AKB48「新曲は珠理奈への想いと重なる部分があった」 横山由依・向井地美音インタビュー

2018年6月に行なわれた第10回AKB48 53rdシングル 世界選抜総選挙の結果を受けたシングル『センチメンタルトレイン』が、いよいよ9月19日にリリースされる。1位に輝いたSKE48・松井珠理奈の休養(9月7日の「ミュージックステーション」で復帰)により、センター不在のままレコーディングとMV撮影が行なわれた本作は、その状況を受けたかのようにセンチメンタルで、限られた時間の儚さを感じさせる楽曲。AKB48グループ総監督にして総選挙6位の横山由依と、「総監督になりたい」宣言をした同13位の向井地美音、2人の選抜メンバーに今作と総選挙、そして総監督について語ってもらった。

――いままでの総選挙シングルは明るい曲が多かったと思うんですけど、今回はちょっと切ない曲ですよね。曲をもらったときは、どんな印象を受けました?

横山由依(以下、横山):曲調自体は明るいですが、おっしゃるように切なさもあって。明るくて切ない曲を好きなメンバーは多いし、メロディーも覚えやすいし、シンプルでいい曲をいただいたなと思いました。

向井地美音(以下、向井地):私は振り付けをいただいたときに、いままでのAKB48とはちょっと違う、演劇っぽい要素を感じました。その振り付けに乗せて歌うと、より感情が入るというか、すごく切なくて胸が苦しい気持ちになります。

――あの振り付け、エモい感じがしますよね。

横山:え、伝わってますか!?

向井地:実は振り付けの先生から「エモーショナルに」踊るようにと指導いただいていたので、そう感じていただいてうれしいです!

――まず表情がみんなエモいと思ったんです。これは通学電車でいつも見かける女の子に想いを寄せる歌なんですか?

横山:そうですね。私も通学していたときは、毎日同じ時間の電車に乗っていて、社会人とか学生とか関係なく、一緒の人たちが顔を合わせるんです。居る位置もだいたい決まっていたから、「今日はあの人いないな」とか思うこともあって。そういう情景がすごくうまく描かれているなと思いました。私はそれで恋をしたことはないですが(笑)。
AKB48「新曲は珠理奈への想いと重なる部分があった」 横山由依・向井地美音インタビュー

向井地:同じクラスとかじゃなくて、通学中にしか会えないっていう設定が切なさを際立たせます。個人的には<それは僕が否定しても恋でしかないだろう(絶対)/これ以上 好きになったら困るほど…>っていう2番のBメロが大好きなんです。1番では「それは恋と呼べるような確かなものじゃなく」と自分でもまだ戸惑っているんですが、2番で「これはやっぱり恋だ」って気づいちゃうんです。

横山:私は歌詞の「卒業」というワードが引っかかっていて。学校の卒業を指していると思うんですが、AKB48も卒業が絶対についてくるグループなので、重なるものを感じるんです。<卒業までの 一日 また一日/すべてが輝きながら/この電車 どこへと向かうのだろうか?>とありますが、学生でも、会社員でも、私たちAKB48でも、どこに向かうかわからないまま一生懸命やっているところがあるじゃないですか。その儚さを抱えながら、それでも生きていかないといけないというか、そういう意味も込められているのかなと思って。もしメンバーが卒業するときに歌ったら、グッと来るものがあるのかなと思います。

――この歌詞は捉え方を変えると、(休養していた)珠理奈さんへのメッセージでもあるのかなと思ったんです。<そっとエールを送った>とか。

横山:正直、(楽曲を)初めて聴いたときはそうだと思いませんでしたが、振り入れでセンターポジションを空けたり、(松井珠理奈の立ち位置に)手を添えるような動きがあったりして、初披露のときにすごく切なくなったんです。お休みしていることが歌詞にすごく当てはまるし、曲が明るいから、より切なさが増して。
AKB48「新曲は珠理奈への想いと重なる部分があった」 横山由依・向井地美音インタビュー
松井珠理奈が不在の「センチメンタルトレイン」MV/絵コンテシーン(C)AKS/キングレコード

――既にMV(松井珠理奈不参加の暫定版)も公開されてますけど、総選挙の表題曲は撮影に臨む気持ちも違うものですか?

横山:私たちは普段から握手会や劇場公演で、ファンの方を身近に感じてはいますが、総選挙曲は順位に応じたポジションと歌割りがあって、ファンの方がいるから活動できていることを再確認させてもらえるんです。なので、どの楽曲にも同じように想いは込めていますが、ファンの方への感謝という意味では、総選挙の曲が1番かもしれないです。

向井地:私は去年17位で、(16位までの)選抜に入れませんでした。そのときの「#好きなんだ」は、今回と同じ高橋栄樹監督のMVだったんですが、私はいままで栄樹監督のMVに出演したことが一度もなくて。AKB48に入ったときから、密かな憧れだったんです。AKB48のMVといえば栄樹監督っていう印象があったので。

横山:「言い訳Maybe」(2009年の第1回AKB48選抜総選挙結果を反映した13thシングル)とか。

向井地:今回その夢が叶ったことが本当にうれしくて、いつも以上に気合いが入りました。

――その選挙のスピーチでは、向井地さんが「総監督になりたい」と言ってましたけど、現総監督の横山さんはどんな気持ちで聞いてました?

横山:前日の夜にLINEが来たんです。「ちょっと相談したいことがあるんです」と。マスクの絵文字も送られてきたので、「明日、総選挙なのに風邪引いたんかな?」と思って(笑)。

向井地:やっぱり先に相談しておきたかったんです。

横山:それで、いままでセンターをやったり、AKB48でいろんな経験をしてきたなかで、改めてAKB48が好きで、AKB48のためになりたいと思ったときに、目指したいのは総監督というポジションかもしれないと。それをスピーチで言おうと思うんです、って言われたんです。
AKB48「新曲は珠理奈への想いと重なる部分があった」 横山由依・向井地美音インタビュー
向井地美音「第10回AKB48 53rdシングル 世界選抜総選挙」(C)AKS


――それを聞いて、どう思いました?

横山:嬉しかったです。総監督って、たかみな(高橋みなみ)さんと私の2人しかやってなくて。立候補制とか、そういう流れもないまま、たかみなさんから引き継いで、いま私は任せていただいているんです。いままでセンターを目指すメンバーはいっぱいいましたが、総監督になりたいというメンバーはいなくて。なので、たかみなさんがやってきてくださったことと、自分がやってきたことと、ちょっと救われた気がしたんです。

――やっぱり総監督って大変なんですか?

横山:就任当初はよく泣いていました(笑)。でも、グループへの愛だけは常に変わらずにあったので、辞めたいと思ったことは一度もありません。メンタルはもともと強いほうなんです(笑)。最近は周りのメンバーが助けてくれるし、スタッフさんもサポートしてくださるし、自分もポジティブに考えられるようになりました。あまりグループのことばかり考えすぎず、自分がこう進みたいとか、自分の夢を叶えたいなっていうのを全うすれば、結果的にグループに還元できるんじゃないかと思えるようになったんです。

向井地:横山さんは365日ずっとAKB48のことを考えていて、ご飯に行ってもAKB48の話ばかりなんです。私もAKB48に入ったときから、ずっとAKB48への愛を持ち続けていると思っていたので、その気持ちをグループに恩返しできるとしたら、やっぱり横山さんみたいに総監督になることなのかなって思いました。自分ができるのかは全然わからないですが、目指す場所はそこだと感じたので、(総選挙の)スピーチで言わせていただきました。
AKB48「新曲は珠理奈への想いと重なる部分があった」 横山由依・向井地美音インタビュー
横山由依「第10回AKB48 53rdシングル 世界選抜総選挙」(C)AKS

――向井地さんは横山さんが就任当初泣いていたところも見ていたんですか?

向井地:なんとなく知ってはいましたが、当時はそんなに関わりが深くあったわけではなくて。でも最近、全国握手会で横山さんがいなかった日に、私が代理で円陣やリハーサルの進行を任せていただいたんですが、想像以上に、AKB48を引っ張るのって大変だと思ったんです。いつも背中は見ていましたが、横山さんがやっていることは本当にすごいんだって、その1日だけでも偉大さを感じて……。いつかは私も、それをできる人になりたいです。

――横山さんが考える総監督に必要なものとは?

横山:やっぱりグループが好きっていう気持ちです。それがあれば、どんな困難も乗り越えられると思いますし、メンバーのことも、スタッフさんのことも好きになるでしょうし、もちろんファンの方を大切に思えます。それと、先日も80代くらいのおばあちゃまが握手会に来てくださったんですが、やっぱりAKB48はたくさんの人に愛されるグループであり続けたいなと思いました。なので、まず自分が愛を持つことは大事かなと。でも、これは何回も言っていますが、まだ私は卒業を考えていないです(笑)。

向井地:総選挙のスピーチの時もそう受け取られたら嫌だなと思って、それも総選挙の前日に相談したんです。

――逆に言うと、横山さんより先に卒業することはない?

向井地:私は去年ソロコンサートをさせていただいたときに、「私はAKB48の20周年まで居続けたいと本気で思っています」って宣言したんです。2025年なので私は27歳、横山さんは33歳ですが、そこまで横山さんがいるなら、私は潔く総監督を諦めます(笑)。

横山:あんなことを言っていたのに、総監督のポジションを譲らなかったねって(笑)。

――まだ総監督になれるかもわからないですしね。

向井地:そうなんです。私が勝手に言っただけなので。

――ほかにも立候補するメンバーがいるかもしれない。

向井地:出て来てもおかしくないと思います。

――でも、そういうメンバーがいるなら、未来は明るいですよね。

横山:そうですね。今年の総選挙のスピーチでも、自分が所属するグループやチームについて発言していたメンバーが多かったですし、AKB48グループの一員として、みんな改めてがんばりたいと思っているのかなって。そういう意味でも、いい選挙だったなと思います。
AKB48「新曲は珠理奈への想いと重なる部分があった」 横山由依・向井地美音インタビュー

――いまの話を踏まえて、今後のAKB48の目標は?

横山:やっぱり東京ドームでコンサートをやりたいです。美音が加入した15期生と、その次に入ったドラフト1期生までは東京ドームのステージに立っているんです。

向井地:最後の東京ドームが2014年8月だったので、それ以降に入ったメンバーは経験していなくて。

横山:私もそのとき、選抜メンバーとして歌わせていただいたんですが、先輩たちが連れてきてくださったステージに立たせていただいている感覚だったんです。グループの名前こそ変わってないけど、中身はけっこう変化しているので、いまのメンバーでも東京ドームのステージに立ちたい、東京ドームにふさわしいアイドルになりたいなって思います。

――横山さんが総監督の間に東京ドームをやって、向井地さんが総監督のときにも東京ドームをやれたら。

向井地:できたら本当に素敵です。それを目標に頑張りたいです!

取材・文/タナカヒロシ

【プロフィール】
横山由依 
1992年12月8日生まれ 京都府出身
AKB48グループ 総監督・Team A所属

向井地美音
1998年1月29日生まれ 埼玉県出身
AKB48 Team A所属



リリース情報


53rdシングル 「センチメンタルトレイン」
9/19(水)発売
You, Be Cool!/KING RECORDS






ライブ情報


「AKB48グループ 第2回ユニットじゃんけん大会」
日時:9月23日(日)
会場:片柳アリーナ(日本工学院専門学校)/(東京・蒲田)
詳細:https://www.akb48.co.jp/unitjanken2nd/

AKB公式サイト



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