝いをしていたことがハロウィンの起源とされている。

なお、現代のハロウィンとはまったく異なるもので、先祖や家族など死者の霊を家に招き、供養するための神聖な儀式であった。死者の霊が家を訪ねてくると信じられていたため、家の外に食べものを置いて待っていたのだという。

それでは、なぜハロウィンはキリスト教のイベントのようになってしまったのだろうか。遠い昔のことなので定かではないが、キリスト教の布教の際に、他宗教の文化などが取り込まれたと考えられている。


ジャック・オー・ランタンとは



ハロウィンでは時期が近付くと、死者の霊だけでなく、悪霊も一緒に街をさまよいはじめると信じられていた。悪霊が家に寄り付かないように、驚かす目的で作られるようになったのが現在のジャック・オー・ランタンだ。

現代では、カボチャを人の顔のようにしてくりぬいた中にろうそくを置くのが一般的だが、はじめはカボチャではなくカブでランタンが作られていたようである。使い勝手の良さや、ハロウィン文化が広まったアメリカにカボチャが多かったことから、カボチャでのジャック・オー・ランタンが主流になった。

なお、ジャック・オー・ランタンと呼ばれるようになったのは、「さまよいジャック」というアイルランドの民話が関係しているといわれる。「さまよおジャック」は、何度も悪魔を出し抜いて寿命を迎えたジャックが、悪魔に魂を取らないと約束させたせいで地獄にも行けなくなってしまった話だ。生き返れるわけでもなく、どこにも行けなくなってしまったジャックが悪魔の投げつけた炎をランタンに灯し、さまよい続けるという内容。

民話のジャックのランタンとハロウィンのランタンが重なって、ジャック・オー・ランタンといわれるようになったという。

ハロウィンの時になぜ仮装するのか



日本ではハロウィン=仮装のように広まりつつあるが、なぜハロウィンでは仮装をするのだろうか。前述したように、ハロウィンでの仮装も古代ドルイド教の文化である。

当時は、死者の霊と一緒に悪霊もやってくると信じられていたため、悪霊から身を守るために仮装という手段がとられた。悪霊と同じように恐ろしい格好をして同族と思わせれば、悪霊に襲われることはないという理屈だ。

ハロウィンでは、魔女やゾンビのような変わった格好をするのが一般的だが、それは古代ドルイド教でも同じだったようである。もっとも現代のような服を簡単につくる技術はないので、顔に塗料を塗ったり、藁を使ったりして恐ろしい格好に近づけようとしたようだが…。
また、中にはさらに恐ろしさを演出するために家畜を殺し、その皮膚や骨を身にまとった者もいたという。


日本のハロウィンはどんなもの?


日本のハロウィンの歴史は、実はまだまだ浅い。毎年話題になる渋谷のパレードは2000年代から流行りだしたものだ。少し日本のハロウィンについて振り返ってみよう。

日本でも仮装(コスプレ)が大流行



日本でのハロウィン文化は、以前はパッとしないものだった。今でこそ交差点を練り歩くハロウィンの集団がみられるようになったが、お菓子を配るだけなどの小さなイベントのみを取り入れているようなものが多かった。

それが、2000年代から大きく変わってくる。ハロウィンの仮装部分が注目されるようになったのだ。日本アニメも好調で、ハロウィンの仮装と日本のコスプレ文化がうまくマッチした。

コスプレは、アニメでのイベントや家で楽しむようなところがあったが、ハロウィンの誰でも楽しめるようなところも手伝って、普段コスプレをしないような人も、特別にしてみようかという雰囲気に変わっていった。インスタやツイッターなど、”楽しい”を共有できるSNS文化が広まったのも大きい。そこにハロウィン商戦も手伝って、日本で大流行した。

なぜ日本でハロウィンが定着したのか


東京ディズニーランドで細々とはじまったハロウィンイベントは、今は渋谷や原宿などでハロウィンパレードとして定着している。諸外国を見ても、日本のように大人が仮装して外を練り歩くようなハロウィンイベントはそうそうない。なぜ、これほどまでにも日本にハロウィン文化が定着したのだろうか。


1つはSNSの広まりだ。若者を中心にインスタ映えなど、絵になる画像や話題をSNSに投稿するのが人気となっている。誰よりも奇抜な格好をしたい、あっと驚くような格好で目立ちたいという思いが、ハロウィンでの仮装を加速させる要因になっている。

もう1つは、はけ口としてのハロウィンだ。日本は海外と比べても労働時間が長く、働きすぎだといわれている。働きすぎのためか、プライベートな時間がなかなか充実しない。もちろん、短い時間を有意義に活用して休みを充実させている人もいるが、家でゴロゴロ過ごして、無気力で仕事に向かう人も多いだろう。

ハロウィンはそんな多忙な現代人に、非日常として楽しみを与えてくれる。日常で溜まった疲れやストレスを開放するガス抜きのようなものなのだ。また、海外が発祥ということもあって、日本の祭りのように決まりやしがらみもないため気軽に参加しやすい。

ハロウィン当日、最も混雑するのは渋谷だった?


日本のハロウィンパレードの発祥は原宿だが、こちらはもっぱら子どものためのハロウィンで大人の仮装は見られない。やはり、日本のハロウィンで最もにぎわうのは渋谷のスクランブル交差点でのハロウィンパレードだろう。

普段から人通りの多い渋谷のスクランブル交差点は毎日50万人の通行量があるといわれているが、ハロウィン当日は2倍の100万人になるといわれている。
普段から多い交通量に増して人がいるわけなので、最も混雑するといわれてもおかしくない。

ちなみに渋谷のハロウィンパレードは、日本人だけでなく、海外からの観光客も参加して自国とは違うハロウィンを楽しんでいるようだ。

アメリカではハロウィンをどう過ごす?


ハロウィンの起源は古代ケルト人の宗教だと紹介したが、日本でみられるような現代的なハロウィンはアメリカの影響が大きい。またキリスト教が根強いヨーロッパと比較しても、アメリカのハロウィンは特徴的でオリジナリティがあふれる。現代ハロウィンの本場ともいわれるアメリカのハロウィンについてみていきたい。

本場アメリカのハロウィンは規模が違う?


ハロウィンの本場といわれるアメリカでも、日本のようなパレードが行われている。ニューヨークのハロウィンパレードは、世界一ともいわれるように街をあげてかなりの規模で行なわれる。参加条件もゆるく、仮装していれば参加可能だ。

ただ、日本とアメリカのパレードは違う部分もある。日本は本格的な仮装のほかに、アニメや流行りの芸人などのコスプレが多い。しかし、アメリカの仮装は、ザ・仮装というような雰囲気で、中にはコスプレをする人もいるが、多くはホラー系の怖めの衣装に身を包む。ハロウィン本来の由来を意識してのことかはわからないが、日本とはかなり様子が違う。

また、日本ではコスプレはどちらかというと若者が多いが、アメリカでは老若男女仮装を楽しんでいて、シニア世代といわれる人の参加も多い。

アメリカのハロウィンの主役は子どもたち



ニューヨークのハロウィンパレードについて紹介したが、実はこれはアメリカでも少し特別な例だ。ニューヨークのパレードでは大人もコスプレを楽しむが、基本的にハロウィンは子どものためのイベントという認識がアメリカでは強い。


大人がハロウィンの仮装に身を包んで楽しむというより、我が子が主役で、特別なハロウィンの仮装をさせて一緒に楽しむのが定番のハロウィンの楽しみ方だ。中には、手の込んだ手作り衣装を用意する親もいる。

ハロウィンの飾りつけも本格的


日本は10月31日のハロウィンのその日だけ楽しむような雰囲気になっているが、アメリカは違う。簡易的に済ませる家庭もあるようだが、1カ月ほどの期間をかけて手の込んだハロウィンの飾りつけをする家庭も多い。

家族で協力して、ジャック・オー・ランタンなど少しずつハロウィン色に家を飾り付けていくという楽しみ方だ。中には、骸骨など手の込んだ模型を作って家の外に飾るような家庭もある。街全体が少しずつハロウィン色に染まっていく、日本とは違う楽しみ方がある。

ハロウィンにまつわる映画を紹介


ハロウィンパレードなど外で楽しむのもよいが、家でハロウィンの雰囲気を楽しんでみるのもよい。ハロウィンの雰囲気にぴったりな映画をいくつか紹介する。

ハロウィンにまつわる洋画を紹介



・アダムス・ファミリー
セントラルパークにそびえる恐ろしく不気味な館に住むおばけ一家の物語。映画版は2まで発表されている。ハロウィンのような怪しい雰囲気が印象的だ。

・キャスパー
おばけの少年と人間の少女とのストーリー。怖すぎない、ハロウィンにぴったりな子どもと楽しめる作品だ。

・ダーク・シャドウ
200年のときを経て現代に甦ったヴァンパイアの話。
ゴシック調の怪しくも美しい世界、コミカルな要素も含まれた内容がハロウィンの雰囲気に合う。

ハロウィンにぴったりのアニメ映画5選



・ナイトメア・ビフォア・クリスマス
ハロウィンタウンに住む骸骨顔のジャック・スリントンの物語。ハロウィンアニメといったらまずはこのアニメをイメージする人が多いだろう。悪ガキ3人組や幽霊犬など出てくるキャラクターも個性的でかわいい。

・モンスター・ホテル
主人公はドラキュラ。フランケンシュタインやマーレイなどのポップなモンスターが繰り広げるストーリー。映画は2まで公開されている。

・コープスブライド
死者の花嫁との怪しくも美しいストーリー。ロシア民話をもとにつくられた作品だ。

・スーサイド・ショップ
自殺用品専門店で生まれたポジティブな子どもと命の大切さを説いた物語。アメコミ調の映像が印象的だ。

・コララインとボタンの魔女
ドアの向こうの怪しい世界に入り込んでしまった少女の物語。怪しい雰囲気がハロウィンを彷彿させる。

ハロウィンにぴったりのホラー映画5選


ハロウィンでの仮装はなぜ日本で流行した? アメリカとの違いとは
画像出典:Amazon.co.jp「ハロウィン [Blu-ray]

・ハロウィン
ハロウィンを題材にした絶叫系ホラー。2018年に続編として復活するとして話題だ。

・ホーンテッドマンション
ゴシック調の豪邸で繰り広げられる恐怖。ディズニーランドのホーンテッドマンションというアトラクションから生まれた映画だ。

・ブライアン・シンガーのトリック・オア・トリート
ハロウィンの夜に起こった不気味な4つの事件。狂気に満ちた短編映画だ。

・エルム街の悪夢
悪魔の力で甦ったフレディという残酷な殺人鬼のホラー映画。ハロウィンでは、フレディに真似て仮装する人もいる有名作だ。

・悪魔のいけにえ
チェーンソーを持った殺人鬼が迫る恐怖のホラー映画。異常な雰囲気がたまらない恐怖を生み出す。

日本ではない起源をもつハロウィンも、今では広く認知されるようになってきた。海外のように凝ったものではなく、ゆるく楽しくが一般的な楽しみ方のようだ。ハロウィンパレードなど華やかなイベントに顔を出すのもよいが、たまには家でゆっくり過ごしてみるのもよい。ハロウィンには、ハロウィンの日にぴったりな怪しい映画はいかがだろう?

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