Dire Wolf  父はライブに来て「俺にはわからん」と言って帰って行った(笑)/インタビュー後編

――【Dire Wolf】インタビュー前編より

最近は父もアドバイスしてくれたり、これを一緒にしようって提案してくれたりします

──歌詞はYuさんが一人で書くんですか?

Yu:はい。全部考えてます。
曲がだいたい出来上がって、どんな曲なのかわかったところで、サビの歌詞から書きますね。

──一番言いたいことをまず言ってしまう。

Yu:曲の顔になる部分がサビだと思うので、サビにいい言葉を乗せたいから。そのあとで、そこに至る説明みたいな感じでAメロやBメロ部分を書いていきますね。

──メッセージ性の強い歌詞が多いような。

Yu:そうですね。なんとなくこんなこと考えてますっていうより、しっかりと言いたいっていう。どっちかというと感情面をバンと出したいほうで。景色が見えるような歌詞はあまり得意じゃないというか。体感できる痛みだったり苦しみだったり悲しみだったり、心の部分の気持ちを書くことが多いです。ただ「True end」という曲だけは情景を考えつつ、一つのお話にしようと思って書きました。

──まずストーリーを作って。


Yu:はい。意識不明の重体になったとき、頭の中で亡くなった彼女と再会して。その世界から出たら生きられる、けれどもその世界に留まれば彼女と一緒にいられるけど死んでしまう、っていう。そこでどういう選択をするかみたいな。この曲だけは唯一メロディーと歌詞を同じような感じで考えました。ちなみにこの曲、「簡単そうに聴こえて、歌ってみたらヤバいじゃん」って曲を作ろうと思って、音域が2オクターブくらいある振り幅の広い曲になってます。

──二人の音楽はメロディーと歌詞という歌にあたる部分と、トラックの部分が拮抗しているところがあって、そこが面白いですね。

SHISYO:そこを合わせるっていう発想がないので。

Yu:でも結果的にうまくハマってくれるんですよね。共存はしてるんだけど反発しあってるというか。うちの曲は、ボーカルがあって楽器がそれに合わせて、という感じじゃないので。みんな目立っていいよっていうバンドなんです。


SHISYO:それぞれが競い合うというか。サポートメンバーを含めて、言われた通りにやる人たちじゃないしね。

Yu:ちょっとジャズみたいだって言われたりもしますね。


Dire Wolf  父はライブに来て「俺にはわからん」と言って帰って行った(笑)/インタビュー後編
Yu(Vo)


──メジャーデビュー曲となる配信シングル「SHINKA」も、そうした特徴がハッキリ出ている曲ですね。

Yu:この曲、実は前身バンドのときに作って、ライブでもずっとやっていた曲なんです。それを今回リメイクして。歌詞も決めつけられることへの反発というか、自分自身の道を行きなさいっていうテーマのものに書き替えました。

──Yuさんの書かれる歌詞は、そういうテーマのものが多いような気がしたのですが。

Yu:そうですね。やっぱり父親が前川清なので、自分の実力で判断されないことが昔からすごく多くて。ずっと父と比べられて生きてきたっていうのがあったので、そういう面での反発心が大きいような気がします。なんていうか、「こうしたら?」っていうアドバイスならいいんですけど。


SHISYO:「こうしなさい」「これはダメ」っていうことも。

Yu:多かったので。だから自分が自分らしくいられないことへの反発心を今、歌詞にしているというか。そういう、自分が経験してきた感情を、そのまま歌詞に乗せることが多いかもしれないですね。

──やはり前川清の名前は大きいですか?

Yu:大っきいですね。それもあって昔は音楽の話は全くしなかったんですけど、最近になってやっといろいろ話すようになりました。もともと父は娘のために何かするっていうより、好きにやればいいじゃん、みたいな感じの人ですし。でも認めてくれるようになったのかな、最近はアドバイスしてくれたり、これを一緒にしようって提案してくれたりします。

Dire Wolf  父はライブに来て「俺にはわからん」と言って帰って行った(笑)/インタビュー後編
Dire Wolfのメジャーデビュー決定はYuも出演した、父・前川清の50周年コンサートの千秋楽・沖縄コンベンションセンター公演で発表された


──コーラスでお父さんのコンサートに出演もされていますよね。

Yu:そうなんです。小っちゃい頃は父の歌を聴いてもわかんないから。“神戸~”とか“長崎~”とか。
でも今は「すごいな、この人」と思って。だって、動かないでマイク1本であそこまで表現できるわけですから。こっちはパフォーマンスを学んで、動けば動くほど見栄えがいいよって言われてきているので。1ミリも動かないでマイクの位置を変えるだけで表現できるってすごいですよ。だって普通、動かないものをただ見ているだけじゃ飽きますって。ペンギンだって全然動かなかったら、何も面白くないじゃないですか。

──そういう考え方をしたことなかったですけど、たしかに動かないペンギンを見ていても楽しくないです(笑)。

Yu:そうですよ。それでもずっと見てられるって、すごいですよね。だけど、そのすごさを当の本人は全く気づいてない(笑)。俺は全然って、今でも言ってますから。

──Dire Wolfのライブを観に来たりはするんですか。


Yu:一回だけ母に連れられて来たことがあって。歌ってる最中に「……あのカウンターのとこでドリンク飲んでる人、どっかで見たこと…あ……あっれー!」って。ライブが終わったあと、「俺にはわからん」とか言って帰って行きましたけど(笑)。でもなんか最近は本当にいろいろ話せる間柄になれて、この間は「早く海外に行って勉強してこい」って言ってました。なんだったらデビュー前に行け、くらいの勢いで。それは無理だよって言っときました(笑)。

SHISYO:さすがに時間がなさ過ぎる(笑)。

──「SHINKA」の先行配信に続いて年明けにはアルバムも控えていますもんね。そのアルバムですが、どんな感じになりそうですか?

Yu:曲のタイプはいろいろなんですけど、歌詞では人間らしさをテーマにしたものが多いですかね。人間のいい部分だけ歌っていてもつまんないって思うほうなので。人間って汚いからこそ綺麗でもあるし、綺麗だからこそ汚くもある、両面ないと人間じゃないので、そういうことを強く訴えていきたいっていう気持ちが出たアルバムになっていると思います。

──というDire Wolfの目標や野望は?

SHISYO:バンドとしては日本武道館のステージじゃないですかね。


Yu:あとフェスとかにも呼ばれたいですね。まあ言い出したらキリがないですけど、まずは今度出る曲やアルバムを聴いていただく、それが目の前の目標ですね。

――【マイ旬】Dire Wolf さまぁ~ずさんに「デブかよ!」って言われたい(笑)
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