リファラル採用の支援サービス「Refcome」を展開するリフカムは、同サービスをこれまで500社以上に導入した実績を持つ。同社の組織開発部部長兼広報責任者の小林佳徳氏に話を聞いた。

縁故・コネ採用と何が違うのか
――リファラル採用と昔の縁故・コネ採用はどう違うのでしょうか。
小林佳徳氏(以下、小林) リファラル採用は約3割の会社が導入をしていると言われています。しかし、制度はあっても形骸化している企業も多いです。
同制度が昔の縁故・コネ採用と異なるのは、下駄をはかせることがないという点ですね。今は人材の流動性が高まっており、気軽に転職する時代です。例えば転職した後、前職で一緒にチームを組んで働いていた人が優秀で、現在の会社に呼びたいという希望を提案したとします。ただ、その人がいくら優秀と強調しても会社の土壌に合うか合わないかは別問題でしっかりと試験・面接を行い、一定の水準以上であれば合格となります。
――最近、リファラル採用に力を入れる企業が増えてきましたが。
小林 エージェントに登録して転職活動を行う土壌が少しずつ積み上がっていますが、エージェントを通した転職は、実際に入社してみないとパフォーマンスが最大限発揮できるかわからないのです。
対して、リファラル採用は、友達同士の関係で、正直に会社の実情を話し、友達が相手に、「お前に向いていると思うよ」と助言することで相手の心が動き、「やってみよう」という場合と「今の会社に満足しているから別にいいや」と断る場合もあります。ですから、自分にその会社に合っているかどうかがリファラル採用で丸裸にされるようになりました。
――新卒の3割が3年以内に離職するのが当たり前の時代です。入社時の説明のイメージと合わないという声もあります。
小林 一括採用で有名な会社が大きなブースで、「当社はすごい会社です」とアピールしますが、入社したらギャップも激しく、新入社員も「これは目指していたものと違う」ということで辞めることもあります。昔だったら、だまして入社させて、本人も多少は我慢しつつ、先輩も、「社会はこんなものだよ」と言って指導していましたが、やはり、新卒者も、より自分にあった会社があれば転職する動きになっていることが昔と今の違いです。
リファラル採用ですと、友達にわざわざウソは言わないのでミスマッチが起こりにくいです。
飲食業のアルバイト募集でも採用
――リファラル採用の具体的な例はいかがですか。
小林 まず当社はIT企業に営業に行き、サイバーエージェントやfreeeで導入されました。そこで例えば、「友達を紹介してください」というチラシを置き、それを見た社員が「今うちの会社はこの業務ができる社員を募集しているんだ」と気づき、人事部員ではない社員が次々と友達を紹介して、採用につなげました。リファラル採用は、東京の有名なIT企業と親和性が高いのではないかと思われがちですが、決してそうではありません。
次の営業のターゲットは、飲食サービス業でした。今は大学や高校アルバイトの採用が厳しく大変になっています。当社には吉野屋、はなまるうどん、串カツ田中、日高屋など飲食業のお客様もいますが、アルバイトの採用はどこも切実です。そこで現役アルバイトが友達をつれてくるリファラル採用に力を入れているのです。
実は飲食のアルバイトは、採用が決まっても、アルバイトに来ないケースがあります。しかし、友達紹介であれば必ず来ますし、職場にもなじめます。
――採用活動は人事部など専門部署が行うものだとばかり考えていました。御社はなぜ、リファラル採用に着目されたのでしょう。
小林 ある急成長ベンチャー企業の成長の源泉の1つにある、「社員みんなで採用活動をしよう」というコンセプトに感銘を受けて、これをビジネスにしようと考えたのがキッカケです。これは会社に対する愛情が不可欠です。「自分の仕事で忙しい」とそれぞれの立場を主張するよりも、自社の事業に愛着を持てば、成長するためには人材が必要だと判断することになり、採用でも頑張ろうと意欲を持つことになります。
――御社の支援システム「Refcome」はどういう中身になるのでしょう。
小林 リファラル採用を制度にすることは簡単です。たとえば、「友達を紹介して、友達が入社したら紹介者に5万円あげます」とチラシやポスターを貼るのは明日でもできるでしょう。ただし、チラシを貼るだけでは効果がありません。
そこでリファラル採用をより効果的に行う制度設計を提案しています。

ブラックだと社員が友達を紹介してくれない
――でも会社が忙しく、ブラックだったりすると、友達に紹介しづらいですね。
小林 そこで、当社では従業員アンケート機能も付加しています。職場環境満足度、人間関係などの質問項目があります。ところが従業員満足度が低ければ、リファラル採用に結びつきません。ですから、そもそもの会社の働き方や職場環境もアンケート結果をもとに改善提案まですることもあります。
今は入社の入り口の部分のリファラル採用のデータをまとめていますが、入社後の管理により、パフォーマンスが高い、離職率が低いなどのデータがこれから集まるかもしれません。そうすると入社時のコストは同じでも、長く働き、高い能力を発揮する明確な数字が表れると、リファラル採用はさらに評価されるでしょう。
(長井雄一朗)