スマホで家事育児を支援する会社Fam-Time (ファム・タイム)が、父親の料理支援事業を行う株式会社ビストロパパと共同で、自宅で料理のスキルを学びながら料理ができる料理教室アプリ「FamCook (ファムクック)」を制作し、今年7月にリリースした。

開発したのは、自ら料理を作っているパパの一人でもある代表の西村威彦さんだ。
自ら家庭で家族と一緒に日頃から料理をしながら試行錯誤で生まれたというこのアプリ。果たして男の料理をどう変えるのか。

自宅で料理のコツを学べるアプリ


男性ひとりで学べる「料理教室アプリ」 デジタル技術でロジカルにコツ伝授

FamCookをスマートフォンやタブレットで立ち上げると、まずは複数の料理の完成品の写真がずらりと並んだ画面が出る。作りたい料理をタップすると、その料理の材料とレシピが現れる。「音声ナビゲーションで作る」ボタンを押すとその料理の手順を写真とテキストと音声で案内してくれるしくみだ。これに沿って料理をし、音声コマンドで操作すれば、料理中、スマホやタブレットをいちいち触る必要がない。

●「ふんわりオムライス」のレシピ例(抜粋)
男性ひとりで学べる「料理教室アプリ」 デジタル技術でロジカルにコツ伝授

男性ひとりで学べる「料理教室アプリ」 デジタル技術でロジカルにコツ伝授


このアプリの特徴は、レシピでは伝えきれない料理のコツを、料理中に音声などで教えてくれるアプリだ。
料理のコツとは、例えばどのようなことなのだろうか。

「例えば、『肉じゃがに向いているジャガイモの種類』であったり、『玉ねぎを切るときに目にしみないコツ』であったり、『煮物が冷めるときに味が染み込むのはなぜか』などのちょっとした料理のノウハウです。こういったコツはネットなどで調べることもできますが、字で読むよりも、料理教室のように料理しながら耳で聞くほうが、認知心理学的に覚えやすく、身につきやすいので、音声合成によって伝えるようにしました。今後は、これらのコツをユーザの料理のスキルレベルに合わせて最適なコツを提供するように、各ユーザの料理実績データを活用していく予定です」(西村さん)

男性ひとりで学べる「料理教室アプリ」 デジタル技術でロジカルにコツ伝授
玉子焼きのレシピ。作る際のポイントが随時案内される。


開発のきっかけは夫婦喧嘩が減ったこと


このアプリを開発したきっかけはどこにあったのか。

「最も大きなきっかけは、私自身が共働きのサラリーマン時代に、料理の頻度を増やしたことで夫婦喧嘩が減ったことです。さらにパパ料理研究家の滝村さんと出会い、世間のパパには自宅で料理を継続して欲しいとの強い思いに共感しました。そこで弊社が持っていた音声UI(ユーザインタフェース)やデータ活用などのデジタル技術を使えば、自宅で家族のために料理を作る実践の中で、料理教室でしか学べない料理のコツも同時に学べるアプリを作ることができると思い、一緒に作ることになりました」(西村さん)


パパや一人暮らしの男性にとって嬉しいメリット


このアプリ、パパや一人暮らしの男性など、男の料理を変える可能性を秘めている。どんなメリットがあるのか。
西村さんと、共同開発したビストロパパのパパ料理研究家である滝村雅晴さんに挙げてもらった。

●自分のペースで操作できる
「まずは音声認識で操作できるので、自分の声により、自分のペースでナビを聞くことができる点です。従来のレシピに比べて、細かく手順をナビするので、あれこれ考えずに料理ができます。また、覚えにくい調味料は一つずつ細かくナビします。『ポイント』コマンドでは、料理のコツを学ぶこともできます」(西村さん)

●どこに時間がかかったのか振り返りができる
男性ひとりで学べる「料理教室アプリ」 デジタル技術でロジカルにコツ伝授
「鶏ささみをほぐす工程に12分もかかった」ことが「つくれこ」で発覚!西村さんは、実際、このデータを元にして、夫婦で一緒にささみをほぐすようになった。

「作った後も『つくれこ』で、料理のどこに時間がかかったのかの振り返りができます。意外なところで時間がかかることが発見できるので、時間のかかる工程は効率的な道具を使ったり、家族に手伝ってもらったりするなど、次回の対策のヒントになります」(西村さん)

●簡単レシピのみ。
手軽に始められる

「どれもすぐ手に入る食材で作れる簡単なレシピしか登録していないので、手軽に始められます」(西村さん)

●実際の料理教室と同じ視点で学べる
「主催しているパパの料理塾で実際に教えているメニューも掲載されています。料理教室に参加できなくても講座で学ぶように分かりやすく学べます」(滝村さん)

●何度も繰り返し、作りたい料理を作ることができる
「料理初心者は、気に入った料理を何度も作ることで、料理のハードルが下がるものです。アプリ掲載のレシピは、私がパパ料理を15年行ってきた中で何度も繰り返し作り、妻や子どもが喜んだ料理のレシピなので、作りやすく家族にも喜ばれる可能性が高いはずです」(滝村さん)

●レシピアプリではなく、料理スキルアップアプリである
「単に料理の作り方を紹介するレシピや動画ではなく、ユーザーの料理力をアップさせることがコンセプト。文字制限や、時間制限などなく、料理初心者が作ることを前提に料理を紹介しています」(滝村さん)

利用者の声


このFamCook、実際にパパに需要があるようだ。どのような声があがっているのか。

「料理中は手が濡れるので、音声操作できるのが非常に嬉しいとの声をたくさんいただいています。また、FamCookの音声操作は『次』、『戻る』など、非常にシンプルで子どもでもできるので、子どもがキッチンで『次』と言うのを手伝ったりしている家庭もいらっしゃるようです。
一方、まだまだレシピは少ないので、もっと増やして欲しいとの声もいただいております。さらに、こんな機能やあんな機能も欲しいとさまざまなヒントもいただいております。今後はこれらの要望を実現することで、より料理が楽しくなるアプリにしていく予定です」(西村さん)

今後のバージョンアップ予定


具体的に、何か今後のバージョンアップに際して決まっていることはあるのだろうか。

「今後は、誰もが簡単で、楽しく料理を学べて作ることのできるサービスの実現に向けた機能を追加提供して行く予定です。例えば、調理実績データを活用することで、個人の苦手分野にマッチした料理のコツの提案や、生産工学の知識を活用し、夫婦や子どもも含めた家族で協力し合って一緒に料理するコツなどを提供していきます。
さらに料理教室特有のコミュニティの機能についてもサービス展開していく予定です。
これらの提供によって、FamCookをキッカケに家庭内の家事シェアが楽しく、かつロジカルに実践され、キッチンと食卓の笑顔を増やす世の中作りをデジタル技術で加速させていきます」(西村さん)


【取材協力】
西村威彦さん
株式会社Fam-Time 代表取締役。日本パパ料理協会腹会長飯士。スマホで家事育児を支援する会社、Fam-Timeを創業。自宅で料理のスキルを学べる料理教室アプリ「FamCook」を2018年7月23日にリリース。自らも自宅で家族と一緒に料理をしながら、アプリ開発に役立てている。

滝村雅晴さん
パパ料理研究家。
株式会社ビストロパパ代表取締役。日本パパ料理協会 会長飯士。農林水産省食育推進会議 専門委員。パパ料理・親子料理・男性の家事参画を推進し、家族の食育・共食と健康作り、ワークライフバランスを広める、日本で唯一の料理研究家。「パパの料理塾」主宰。



(石原亜香利)