「第12話 持つと持たぬと」が今日9月20日(木)25:05より、フジテレビ”ノイタミナ”ほかで放送。

アッシュの幸福な時間
アジトで羽を伸ばして、会話するエイジとアッシュ。6話の射撃訓練のシーンと並ぶ、安らぎ時間だ。
幼少期からかぼちゃが苦手だ、とついこぼすアッシュに対して、エイジが笑いながらつっこむセリフが印象的。
エイジ「ゴルツィネに教えてやりたいよ! 役立たずのボディーガードよりカボチャの栽培でもしろってさ!」
こんなことギャングの仲間が言ったら、アッシュに半殺しにされるだろう。
ところがアッシュは、エイジに言われたのを聞いて、恥じらって子供のように不貞腐れる。
幼い頃に強姦され、男娼として生活し続けたアッシュ。性に対する嫌悪感が尋常じゃなく高い。
エイジが「まつげまで金髪なんだなって」と言った時、彼が「下もだぜ。見るか?」とシモネタで返したのは、かなりびっくりな発言。
「見せて!」というエイジの返答に「変なやつ」とドン引きするアッシュ。
アッシュが振ったシモネタは、過激な性行為をイメージさせて大人をぎょっとさせる、今までのような話題ではない。
おそらくエイジが「いや、遠慮するよ!」と返事したところを、指さして笑ってやろうと思っていたんだろう。
アッシュがはしゃいでいる。失ってしまった8歳からの長い空白の日々を、この会話で取り戻しているかのようだ。
ディフェンスからオフェンスへ
今までは、追いかけてくるディノの手下から逃げる、という「守り」の姿勢だったアッシュたち。
しかしディノらがショーターを実験材料にしてからは、一気に「攻め」の姿勢に転じた。
コルシカマフィアであるディノをバックにつけて、虎の威を借る狐状態でのさばっている、地区ギャングのボス・オーサー。
彼に対抗するためにとった手段が二つ。
1・オーサーに吸収されていない中立ギャンググループの調査。
2・ディノの動きを封じるため、彼の持っているブラックマネーを情報操作で奪取。
1のグループの調査の際、自分の仲間に人種構成を確認するよう伝えている。
今までの回で、中国人グループが仲間を最重要視してきたように、ここから先は人種間の問題が物語を左右する。
アッシュたちのグループは誰に対してもフラットな様子(メンバーが日本人のエイジのために、自ら気を利かせて和食を用意していたのは素敵なシーン)。とはいえ種族・民族や仲間の歴史が、よそのギャング抗争の発端になることは、アッシュの周りでも多々あるだろう。
2でアッシュがディノから奪ったお金は九千万ドル。
アッシュが行動を実行したのが、ストリートギャングになる前、ディノに自室で性的暴行を受けていた合間、というのがミソだ。
ディノはアッシュを性的愛玩具としてしか見ておらず、人間とも生き物とも考えていなかった。だからこそアッシュは、警戒心の薄いディノのPCに忍び込むことが出来た。
エイジと会うよりはるか前から、牙をむくために準備していたアッシュ。
今までずっとエイジやマックスらと行動しながらも、アッシュは悟られずに、素知らぬ顔で1人計画を進めていた、ということだ。
父さんと兄さん
エイジ「年上の者の忠告はきくもんだぞ!!」
アッシュ「そりゃ失礼しました、オニイチャン」「お願いだよオニイサマ」
先輩風を吹かせようと虚勢をはるエイジ。アッシュはそれを茶化すように「オニイチャン」「オニイサマ」と返している。これは原作も同じ。
かつて兄のグリフを強く慕っていた、アッシュ。
彼はグリフを「兄さん」と呼び続けていた。
エイジを兄呼ばわりしているのはもちろん冗談。
(英語だと全部「big brother」で同じになりそう。発音のノリが違うか、日本語なのか)
マックスに、自分の代わりにマンションを買ってもらうため話している時のセリフ。
アッシュ「他に行くところなんてないだろ、父さん」
アッシュが息子で、マックスが父親、というカモフラージュだ。
彼が激しく憎み続けていた実父は、先日撃たれて大怪我をした状態で、自分を追手から逃してくれた。
「父さん」発言するアッシュの心中が気になる。
「オニイチャン」も「父さん」も、アッシュがこれから先、本来の意味ではもう絶対に呼べない、失ってしまったものだ。
11話でそれを両方出しているのは、擬似的とはいえある程度は信頼できる間柄になったからだ。
少しだけ家族を過去に前に進んでいるようにも、皮肉って苦しみを茶化しているようにも見える、複雑なシーンだ。
「ずっとだ」問題
今回は削っている部分・改変している部分が多い。
特にショーターの姉まわりと警察まわりは、以前の回から引き続きごっそりカットされている。
物語自体はきれいにまとめられている。
ただ、重要なセリフが1つ削られたことでファンの間では賛否両論が出ている。
エイジ「僕は君のそばにいる、君がもし迷惑じゃなければだけどね」
アッシュ「そばにいてくれ、ずっとなんて言わない、今だけでいい…」
原作だとエイジはこの後すぐ「ずっとだ」と一言漏らすコマがある。
エイジが未来に対して揺るがない強い意志表示をし、怯えるアッシュがそれに救われる様子が見える一言だ。
原作で目立つように描かれているセリフなので、削ったのだとしたら、かなり意図的な演出だろう。
感受性豊かに描かれてきたアッシュに対して、エイジの心理がはっきり見える描写はそこまで多くない。。
となれば、ここでわざわざ削ったことが、今後エイジの、アニメ版としてのキャラクター描写に大きく影響してくる可能性がある。
まだ現時点ではなんとも言えないので、エイジの今後のセリフの調整は、注目しておきたい。
(たまごまご)